出会い1
フィール達は少々の休憩を挟みつつも、結局一日半歩き続け、キマーナ南地区にあるギルドに辿り着いた時にはくたくたになっていた。
時刻は朝だろう、朝食を食べ始めた人達が見られる。
「疲れた…」
だがそんな人達を気にする気にもならないぐらい疲れたフィールは、丸机に突っ伏してしまった。
酒場も兼ねているだけあって机が少し酒臭いが、無視することにした。
そう、お腹が空いてしまっているのも忘れて――
グ~
…出来なかった。
「また盛大に鳴らしてんなぁ」
そう言いながら歩いて来たロキは、手に皿を乗っけて来た。
がばっ!と起き上がり皿を受け取る。
今日のメニューはカルボナーラと言うらしい。
麺が白っぽいソースと絡まっていて、一緒に乗っているベーコンも美味しそうだ。
「いただきます!」
帰ってそうそう座り込んだフィールを見ながらカウンターに向ったロキは、食べ物を注文していてくれたのだった。
流し込むかのようなスピードでカルボナーラを食べていると、突然怖い事に気がついた。
「あの…ロキさんの分は?と言うかお代って…」
「オレは後でいーや、代金は奢りさ」
仕事の報酬が貰えるのは受取人が来てからとの事なのでフィールにお金は無い。
奢ってもらった事には素直に感謝するとして、食事については気になる事がある。
「ありがとうございます。…でもロキさん昨日も食べて無いような気がするんですけど」
そう、フィールはロキが何かを食べるところをまだ見ていないのだった。
初日はフィールが寝てから食べた、とか起きる前に食べた、とかなのかと思っていたが昨日も見ていない。
歩き続けながらもパンはもらったが、食べている姿は見なかった。
いくらなんでも何も食べない旅人はいないだろう。
「あー…目茶苦茶少食なんだ」
「少食って域ですか?」
もしかしたら最初会った時から何も食べていないのだろうか。
そうだとしたらそれは拒食だろう、身体が持たない。
「大丈夫さ、ちゃんと後で食う」
「だったら今食べましょうよ」
「しょうがねぇなぁ…」
フォークを持ったまま睨み付けるようにすると、渋々とカウンターへ行く。
フィールにとっては食事は一番大切な事だ、それを一人でするのはつまらない。
大勢の方が楽しい筈だ、と思っている。
せっかくだからと食べるのを待っていると、ロキは皿を持って来た。
中身はパンケーキ、というかホットケーキ?と言う物のような…
「どーした?変な顔して」
「なんていうか…違和感と言いますか…」
イメージとしては、食事らしいものというか、甘い物で無くしょっぱい物を持って来るのかと思っていた。
今日まで一緒にいて、感じた事としては…
「似合わない」
「悪かったな」
失礼だとは思う、そんなのはわかっている。
それでも似合わない。
どうしてもホットケーキの見た目からは、魔物狩人として戦う、強い人のイメージはわかなかった。
「結構美味いぞ?」
座ってホットケーキを切る姿を見ながら、カルボナーラに再び手を伸ばす。
確かにきつね色に焼けたホットケーキは美味しそうだが、もし味見をしたらロキが食べる分が無くなるだろう。
そう思いながらカルボナーラを食べていると、あっという間に無くなってしまった。
美味しい物はすごい、時間の感覚を狂わせる何かがある。とフィールは本気で思っている。その証拠に周りの人がいなくなっていた。
ロキが食べているのを何となく眺めていると、突然ギルドの扉が勢い良く開いた。
その勢いに驚いていると、一人の少女が入って来た。
ツインテールにした髪の揺れで、彼女が急いで来た事が分かる。
ショートパンツに腰マントのような微妙なスカートもどきをつけているが、あれは走りやすくする為だろうか。
…ならスカートのようなひらひらを諦めれば良いのに