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オールウェイズ  作者: 光牙飛鳥
仲間と謎と旅
100/100

そうして、彼らはまた考える

久々です……!

フィールは、今日1つの大きな答えを得た。

キーラはその前に小さくとも確かな記憶を得た。

なら……クライドはどうか?


(俺だけ、過去へのきっかけが少ないのか……?)


フィールの本来の過去、そして確かに出入りの多かった過去のロキ、それに食い違いは無さそうだ。

実際お互いに出会ってはいなかったが、今世の縁すらとうの昔から存在していたわけである。

そしてふと龍の掟にある1文を思い出し、口にしてみる。


「半分でも、四分の一でも、龍の血を引いたなら覚えておかねばならぬ。良くも悪くも、必ず人間と縁を結ぶものが現れると」

「突然なぁに?」


キーラが不思議そうに小首を傾げる。

自分でもなぜ、急にこの言葉を思い浮かべたのか、分からない。


「龍の掟、人間を軽んじるな。そこには悪意も善意もある。ってだけに聞こえるだろうさ、龍は回りくどい言葉が大好きだからさね」


よく知るであろうホマレはカラカラ笑いながら、瞳が笑っていない。

試されているような、そんな……先程も見た様な瞳。

考える、先程もこれも、ホマレなりの何かの教えであるのかもしれない。

なら、無理やり関連づけてみるとしよう。


「遠回しに……ロキと出会う龍が現れる事の啓示」


龍との関係性は深くは知らない。

それでもクライドを龍の里へ連れてゆけたのだ、縁は元々あるのだろう。

掟の中でもこれは具体性が無かった、それは全員へ真の意味を知らせる意味がなかったから?

ならば、仮定のまま考えたなら。


「クライドの名を持つものは、基本龍だった?」


周りが静かに、待っている。

その答えを知っている者が応えるのかどうか。

沈黙の中、クスクスと笑う声が聞こえ始める。


「そーだな。濃さは様々だし、絶対龍ってわけでもなかったが、とても回数は多かった。てかなんだその掟、昔はなかったぞ」


笑いながらの答え。

ここまで来れば真実かどうか、はどうでもよい。

クライドにとって身近にあった道標は、自分にとっては掟だったのだ。

ロキと龍の関係はそれ以上気にはならない、嫌われていないならそれで良いし、嫌われたなら自分だけだも好きでいれば良い。

問題は、これでも己の記憶が今の時代の物しか見当たらないこと。


「……何故、俺は思い出せないのか」

「逆の事も多かったぞ、クライドだけが記憶をもっていた事」


懐かしそうなロキが見ているのは何時なのか。

柔らかな表情が崩れない、だからこそこれ以上は聞けない。

本人がわざわざ隙があると述べたが、逆に今までより難しくも思う。


それはーーー


ロキの記憶の触れてはいけないことにまで、勢いで触れてしまいそうだ。

3人ともが、そう思った。



「情報が多くて、それぞれ考えたい事もあるような気がするのだけれど」


キーラが雰囲気にどうにか滑り込み、声をかける。

窓の外はもう暗い、夕日は気付かぬうちに落ちてしまったようだ。


「宿泊そのものも道程にあったわよね、なら今夜は宿泊する。他のことはそれからで良くない?」

「それもそうかも…?結局はここから始める事が元々の自体の解決になるよね?」


闇のエルフが地脈に力をかけた、それが魔法と次元の違うタイプのやり方だった。

答えは得たし、その解決のための行動もロキが手を出すと決めた。


「私も、こうなれば出来る事をするまでです。光も闇も、もう少しだけ待てば良いのですから」


シエルも先程までより柔らかだ、様々な考えや立場で物言いが変わっていたが、今は初めに出会った頃に近い。

ただ、若き少女のような声だ。


「俺っちはこれからー」

「タリスは闇のエルフの方へ手紙届けてもらおうかなーなんて」

「うぐっ…し、仕方ないっすね…頼られるならそれが一番……」


小妖精のこの先も決まっていた様子、反抗可能だろうと基本マスターの願いは聞くのだろう。


不思議とこの光景が、懐かしく見える。

きっとそれは今世のキーラではない、幸せだと思っていたキーラの記憶から得る感情。

これはロキの言葉と食い違う。

「今と過去」の別の命であるはずの自分たち、しかしその感情に「同じ」「あの時の」が出てきている、気がする。

だからこそ、茶屋では仕分けるべきとは言ってはみた。

そうする事で、真相がわからない内からフィールやクライドがおかしな事を考えないように、そう思って。


「のんびりゆっくり、今だけでもそうしましょ?」


そんな密かな願いは、上手く隠せていたのだろうか。



男女にだけ別れた部屋、それでもここまでで1番穏やかな時間。

フィールはそう感じている。

何もかもが悪いなんて事も、何もかもが良いなんて事も、ないのだろう。

今日聞けた話を受け入れる事で、特に思えた。

家族がもういないことを悪いとしても、故郷はある。

悪いはずの借金なんてとうに無くなっていて、それでも口実にギルドへ行けた。

世の中、複雑なようで単純な話も多い。


「結局は、これからの未来にどこまで過去が役に立つのか」

「……それには同意するが、少しばかり悔しいものだ」


記憶が破片も拾えないクライドこそ、真に意思が強いのかもしれない。

フィールの方が、己を騙そうとはしていても記憶への意思が緩かった。

その差にも意味はありそうだ、それがまた未来へ繋がりそうである。


「クライドの記憶が、1番70年前への真実に関するものが多いのかも」

「主観的に、ということか。……思い出せても話せないかもしれん」

「その時はその時、だよ」

「……先に記憶への協力を告げた身としては、すまん」


しおらしいクライドがちょっぴり不思議で、彼はただ誠実でいたかったのかと個人的に思う。

山で出会った時も、洞窟で出会った時も、敵対的な視線だったが、今ではそう感じる事は滅多にない。

預かった剣の手入れも、彼が他の武器を手入れしている姿を見て隣で行うこともある。

もしかしたなら、この距離が「昔」に近いのかもしれない。

なら、未来には希望が持てる。


「僕らはそれぞれ違う、違いが大きいだけ。きっとそれだけなんだよ」


人種よりも大きな「転生」の事実。

そんなことを実感したからには、もうヒトなんてどうでも良いこと。

大切な存在なら、それだけで良い。

そう思いながら、うつらうつらとしてきたフィール。

視界の端で、密やかに灯りを落としてくれているクライドに、心の中で感謝しながら。


未来のために、今は眠りにつく。

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