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オールウェイズ  作者: 光牙飛鳥
全ての始まり 冒険の始まり 何かの終わり
12/100

山に登る5

時々吹く風が気持ちいい。

そう思いながら何の気もなく、足元を見ると。

羽根が、落ちていた。


「これ、なんですか?」


それにしては、サイズが大きい気がする。いや、かなり大きい。

一般的な鳥の羽根の形はしているが、それだけでフィールの身長ぐらいはある。

綺麗な深い藍色は光の加減で黒くも見えた。


「ああ、インディゴって言う鳥の羽根さ」


試しに剣の先でつついてみるが、傷付く様子は無い。

相当丈夫なようで、ただの鳥、と言うには随分かけ離れている気がした。

このサイズと固さを揃えた羽根の生えた鳥、想像しがたいが、少なくともとてつもない大きさなはずだ。


「随分…大きい鳥なんですね」

「まあなぁ、牛を丸呑みにしちまうらしいぜ?」

(肉食なんだ…!)


牛を食べるのならば、やはり人も食べるのだろう。

山に登るだけだと思っていたが、かなり恐ろしいオマケつきだったわけだ。

襲われたらひとたまりもないだろう。


「さて…ここからは樹の多い所を進むぞ」

「もしかしてその鳥から隠れるため…ですか?」


今までの道は簡素ながらも道らしき場所を通ってきた。

だが、そんな鳥がいるならば見通しのききやすい所を通るわけにはいかないのだろう。

相手は魔物と違って『鳥』でしかない以上、山を長い時間離れるとは思えない。


「まーな、途中で暗くなって来るとは思うが念の為な」


4の月は日の入りが早目だ、まだまだ明るいように感じるが、すぐに暗くなるだろう。

暗くなる事が自分達に良いのかよくわからないが、ずっと明るくて目立つよりは安心出来る気がする。


「あ、そういや道にあった看板読んだか?」

「え?はい、一応…」


うろ覚えではあるが、闇がどうとか行っていた気がする。

看板は道のりに幾つも立っていた為、意識せずとも読む事となった。古い物言いなのかフィールには意味がよくわからなかったが、『山の覇者』はインディゴの事を指すのだろう、と思った。


「インディゴに気をつけろって事ですか?」


命の保証は出来ない、と書いてあったはずなので聞いてみる。


「まあな、ある程度より高度がある場所だとインディゴが来るかもしれねぇ、安全に登るなら鳥が眠る夜にしろ、って事さ」


山には沢山の植物や動物がいる。

時には生活の為に狩りに来る者もいるだろう。

何も知らぬ者が迷い込む事もあるだろう。

その為と言う事だ。


フィールは後ほど知る事となるが、山の看板はそのような人達の為の道案内にもなっている。

山の低い場所にある、一つの看板からは必ず二つの看板が見えるようになっているのだ。進む時も戻る時も迷わないようにとの配慮である。

それぐらいなら道をちゃんと作って欲しかった、と思うのは、随分後になる。


「なら、夜の間にムーンティアーを採ってこの辺りまで降りなきゃいけないんですね」


聞いた話から考えられる事を言ったつもりだったが、何故か困った顔をされてしまった。


「面倒なことによ、下りは夜の内に完全に降り切らなきゃいけねぇんだ」

「え?」

「薬草を採る場所がインディゴの巣なんだ、するとそこに人の匂いがついちまう」


鳥だって匂いはわかる、ましてやどんな進化をしているのかわからないのだ。

少なくとも、巣に近付く人間を安全と見なしてはくれないだろう。

看板から考えると山にいるだけでも嫌がられるのではないかと思われた。


「山にいる内は匂いを辿って来るからな、さっさと降りるしかねぇ」


もし襲われてしまったら。

一瞬考えてしまいそうになったが、そんな考えを消すかのようにブルブルと頭を振る。

曲がりなりにも先輩が連れて来るような依頼なのだ、きっとなんとかなる。

今のフィールに出来る事は、ただ前向きに考える事しかない。

何かあったらその時考える、きっとそれが限界だ。

もとよりただの少年でしかない彼には、今を考える事しか出来ないのだ。


「とにかく降りる、ですね」

「ああ」


気持ちを引き締め、道なき道の先を見る。

進むしかないのだと自分に言い聞かせ、恐怖は心の隅に追いやる。

危険と縁の少かった今までと、これからは違うのだ。

それを確かに感じた。

だが、後にそう感じた気がしただけだったのだと、改めて思う事となるのだった。


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