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オールウェイズ  作者: 光牙飛鳥
全ての始まり 冒険の始まり 何かの終わり
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出会い3

説明はこんな感じだ。

ギルドに依頼をしてそのまま報酬を預けるタイプと、依頼だけして報酬自体は直接物や証明を受け取ってから渡すタイプがあるとの事だ。

分かれるわけは依頼自体の差から、との話である。


一つは今回のように採集物を依頼人に渡すもの。

この場合は確実に人に渡るように、物も報酬も当人同士で渡し合う。

期日がついている物が多いので、うっかりギルドに留置きになってしまうと信頼問題にかかわるのだ。

ならば依頼人が直接誰かに依頼すればよい、という時代もあったが、ギルドが発達している今は個人依頼が難しいため、ギルドを経由するようになったそうだ。


二つ目は魔物狩りの依頼だ。

こちらは魔物を狩った証明を当人同士では行いにくい為、ギルドを通して報酬を受け取る。

ギルド章に狩った魔物の情報が自動で登録され、ギルドで確認する事が出来るからとの事だ。

「偽装対策は万全だぜ」と言い切られたがその自信の理由はわからなかった。

時折、魔物の生け捕りや死体の首を持ち替えるような依頼もあるそうだ…少し嫌だ。

この他にも潜入任務や洞窟探索等があるらしいが、基本はギルド受け取りになる。

との事だ。


「へぇ~」

「どうせなら歩きながら話してくれればいいのにー」


あからさまな不満顔で下から言われた。

言われてみればその通りなので、微妙に悔しい気持ちになる。

それと同時に、彼女が本当に急いでいる事を感じた。

これは想像ではなく、彼女自身から感じた感情だった。

人の気持ちが語らないままでわかる、その力は健在だったようだ。

特に便利だと感じた事もないが…。


「早く来て」

「うん、行き先はどこ?」


少女はため息をついてから、指で大きい丸を描くようにした。

その後一点を指し示す、すると指の軌跡を辿って光の筋が宙に浮かび上がる。


「ギルドがここ、行くのはこっち」


そう言いながら方角記号と、もう一つ点を打ち、その間に何本か線を引いてから二点を結んだ。

道を書いてくれたようだ。


これは初級光魔法『ライン』このように光の筋で地図を描いたり、特定の領域方陣を描く為に使われる物だ。

実際に見たのは初めてだが、思っていたよりも優しい光…だった。


キーラは、二人が図を見たのを確認し、光の地図を手で消した。


「じゃ、ついて来てね」


そしてさっさと歩き出す。

とは言え歩幅が随分違う、ゆっくりついて行っても大丈夫だろうと安易に考えていたら、あっという間に離されてしまい、慌てて追いかける。

人を見た目で判断してはいけない。

どこかで聞いた言葉を実感しつつ、ロキと共に、キーラについて行く。

ギルドを出、先程の地図と同じように歩く。

多少周りからの目線を感じたが、気にしない事にした。

その目線は普段1人で行動する事で有名なロキに向けられた物だったが、フィールには知るよしもない。

辺りを見ながら少女について行くと、ふと気になっていた事を思い出した。


「そういえば依頼人って君なの?」

「君じゃなくてキーラだってば。…違うよ、あたしの師匠」


なるほど、と納得する。

おそらく彼女は薬師の弟子だ。

その師匠とやらは、薬草を必要とする以上、直接扱う薬師か、売りさばく商人だろう。

これだけでは商人の弟子という可能性もあるが、彼女の急ぎ方では病人がいると考えた方が考えやすい。


歩みを進める内に、辺りの建物は民家が多くなって来た。

この街は城を中心として四方に大きな道が延びている。無論人通りも多いため、販売店の類いの多くは大通りにある。そのため少し脇道にそれると民家だらけとなる。

歩き始めてから四つ目の角を曲がると、そこには周りよりも少し古びた建物があった。

上にかかっている看板によると、予想は当たっていて、薬師の店のようだ。


「ここよ、じゃ入って」


キーラは扉を開けてさっさと入ってしまう。

招かれている気がしないまま、それでも中へ入る。

入った瞬間感じたものは鼻につく薬の匂いだった。

棚という棚に大小様々な瓶が置いてあり、中にはこれまた様々な物が入っていた。

草のような物もあれば、角のように生き物から得た物もあるようだ。

端の方に木の椅子が二脚と壊れそうなテーブルがあった。

きっとあそこで診察を行なっているのだろう。


「師匠、ムーンティアー届いたよー!」


廊下の奥から大きなキーラの声が聞こえる。

どこで待つべきなのか悩み、ロキを見るが、入口近くから動こうとしない。

動いて瓶を割るのも恐かったので、仕方無しにただ立って反応を待つ。

奥で何かを話している気配がするのを感じながら、近くの棚を眺める。


一番目を惹いたのは、黒ヤモリでも無く、叫び出しそうな草の根でもなく、動いている花でもなかった。


見えたのは一枚の羽、それは瓶の中で仄かに光っているようだ。

インディゴの物とは違い、それでも普通の鳥の物としては少し大きい羽だった。

色は赤みがかってはいるが、発光しているためか金色にも見える。

少し近寄って、綺麗だな、と思いながら眺めていた。

見とれていたとも言える。

なにしろ、故郷にはこんな美しいものはなかったからだ。

そのせいで、フィールは足音がした事に気付かなかった。


「それ、フェニックスの羽よ」

「わ!」


跳び上がりかけ、瓶の前だ、と自分の身体を押さえ付ける。おかげで何も壊さずにすんだ。


「驚かなくてもいいじゃん」

「ごめん…」


相手の見た目のせいか、つい言葉が緩くなる。

彼女は一応年上なはずだが、動作からもそれは感じられない。

その両手には革袋と丸めた紙が握られていた。


「そっちの人が前三枚売ってくれたの」


指差す先にはロキ、流石に名が売れているだけはある。

不死鳥フェニックス、生態はおろか、住む場所さえわからぬ赤き鳥。

その輝きから金色鳥とも呼ばれている。

そんな貴重な鳥の羽を入手するとは、一体どのような過酷な旅だったのだろうか、フィール想像すら出来ない。

しかし当人は、大したことがない、といったように手を振る。


「偶然持ってただけさ、役立ったみたいだな」

「ええ、ひどい怪我でもちゃんと治せたわ」


不死鳥の身体の一部、その癒しの力は計り知れない。

高いんだろうなぁ、と思っているとキーラの明るい口調が、暗くなった。


「でも、なんでも治せるわけじゃない…」


フィールは万能の物など存在しないと信じている。

だが、肩を落とす彼女を見ていると、そんな物が存在しない事が少し残念に思えた。

彼女は思い出したように、右手に握り締めていた革袋をフィールに差し出す。


「はい、報酬」


見た目より重い袋を受け取り、中を見る。

ほとんどが銅貨の中に、一枚だけ一ペリン銀貨が入っていた。

銅貨も大体は百ペリン銅貨、十や一はそれほどは無い。

通貨としては百ペリン銅貨が十枚で一ペリン銀貨となる、これが金貨だったらすぐに借金を返せるだろう。


「…うん、確かに4000ペリンだ」

「当たり前でしょ、ちゃんと渡さなかったらギルドに仕事の依頼、出来なくなるもん」


命懸けなのだ、それくらいの信頼が無ければ仕事にならないだろう。

そんな風に納得し、革袋をロキに渡そうとする。


「じゃあ――」

「持ってろ」


言いたかった事をを遮られてしまった、とショックを受けたがあまり考えない事にした。


「でも、あんまりお金持つの慣れてなくて…」

「んー?じゃあ、それやるから慣れな」

「え」


やる、とはあげるという事…だろう。

新米として、ただついていっただけのフィールは、半分の額をもらうのもためらっていた。

それをいきなり全部渡そうとする、この人は気前が良いのか、何も考えていないのか…。


「いただけません!」


ずいっ、と革袋を押し付ける。

役に立った実感が無いままお金をもらうのは嫌だ。

それではいつになったらもらうのだ、と言ってしまうと切りがなさそうだが、せめてもう少しくらい頑張りたい。


「うーん…今、金いらねぇんだよなぁー」

「分かりやすすぎでしょ」

「やっぱし?」


棒読み過ぎた言葉まで言う、ロキはどうにか受け取らせたいようだが、一度決めた事を簡単に覆す気はない。

少なくとも気は。


「とにかく今回は受け取れませんから、あきらめて下さい」


キッパリ言い切ると、やれやれ、と言う風に肩をすくめ、革袋をしまってくれた。

諦めが早くて助かった、これで一時間続けられたら折れていたかもしれない。

借金のおかげ?で流されやすい自分を自覚し始めた分、さらに流されたくはなかったのだ。

※フェニックスに合えるかどうかがまず幸運な世界。

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