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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第二章

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欲しいものは手に入れる

《注意、悪役側の話なので、悪役の心情は興味無いという方や、胸くそ話がお嫌いな方は飛ばしてください》



《Sideシータゲ・ドスーベ・ブフ》



 私の名前はシータゲ・ドスーベ・ブフ伯爵でございます。皆さんに教えてあげなければいけませんね。

 富は、あらゆるモノを手に入れることが出来るのです。


 食べ物も、服も、便利な道具も、人すらも……ほしいと思えば富を積み上げれば手に入ってしまうのです。

 ですが、それはあまりにもつまらないと思いませんか?


 どれだけ望んでも、手に入り難いモノほど価値があるのです。


 だからこそ、今私が手に入れたい物。


 人です。


 それも二人います……一人は私に負けぬ富を持つ者。

 そして、もう一人は私に更なる富を与えてくれる才ある者です。


 わかりますか? 富とは、ほしい女性を手に入れることが出来るものなのです。


 この世の真理は富にこそあるのです。


 手に入れるためならば、いくらでも富を積み上げましょう。富など簡単に手に入れることが出来るのですから……人は甘い言葉を囁いてあげれば、己を救ってくれるのだと勝手に想像して富を差し出してくるのです。


 私には二つの顔があります。


 善良な皆さんを導く慈善者の顔。

 孤児院と言う名で集めた、幼き奴隷たちを売り買いするための奴隷商としての顔。


 違法ではと?


 いえいえ、親たちは孤児院に預けるという名目で金品を受け取っています。

 すでに親によって売られた子を、富ある方に買って頂いているだけです。

 その方が子供たちは救われると思いませんか?貧しい家で育つよりも、富ある家でたっぷりの愛情を注いで頂けるのです。子供達も幸せでしょ?


 生きるとは辛いことばかりなのですから、少しでも救いの手を差し出すだけです。

 ぶひひ、まぁどちらも私へ富を運んできてくれるので、やっているだけですけどね。


 さて、そんなことはどうでも良いのです。


 私が今もっとも手に入れたい人は……私よりも優れた富を持つデスクストス公爵家の令嬢である、アイリス・ヒュガロ・デスクストス様ですよ。


 あの方の高貴な美しさを見たとき、私は年が20歳も下の女性にトキメイてしまいました。

 ぶひひ、もしかしたらこれが私の初恋かもしれません。


 彼女を手に入れることは極めて不可能に近い。


 そう、そのためにはもっと富を手に入れなければならない。富を積み上げ、デスクストス公爵家を越えなければならないのです。

 そのためならば、娘のサンドラを差し出すこともまったく苦になりませんね。


 いえ、むしろサンドラはデスクストス公爵家のテスタに惚れている。


 ぶひひ、テスタとサンドラの間に子が出来れば、私は義父です。テスタの時勢になれば私にも権力を握るタイミングも訪れるでしょう。


 それまでに富を築かなければなりません。


 そこで私が目を付けた女性がおります。


 アカリ・マイド……彼女はマイド大商店と言われる王都全土を賑わせる商店の娘さんです。

 マイド大商店で取り扱われる商品は、流行の最先端を進み。最先端を進む商品の開発をしているのが、アカリ・マイドだということを知ったとき、私の心は震えました。


 100人に到達しそうな我が妻達。


 その99人目にアカリ・マイドを手に入れれば、私の富はもっともっと増えることでしょう。

 それも今までの比ではないほどの利益を生み出すことが出来る。発明などなくても、彼女の属性魔法《金》は、ゴールドを生み出すことが出来るのです。


 いったいどれだけの価値があることか計り知れない可能性を秘めた女性です。

 私はすぐに手に入れるために動き出しました。

 ですが、タイミングが悪かったとしか言えませんね。


 彼女はアレシダス王立学園へ入学してしまい、手を出すことが難しくなりました。

 心優しい私が助けた人々の子供たちが、監視をしてくれています。ですが、彼女自身が優秀なこともあり、0クラスと呼ばれる王族や上位貴族が在籍する一流の中に紛れ込んでしまったのは誤算でした。


 私が抱える子供たちでは、0クラスに入れる子はおらず、どうすることも出来ませんでした。


 ですが、私は気が長い方なのです。


 彼女が一年を終えて学園から帰ってくるのを見越してマイド大商店に伺いました。

 私が本気であることを示さなければなりませんからね。


「私の妃になれば、どんな贅沢も許しましょう。

 ですから私のマイスイートハニーへなって頂きたい。今日こそ良い返事を聞かせてください」


 私がマイド親子へ答えを急かしていると、邪魔が入ってしまいました。


 リューク・ヒュガロ・デスクストス……もしも、男でなければと思うほど美しい。


 私はデスクストス公爵家とサンドラとの結婚が決まっていたこともあり、その場は引き下がることにしました。しかし、待っていてもアカリ嬢からは連絡が来ない。


 ましてや、アカリ嬢がリューク・ヒュガロ・デスクストスの家へ出入りを始めたと聞けば黙ってはいられません。


 私は強行手段に出ることを決意しました。


「ゴロよ」

「はっ!」

「アカリ・マイドを私の元へ連れてきなさい。丁重にね」

「かしこまりした」


 あぁ~もうすぐ私の物になるのですね。

 いくらリューク・ヒュガロ・デスクストスの小僧に恋をしようと、私が手込めにしてしまえば小娘に執着などせんだろう。


 アカリ・マイドは私が先に目をつけたのです!


 私の者にしてしまえば、知らぬ存ぜぬで、どうとでもなるでしょう。


「閣下……」


 ゴロの声に、私は胸を高鳴らせました。


 ベッドで眠る見目麗しい美少女をやっと我が手の中に……


「傷はつけていませんね?」

「はっ。眠らせているだけです」

「ぶひひ。いいでしょう。ご褒美です」


 金貨が入った麻袋を投げ渡しました。


「ありがとうございます」

「あなたは下がりなさい。ここからはお楽しみの時間です」

「はっ!」


 私は目を覚ますのを待ちました。


 彼女が目を開くまで待ったのは、彼女の顔を見るためです。私を見て驚愕の表情はまさに愉悦の極み。


「ぶひひ、アカリ嬢!私のマイスイートハニーよ。あなたがあまりにも私を待たせすぎるので迎えに上がりました。さぁ私の99番目の妻になって頂きましょう!!!」


 そういって私が彼女に手を伸ばすと……見えない壁によって阻まれました。


「なっ、なんですかこれは?!」

「えっ?」

「何をしたのですか!?まさか魔道具を仕込んでいたのか?!そうならないように夜分を狙ったというのに用心深い。いいでしょう。じっくり攻めるとしましょう。時間はあるのですからね」


 私は一先ず、彼女の元を離れました。


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