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オールウェイズ  作者: 光牙飛鳥
全ての始まり 冒険の始まり 何かの終わり
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全ての始まり5

随分ギルドに馴染んでいるように見えるため、もしかすると見た目より年の差があるのかもしれない。

現時点で重要そうな、武器と魔法の欄を見るが、どう受け取ればよいのか分からない事が書いてある。


「あの~、魔銃ってなんですか?と言うか、実際魔法はどういう内容なんです…?」


得意な武器・両手剣、魔銃

使用出来る魔法・適当に


「魔銃はこれさ。」


突如、右手に黒い金属製の何かを取り出す。これぞ『トゥルフ』の便利さだ。

金属は、どうやら1000年以上前に使われていた『拳銃』の形をしている。

とは言え、フィールは実物を見た事がないため、昔話の知識でしかない。


「内部機関に魔石を組み込んで、チャンバー内の銃弾を複製するようになってんだ」


…何一つ分からなかった。

そんな気持ちが顔に出ていたのか、どうにか分かりやすく言おうとしてくれているようだが難しそうだ。


「つまり…、少しでも魔法が使える奴ならいくらでも撃てる銃って事だ」

「無限に使える銃ですか」


銃と言う物の武器性能がよくわからないが、確か中遠距離で使われる物だったはずだ。

そして両手剣も使うという事は近距離戦もこなす、オールレンジ対応であるという事である。

最初は足を引っ張らない事だけに集中するべきかもしれない。


「魔法は得意なんですか?」


苦手と言われたとしても、自分に使える魔法はたかが知れている。

そのためどちらにしても役に立てないとわかっているが、念の為聞いてみる。


「まあ、使う気になれば色々使えるぐらいにはな」


自分、邪魔だな。

相手の実力を測るなんてかっこいい事は出来ないが、ロキが自分の何倍も強い事は、空腹状態であった初めから感じていた。

二人で魔物狩りに行ったとしても、後ろで見学状態な気さえする。

予想通りとも言える返事にがっくりしつつ、頼りになる先輩で嬉しい気もする。

だが、頼りっぱなしで仕事をするのは悪い気がする。

お金を貰う以上、新米でも役に立ちたいのだ。

こうなったら魔物狩り以外の仕事を期待し、雑用で役に立つしかない。


「さ~て、早速だが仕事するか?さっき断った依頼書見してくれ」

「はい、こちらですね」


女性はさらに別の紙をさっきの隣り戸棚から取り出す。それには、4000ペリンの文字が大きく書かれ、その下に細かい字で内容について書かれていた。

その内容は、ある薬草を採って来て欲しいとあった。期限は6日以内となっている。

薬草の名はムーンティアー、何やら特殊な条件で薬草としての力を持つようになる存在。

と言われているということはフィールも知っているほどに有名だ。


「これを請けようと思ってんだ、どーだ?」

「薬草、手に入るんですか?」

「ああ、ただし今すぐ出発しなきゃならねぇがな」


目的の物がちゃんと手に入るならフィールとしては問題無い。


「わかりました」


家も無いのですぐに出発する事も出来る。

ただ、食料だけはお願いすることになりそうだが、この人なら大丈夫だろう。


「よし、じゃあこれを請けるぞ」

「かしこまりました~」


ニコニコと笑う女性に、ロキはサインした依頼書を返す。

さっさとその場を立ち去ろうとするロキに、慌てて着いて行く。

二人はギルドを出て、大通りを通って南へ向った。

依頼を受けるのは思った以上に簡単な手続きだった。

もっと何か複雑な内容だと思っていたので、拍子抜けしてしまったと共に、安心する。

そんな事を考えていて、ある事に気が付く。


「あ、あの!」

「ん?」


そのまま街の外まで歩いて行きそうなロキを引き止める。

そういえばまだ大切な事を言っていない。


「これから、よろしくお願いします」

「そーだな、オレの方からも宜しく頼むぜ。…そうだ」


思い付いたように両手で『ポン』とする。その顔は何か子供が悪巧みをしているかのように見えた。


「折角だから、決まり事を作るか。まずは…」

「まずは?」


何か、嫌な予感がしてしょうがない。

ロキは、フィールの肩をポンと叩いた。


「オレに敬語禁止」


長い間が生まれ、意味を理解して思わず叫んでしまった。


「え!?」


いきなり何を言い出すのかと思ったら、フィールにとっては凄い事で。

住んでいた村では、年長者に敬語を使わなかったらものすごい怒られる。

と言うか怒られるではすまないこともあって、山ほど仕事をさせられるような事もある。

世話になる相手への敬語は、フィールの中では当たり前な物。

そうで無くとも今日あったばかりの、これからお世話になる人にタメ口とはいくらなんでも辛いものがある。


「そんな!先輩にタメ口なんて出来ませんよ!」

「ダーメダメ、これから仲間なんだしよ、オレに敬語使うな、こそばゆい」

「感覚問題じゃないだろ!…あ」


テンションのせいか、思わず地言葉が出てしまった。

慌てて自分の口を塞ぐが既に遅い、表情ではわかりにくいが、目の前の人物は嬉しそうにしている。

だって、他は真剣そうなのに、瞳が笑っている。


「出来るじゃねぇか」


そう言いながら頭をわしゃわしゃして来る。元々寝癖がとれずにいた髪が、さらにクシャクシャになってしまう。


「今のは、不可抗力で……あーもう!わかりましたよ、努力します!だから頭を撫でるのはやめてよ!!」

「わかったわかった」


それでも離そうとしない手を無理矢理どけて、気になっていた事に考えを戻す。

依頼内容にあったムーンティアーについてだ。

フィールはそれが生えている場所も、生育条件も、形さえ知らない。

知っていたのはまたもや御伽噺の様なレベルでしかなかった。

捜す時に手伝う為には、きちんと聞いておかなければならない。


「ムーンティアーって、どういう形…なの?」

一応敬語を外して話しかけてみる。

「ムーンティアー、円形の緑葉に白い花、花は小さな蓮の花のような形をしている。主に標高1000m以上の場所に生えていて、満月の夜にのみ開花し、開花中に摘み採る事で長期保存と薬用が認められる。…こんなもんでいいか?」

「十分過ぎです」


豊富な経験を感じさせる説明だ、おそらく以前にも採集に行った事があるのだろう。

今の話を聞いた分には、山の上に生える物であると言う事、満月の夜にしか採集出来ないと言う事がわかった。

だから急ぐのだろう、昨日の月なんて気にする余裕も無かったが、暗夜では無かったはずだ。


「満月はいつですか?」

「4の月11日…明日だなー」

「明日!?」


この辺りの山と言えばキマーナに来る途中に見た南にある山と、北東にあるものだけだ。

キマーナを中心とした地形は平野となっていて、森や緩やかな川は多いが、山は遠くにしかない。

街から二つの山は見える位置にあるが、北東にある山よりは街に来る時に見た山の方が近くに見えた。

ロキは南門を目指しているようなので、間違いないだろう。

だが近くに見える、とは言っても歩いてすぐに辿り着ける場所ではなかった。

街に着くまで歩いた四日間の、中ほどで通り掛かった山だ、夜に休みながら歩けば二日はかかる。

明らかに間に合わないだろう。

夜通し歩く事を想像し、ゲンナリとする。それでも間に合わない可能性が高い。


「ずっと歩くのかぁ…」

だが、その考えは良い意味で裏切られた。

「いや?間に合わねぇだろうから馬車だ」


馬車、正しくは『人物運送有料馬車』それなりのお金が必要で、村には七日に一度しか訪れなかった。

故郷では街に出るような用事がある人がいなく、街から来る人も少なかった上、食料も狩りと農業で十分得られた。

その為、数が無かったのだろうかと今更ながら思う。


「馬車って…高いんじゃ無いでしたっけ?」

「…あ、悪りぃ。説明して無かったな」


ロキは彼のギルド章を取り出し、裏面をフィールに見せた。

平らな銀の面に細かい字で文章が掘ってある。


「こいつの使い方は裏に書いてあんだ、その一つに『仕事の為に馬車を無償で使用する権利』があるのさ」

「凄い、便利だなぁ」


自分のギルド章を取り出し、裏面の文章を読んでみる。確かに上の方にその文章はあったが、さらに言葉が続いていた。

『対価として馬車の護衛をする事』


「って、体で払えってだけじゃないですか!」

「大~丈夫大丈夫、護衛ったって魔物が襲って来たら戦うだけさ。そんなに来る事もねぇし」


最近じゃ野党も出ないしなー、とさっさと進む背を見て、フィールはある事を感じていた。


(この人、強そうだけど随分大雑把な人な気がする…)


聞かなければ説明されないままになるような事が沢山ありそうだ。

だが、それ以上に魔物を狩ることについての恐れの無さが問題である。

戦いに不慣れなフィールに対してあまりにもベテラン過ぎるのだ。

魔物と戦う経験があまり無い者にとって大切な事を無意識にこなしてしまいそうな人物、それは見て学ぶ上では苦労する事であると知っている。

技術が欲しければ盗むしかないのだ。

十年前に剣を教えてくれた人は初めからきちんと教えてくれたが、ある事だけは見て、感じて、覚えろと言った。

七才だったその頃は全然分からなかったそれは、最近になってなんとなく分かってきた。それ位時間がかかるのだ。


「他にギルドについての基本とかあります?」

聞けることは聞く、今出来る事はそれぐらいだ。

「ん~、…あ、基本かはビミョーだけど教えておかなきゃならねぇ事があるな」

「なんですか?」

「新米期間についてさ」


そういえば先輩が付く事以外何も言われていない、何かさらに説明があっても良いはずだ。


「基本は三つ仕事をこなしたら新米じゃなくなる、先輩後輩も解消だ、それ以外は特にねぇな。新米じゃ無くなったら何人で組んでもいいし、組まなくてもいいし、好きにすりゃ良い」


それは案外早い別れを語っているように聞こえた。

すぐに仕事に行こうと言ったのは、早く先輩をやめたいからなのだろうか。

ただ扉を開けようとしただけでこんな事になったのだ、そう考えると申し訳ない。

何も言えず、俯きながらついて行くと『人物運送有料馬車停留所』についたようだ。

まだそれほど日は高くは無いが、多くの人と馬車と行き先の立て札があり、様々な地方の名が飛び交っている。

二人が乗らなければならないのは南の山へ行けるものだが、種類が多くて何に乗れば良いのか見ただけではわからない。


「南の山だとあの辺のだな、人数が少ないのに乗りゃいい」


そう言ってロキが指差す先には、南東のアヒューまで行く馬車があった。距離的にはあまり遠くないためか、乗る人は少なく見える。


「ギルド員は途中下車出来るからな、近くまで行ったら降りるぞ」

「あ、はい」


馬車の側まで行き、馭者にギルド章を見せる。

すると馭者はにこにこと笑い、戸を開けてくれた。

ギルド員が乗る事は旅の安全を意味する、とでも言うのだろうか。

途中下車してしまうのが悪い気もするが、なんだか嬉しい。

サービスと言われてしまえばそれまでだが。

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