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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
序章
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わたくしは美しい

《Sideアイリス・ヒュガロ・デスクストス》



 わたくしの名はアイリス・ヒュガロ・デスクストスと申しますの。


 この世の美はわたくしのために存在していますの。

 私は美しく、美しいが故に誰からも愛されておりますの。

 それは兄であれ、父であれ、異性を問わず同性からも愛を受ける存在ですの。


 それがわたくし……、アイリス・ヒュガロ・デスクストスですの。


 ハァー……、溜息すら美しさが醸し出してしまいますの。

 わたくしが溜息を吐けば、周りが一緒に溜息を吐いてしまいますの。


 最近のわたくしには二つの気になることがありますの……。


 一つ目は、弟のリュークのことですの。


 一つ下に生まれた母違いの弟は、子供の頃こそ太っていて醜く見るに堪えない存在でしたの。

 美しい物にしか興味のないわたくしは歯牙にもかけておりませんでしたの。


 ですが、六歳頃から太っていた身体は痩せて健康的になり、その頃から美しくなるために洗顔や化粧水、乳液などの美容を始めておりましたの。


 美しさの追求をする弟にわたくしは感心したものですの。

 美しいは正義! 美しいからこそ誰もが愛してくれますの。


 ただ、弟はもって生まれた美しさなのか……男の子なのに美しい。美しくなり過ぎましたの。

 それはわたくしが嫉妬してしまうほど美しく。

 ハシタナくも、わたくしは弟を犯してしまいたいと妄想してしまいましたの。


 ふふ、ハシタナイことを申しましたの。


 あらあら、お茶会に来ている令嬢の一人がわたくしを見て鼻血を出してしまいましたの。


 ふふ、ダメね。


 わたくしが美し過ぎて罪なことをしてしまいましたの。


 わたくしの中で渦巻く色欲はいつから開花されたのか聞かれたなら、弟を見たときだとハッキリ申し上げられますの。


 どこか嫉妬深くスネークのような兄でも、傲慢で獰猛に獲物を狙うグリフォンのような父でもなく。

 怠惰でありながら、美しく成長した弟へ情欲を覚えたとき、色欲を発散させたいと考えてしまいましたの。


 ああ~なんて浅ましい我が身なのでしょうか? ですが、この気持ちを公爵家の女として我慢するということこそ難しいですの。


「あっ、アイリス様。先ほどから溜息ばかり吐いておられますが大丈夫ですか?本日は私がご用意したお菓子をお持ちしましたのでいかがですか?」


 目の前では私が開いたお茶会に、令嬢達が集まっておられますの。

 私が弟を思って下着を濡らしているなど考えもしない顔で平然として、それに気づかない令嬢たちはなんとも愛らしい子たちですの。


 ですが、心配して質問をしてきたのはわたくしに次いで位の高い伯爵家のご令嬢のカリンですの。


 醜い顔……。いえ、元は悪くないと思いますの。


 太って醜くなった伯爵令嬢のカリンが心配そうな表情で私を見ておりますの。


 肉まんじゅうのような顔。


 カリンが生まれた伯爵家は物流を取り仕切る家で、珍しい食材や調理法を誰よりも早く知り得ることができますの。


 カリンは幼い頃から料理が好きで、調理を行ったお菓子や料理を、私へ提供してくれるんですの。


 だけど……彼女自身は料理を食べてブクブクと醜く太ってしまいましたの……本当に残念な令嬢ですの。


 悪い人ではないのだけれど……どうしてもその醜く太った顔を近づけないでほしいですの。


「美味しいですの」


 そうなんですの! カリンが持ってくる物は全て美味しいですの。

 

 美味しいのだけれど、目の前に用意されたマフィンは、どうみてもカロリーが高くて、ずっと食べて良い物ではないように思えますの。


「よかったです。私の手作りなんですわ」


 嬉々として微笑むが、頬の肉が盛り上がって怖いんですの。


「カリン。美味しいのだけれど、最近のあなたは見るに堪えないですわ」

「えっ?」

「ご自分で、もうわかっているのではなくて?」


 わたくしの言葉に話を聞いていた令嬢達がクスクスと、カリンを馬鹿にするような笑い声を出しましたの。


 わたくしはカリンを嫌ってはいないけれど……どうしても美しい物が好きな私としてはカリンの姿が許せませんの。


「うっ……」


 わたくしの言葉にカリンは涙を浮かべてドレスを握りしめておりましたの。ですが、仕方ありませんの。


 わたくしは言葉を着飾ることをしませんの。


「ごっ、ごめんなさい!!!」


 カリンはそのまま涙を流して走り去って行きましたの。


 疲れましたの……。


 私のもう一つの悩みは友人であるカリンが醜いことですの。


 彼女が嫌いではありませんの。

 初めてカリンにあったのは、今から10年前ですの。

 お互い二歳の頃で、その頃のカリンは愛らしい子供でしたの。


 成長と共に元々丸くて可愛かった顔は、太く醜くなり今では残念な成長を遂げてしまいましたの。


 公爵家令嬢であるわたくしの取り巻きとしては、見劣りしてもらっては困るんですの。


「さぁ、皆さん。カリンが作ってくれたお菓子は本当に美味しいですから食べていってほしいですの」


 令嬢達はカリンの体型はバカにしているけれど。

 カリンのお菓子をバカにする人はいませんの。

 嬉しそうな顔で食べている姿を見れば、彼女の見た目さえ変わってくれれば問題ないんですの。


 ああ~、友人を心配するわたくしは心も美しい……。


 で・す・の。

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大罪一家?
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