やっぱり家がいい
年末年始から春頃までは家で過ごすために帰ってきた。
出迎えはシロップがしてくれて、尻尾をブンブン振っていたのが可愛かったね。
……なぜ、ミリルとルビーが居るんだろう?ボクよりは先に学園を出れただろうけど……はぁ~まぁいいか。
「リューク様が願い事を叶えてくれるということなので、休みの間でもリューク様のお世話が出来る様にメイドとして雇って頂きました」
ミリルが好意を隠そうともしないで、ハッキリとお世話をしたいと言われてしまう。
「私もそうにゃ」
ルビーはノリか?ミリルに付き合っただけだろ。
どうやら研究協力のご褒美として、ボクの家でのメイドを選んだらしい。
えっ?それってご褒美になるの?給金が出るからいいの?ルビーは冒険者してた方が稼げると思うけど……まぁいいか。考えるのがめんどうだ。
「二人とも、お仕事はしっかりして頂きますよ」
「「はい」にゃ」
シロップがメイド長になって二人をビシビシ指導している。
それに、会っていなかった間にシロップが前よりも綺麗になっている気がする。
何かしたのかな?それにスタイルも良くなった?
「シロップは、ボクがいない間は何してたの?」
「冒険者としてレベル上げをしておりました」
「レベル上げ?あ~だからか、前よりも綺麗になった気がしてたんだよ。レベルが上がると、より身体が洗練されて身も引き締まって、肌も綺麗になるらしいからね」
なるほど、納得だ。
「きっ、綺麗ですか?」
「うん。シロップ綺麗だよ」
シロップは顔を真っ赤にして走り去って行く。
「リューク様……タラシにゃ」
「リューク様!私もレベルをもっと上げます!」
ルビーにはジト目で見られ、ミリルからは意気込みを言われた。
屋敷に戻っても賑やかな生活を送ることになるとは、これはこれで悪くない。
やっぱり家はいいね。落ち着ける空間って大事だよ。
学園では色々としがらみがあるからね。
シーラス先生とか、未だに何か言いたそうな顔をしているし。
「バル。図書室までお願い」
寝転んだまま、バルにお願いして移動してもらう。
執事長代理として、シロップママがお金の管理をしてくれている。
本は定期的に入れ替えるようにしてもらっているので、ボクがいない間に知らない本が増えているはずだ。
メイド長のシロップがお茶の用意をしてくれて、ルビーが掃除、ミリルが整理整頓をしてボクの側で気配りをしてくれる。
うん。いいなぁ~これぞ怠惰だ。あとは……
「リューク、本日も夕食を作りにきましたよ」
「うん。やっぱりカリンの料理が一番美味しいよ」
みんなで食べる夕食をカリンが作ってくれる。
六人で囲む食卓は賑やかで……ああ、こういうのを幸せって言うんだろうね。
「いつもありがとう。カリン、凄く美味しかったよ」
「ふふ、リュークが喜んでくれて嬉しいですわ」
「でも、大変じゃない?仕事も忙しいんでしょ?」
夕食を終えたので片付けをみんなに任せて、部屋でカリンと話をする。
カリンを労ってイチャイチャするのが、僕らの日課だ。
「リューク。私は一番したいことをしていますのよ」
「一番したいこと?」
「ええ、私はリュークにご飯を作るのが一番楽しいのです。それに今ではシロップや、ミリル、ルビーなどお友達がいて、賑やかな家族のようで嬉しいのです」
カリンは凄いと思う。剣帝杯は不参加で戦うことはなく、早々に実家に帰って仕事を再開した。
ボクが帰ってきてからは、態々ご飯を作りに来てくれて、ボクのお世話も手を抜かない。
疲れて倒れてしまうんじゃないかと思うから、ボクは毎日カリンに回復魔法とマッサージをするようにしている。
「今日は打ち合わせに戻りますので、マッサージは今度にしますね」
「え~寂しいよ」
「ふふ、今日はシロップにしてあげてください。あっ、それと年明けを記念して船上パーティーを開くことが決まったので、リュークも出席してくださいね」
「え~いかないとダメ?」
船上パーティーとかめんどう過ぎる。
デスクストス公爵家の関連する家がやってくるのは目に見えているし、兄上とか姉様に会うのが嫌だ。
「そういうと思っていましたが、今回は絶対です」
「なんで?」
ボクが問いかけると、カリンが申し訳なさそうな顔をする。
「テスタ様の結婚披露パーティーを兼ねていますので、デスクストス家の者ではなくカリビアン家の一員としてリュークには同席してほしいのです」
「あ~それはいかないとダメだね」
なるほど、兄上はどうでもいいけど……カリンが肩身の狭い思いをするのは嫌だ。
他の貴族が集まる機会に、兄上の結婚を発表しておくのか……ボクらの結婚はあと二年後だから、発表も二年後だけど体面的には婚約者アピールがいるんだろうね。
その辺は貴族の習わしだから仕方ないことなんだろうなぁ~めんどうだ。
「兄上はどうでもいいけど、カリンに恥をかかせたくないからね」
「普通は私のことはどうでも良いのですが……リュークらしいです。顔を出せばキリの良いところで退出しても大丈夫ですので、お願いしますね。
準備はこちらで全てしますので、リュークは身体だけ来てくれればいいです。
移動はバルちゃんにお願いしてもいいので」
「うん。そうする。ありがとう、カリン」
何から何まで出来た婚約者様だよ。
ボクには本当にもったいないけど、ボクはカリンがいないともう生きていけないね。
「そっ、そうですわ……本日はそろそろ戻らないといけないのです……ですから……ギュッとしてほしいですわ」
うん。なんでバリバリ働いているのに、こんなにも可愛いんだろう。
「おいで」
ボクはカリンを抱きしめて全身に回復魔法をかけてあげる。少しでもカリンの身体から負担が減るように魔力で包み込む。
「ふぅ~リュークのエネルギー充電完了ですわ!」
「うん。無理はしないでね。いつでも帰って来てね」
「もちろんですわ。私の帰る場所は、リュークの側だけです」
カリンを見送ったボクはバルに身を委ねて身体を動かした。




