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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
序章
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鑑定結果

《Sideマルサ・グリコ》



 魔法省に勤めていると、特殊な無属性魔法を習うことが出来る。

 その一つに鑑定魔法と言われる極秘無属性魔法が存在する。

 鑑定魔法は魔力を浴びた人や物の属性を看破することが出来るのだ。


 魔法省所属の者でも、一部の者しか開示されていない特別な無属性魔法である。


「それでは属性魔法の検査を行わせて頂きます」


 鑑定魔法は無詠唱が義務付けられている。

 魔法の秘匿のためであり、また無詠唱を体得できない者には鑑定を伝授することはない。


「それでは目を閉じて」


 言った通りにリューク様が目を閉じる。

 私はホッと息を吐く。

 先ほど見せて頂いた、クッションを浮かせる無属性魔法を創造したリューク様ならば、もしかしたら鑑定も見破られてしまうかもしれない。

 そんな危機感を覚えていたため、本来ならば目など閉じなくても良いのに目を閉じてもらうように言ってしまった。


「いきます」

「うん」


 目をつぶっているはずなのに、美しい顔が私を見透かすように感じてしまう。


 私は心の中で鑑定と唱えて、リューク様の属性魔法を鑑定した。


 属性魔法は、その者に宿る能力を言語化して現われるので、時に言語化してもわからないときが存在する。


 こちらがわからなくても本人にその言葉を伝えると、今まで知らなかったはずの属性魔法がスッと頭の中で使えるようになるのだ。


「《睡眠》と《怠惰》」


 私は鑑定に現われた文字をそのままリューク様にお伝えしました。

 ですが、驚かずには居られません。

 二属性の属性魔法を持つ者はいます。

 いるのですが、どちらも知り得ない属性魔法に私は身が震えるのを感じました。


 言葉の意味で考えれば、どちらも身体や心に作用する属性魔法なので、自然系には劣るかも知れません……ただ、使い手が存在しない属性魔法です。


 これは間違いなく希少属性魔法です。


「あ~なるほどね。うん。うわ~凄いね。言葉を伝えられただけで、どんな魔法なのか理解できたよ。

 でも、これは、使い方はまた別なのかな?」


 理解力……どれほどの情報が頭の中へ入ったのかは分かりませんが、すぐに属性魔法の性質をご理解されたようです。


「はい。希少魔法は唯一無二であります。

 そのため魔法と向き合い各々が研鑽を積み、能力を磨き上げていくのです」


 目の前の少年は、いったいどれだけの類い希なる才能を宿しておられるのか期待せずにはいられませんね。


 まだ見ぬ希少魔法、いったいリューク様はどのような魔法を授かったのか?どのような発展をさせていくのか?絶対に見てみたい!


 テスタ様のときには思いもしなかったことだが、この部屋に入った瞬間から私はリューク様に魅せられているのだ。


「魔法と向き合うか…マルさんありがとう。魔法の訓練をするときに念頭に入れておくよ。今日はありがとう。でも、驚いたよ。鑑定魔法が存在していたんだね」

「なっ!」


 詠唱は聞いていないはずだ!目を閉じて魔法陣も確認していない。

 それなのに私が鑑定を使ったことが、バレてしまっているだと!


「うん?どうかした?」

「なぜ、鑑定魔法のことをご存じなのですか?」

「えっ?だってボクの属性魔法を看破したんでしょ?それって鑑定が出来るってことだよね?」


 私は息をするのを忘れてしまう。

 属性魔法を授かった者は自らの属性魔法に夢中になって、鑑定魔法の存在に気付くことはない。


 精々、魔法省の人間は凄いのだなと思う程度だ。


 カラカラに乾いた口の中で唾を必死に飲み込もうとして、むせて咳き込んだ。


「ゴホッゴホッ!」

「あ~すいません。お客様にお茶も出さないで。シロップ」

「はい」


 側で控えていたメイドがお茶を差し出してくれる。

 私はゆっくりと喉を潤すようにお茶を頂く。

 香りもよく、スッキリとしていて今まで飲んだお茶よりも美味しく感じられた。

 何よりも気持ちが和らぐ。


「気に入ってくれたみたいだね。オススメのハーブティーだよ」

「これをリューク様が考えられたのですか?」

「そうだよ。ハーブティーは身体にもいいからね。少し茶葉を分けてあげようか?」

「感謝いたします」


 それからはメイドを交えて会話をしました。

 リューク様はあまり説明が得意ではないそうだ。

 時々メイドが分かっているところは説明してくれる。


 私が説明を求めるような質問をすると、リューク様は面倒そうな顔をされて、メイドが答えてくれるという感じなのだ。

 そうして知ったのは、魔法だけでなく美容や健康……食事などにもリューク様は精通されていて、五歳の頃から本を読み、6歳の頃には宙に浮いていたということだ。


「とても貴重な時間を頂きありがとうございます」

「ねぇ、マルさん」

「はい。なんですか?」

「よかったら、ボクの魔法の師匠になってくれない?」

「魔法の師匠ですか?リューク様には必要ないと思いますが……どんなことを聞きたいかによります」


 魔法省の極秘魔法を教えることは出来ない。


「難しい話じゃないよ。ボクがわからないときは手紙を送るから、それに応えてくれたらいいよ」

「文通のようなものですかな?齢40を越えて文通……面白いかもしれませんね」

「いいの?」

「ええ。私もリューク様にお聞きしたいときは質問をしても?」

「もちろんいいよ」

「それでは交換条件が成立しましたのでお受けしましょう」

「ありがとう!」


 私は鑑定に来たつもりが、小さな友人を得てしまいました。

 リューク様との会話は楽しく、魔法の話を始めてしまうと止まらないほどです。


 きっと、リューク様は英雄になられる器をお持ちでしょう。

 私は誰よりも早くリューク様の話を聞く権利を得た幸福者なのです。


 この話を、リューク様と同い年の娘に聞かせてやろう。

 私は土産話に胸がいっぱいになりました。

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