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オールウェイズ  作者: 光牙飛鳥
全ての始まり 冒険の始まり 何かの終わり
10/100

山に登る3

その馭者の反応は予想とは違い、素晴らしい物を見たような反応だった。

驚きながらも、乏しい頭の引き出しから『セーフティスペース』と言う名を探してみる。隅の方の微かな記憶には上級時空魔法の名前があった。朧気で不確かな知識だが、使いこなすには相当な時間がかかる物だ。


「確か、特殊な空間の狭間を部分的に作って、魔物だけを通せなくする魔法…かな?」

「せーかい。普通は強い結界として使うな」


ロキに言われ、自分の知識があっている自信は出た。

なんせまともな教えを受けたわけではないので、時々心配になるのだ。

しかし、『領域方陣』と言う物がわからない。

基本的に古い本から得た知識が多いためか、単に忘れたかもしくは知らないのか。

う~ん、と馬車を見ていると、描かれた図形を眺めて興奮していた馭者が早口にまくし立てる。


「まさか『紅の魔術師』さんだったとは!光栄です!」


その様子は有名人に出会ったファンのようだった。

馭者は描かれた物にいたく感動したらしく、ロキの手を握って何やらまくし立てている。

だが、そんな姿よりも言葉の中にあった単語が気になった。


「あかのまじゅつし…?」


職探しにキマーナを巡っていた時、何度か聞いた名だ。

確かギルドの人間について話していた人達が言っていた名。


「紅いコートに一つに結った銀の長髪、まさかとは思いましたがご本人とは!」


紅い魔物狩人

千の戦いに生き、万の魔を狩る者

人を守る事を第一とし、あても無く旅するギルド員

だが詳しく知る者は誰もいない、伝説のような人物


そう聞いていた。


「ロキさん…あなたって、もしかして」

「ん?」

「すっごく有名人!?!」


周りの事も忘れて思わず詰め寄ってしまう。

そうなら先輩になると決まった時に教えてくれればよかったのに。

プロフィール紙にも名前以外はほとんど書いていなかったため、気付けなかったのは当たり前とも言えるが、フィールにとっては悔しかった。

何故なら、フィールには『時々相手が今考えている事が分かる』という特技があるのだ。

物心ついた頃から持っていた特技なのだが、今回はまったくわからなかった。

いつもなら初対面の人でも[声]で気付けるのだが、初めて続きで鈍っていたらしい。

まあ元々『時々』でしかなく、借金を背負った時にはそんなことすっかり忘れていた歴史もある。

意識しなければ意味がないのだろうか、と悩む事もある。


「有名らしいなー、魔術師を名乗りはしたが広まるとは思わねかった」


事も無げにいうのを「ガーン」と言う効果音が流れている気分になりながら聞き、ふと思う。

そういえばロキが考えている事は何もわからない。

知りたいと思った時でさえ。


「ま、どーでもいいだろ?行こうぜ」

「え、あ、はい」


何故だろう、と考えていたら先を促されてしまった。

置いて行かれる訳にはいかないので後ろを付いて行く。


「ありがとうございました!!」


遠ざかる馬車から馭者の声が聞こえるが、目の前の魔術師は振り返らずに手だけ振る。

その代わりかのようにフィールはペコリと頭を下げてから、前に追いつこうと駆ける。

ここからは二人きりで山道を登るのみだ。

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