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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第二章

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お待ちしておりました

《Sideシロップ》


 我が主様がアレシダス王立学園に入学されてしまいました。


 主様は自分のことを自分で全て出来るのですが、めんどうくさがりなところがあります。毎朝のルーティーンだけは自分で動かれるのですが、もう一度寝てしまうとなかなか起きてはくれません。


 本当に一日中寝てしまうこともあるんです。ですから、学校で寝坊していないかとても心配です。


 私ならば、主様が起きる時間にお声かけして、お着替えや歯磨きも膝枕でしてあげられるのに……大丈夫でしょうか?毎日、主様がいないことばかり考えてしまいます。お屋敷のお仕事はちゃんとしていますが、ふと、主様が呼んでくれるのではないかと耳を澄ませます。

 学園に入る前であれば、いつもお部屋の近くにいて呼ばれるのを待っていました。


 呼ばれない……寂しくて、つい我が主様の部屋へ毎日いないのか確認に行ってしまいます。そして、いつもいない主様を確認して、私の尻尾は元気を無くすのです。


「シロップ、あなたは毎日何をしているのですか?」

「お母様」

「あなたはリューク様専属メイドです。リューク様の屋敷を守るのがあなたの役目でしょ。リューク様を求めてどうするのです」

「ですが……寂しいのです」

「ふぅ~まだ離れて三ヶ月ほどではありませんか……わかりました。屋敷のことは私がやっといてあげます。あなたは気分転換に行ってきなさい」

「気分転換?」

「そうです。リューク様はアレシダス王立学園でご自身を成長されていることでしょう。ですから、あなたも成長なさい」


 お母様からは様々なことを教えてもらっています。

 ですが、今回は何を言いたいのか全くわかりませんでした。


「何をすれば?」

「そうですね。成長という意味であれば、レベル上げが一番でしょう。メイドとしてはあなたにほとんど教えてしまいましたからね。リューク様を守るための力を強くするのもいいでしょう。冒険者に登録して魔物を狩ってきなさい!」


 お母様から戦闘技術は学んでいましたが、確かに実践経験が私には乏しいです。

 もしも、主様が対応できない悪漢に襲われた時、私がお守りしなくては!


「わかりました!お母様。私、レベル上げに行ってまいります」


 屋敷のことはお母様に任せれば大丈夫です。

 リューク様、私は強くなります。


 王都の冒険者は、魔物との遭遇が少ないそうです。

 レベルアップには適していないということで、少しばかり辺境へ移動しました。

 年末には主様が帰って来られるので、それまでには帰らなければなりません。


 帰ってきた主様に強くなったねと、褒めてもらうためにレベルアップに勤しみました。


 辺境は亜人への迫害は少なかったです。

 王都で感じる蔑むような視線は感じることなく、皆さん亜人など関係なく魔物の脅威から互いを助け合う仲間として力を合わせていました。


 ゴブリンやオークなどが畑を荒らしに来るので、毎日大量に狩らなければ村への被害が多くなってしまいます。

 私がやってきたマーシャル領はどこに行っても魔物の被害を受けていました。

 大量の魔物を狩る日々は、レベルアップに困ることはありませんでした。

 私が魔物を倒すと村の人たちはとても喜んでくれるので楽しいぐらいです。


「ねぇ、シロップお姉ちゃん。ずっとここに居てくれないの?」


 村の子供たちは可愛くて、私も彼ら、彼女らを守ってあげたい気持ちになります。


 ですが……私の心には決めた方がいるのです。


「ごめんなさい。私は待っているご主人様がいるのです」

「ご主人様?」

「はい。その方はなんでもご自分で出来るのに、何にもしようとしないんです」

「ええ~自分で出来るのにしないの?変だよ。ダメな人だよ」

「ふふ、そうですね。ですが、私は求められている気がするので、嬉しいのです」

「え~シロップお姉ちゃん。ダメ男が好きなの?大人って、変なんだね」

「ふふ、主様はダメ男ではありませんよ」

「ひっ!」


 主様の話をしたことで帰りたくなってしまいました。

 それに半年が経ち、そろそろ学園もお休みになっているはずです。


 主様を出迎えるために、屋敷にそろそろ帰りましょうか?


 マーシャル領で魔物狩りをしたことで狩猟本能とでも言えば良いのでしょうか?気持ちがスッキリして、心にも余裕が出来ました。

 私の成長を主様に見て頂きたい……褒めてくださいますかね?


「帰るとしましょう」


 私はマーシャル領を後にしました。


「あら、おかえりなさい。シロップ」


 私が屋敷に戻ると、お母様が出迎えてくれました。

 すでに、マーシャル領から王都までの距離は遠いため、帰ってくる間に年末近くになってしまいました。急いで主様を出迎える準備をしなくてはいけません。


「お母様、今日までありがとうございます。私は主様に甘えていました。やはり自立することも大切ですね」

「ええ、そうね。あなたも強くなって成長してきたみたいでよかったわ。

 そうだ、あなたが留守の間に二人ほど臨時メイドを雇ったのよ」

「臨時メイドですか?大丈夫なんでしょうか?」

「カリン様の推薦だから、大丈夫よ」

「カリン様が?」

「ええ、何でもアレシダス王立学園が休みの間だけ、メイドとして雇ってほしいそうよ。リューク様のご学友で、仲良くしている子たちだそうだから、あなたもちゃんとしないとダメよ」


 私は屋敷用のメイド服を纏って身を引き締めました。


「この子たちよ」


 お母様が連れてきたのは、可愛らしい女性でした。


「よっ、よろしくお願いします。ミリルです」

「よろしくにゃ!ルビーにゃ」


 主様のご学友である少女たちは、とても可愛らしく。

 一緒にアレシダス王立学園に通えて……羨ましいです。


「リューク様専属筆頭メイドのシロップです」

「筆頭ってあなた肩書き増えてるわよ」


 お母様が何か言っていますが、気にしません。


「主様のご学友であろうと、メイドとして働く以上は仕事をちゃんとして頂きます。よろしいですね?」

「「はい」にゃ」


 私は二人にメイドとして仕事を教えてることにしました。


 ミリルさんは、少しドジなところはありますが、物覚えが良く、整理整頓に優れていました。

 ルビーさんはお調子者なところはありますが、一つ一つの仕事は丁寧で窓ふきやお風呂掃除、洗濯などとバランス良く優秀でした。


「カリン様、お久しぶりです」


 二人の仕事を教えるのも一段落した頃、カリン様が訪問されました。


「シロップ。久しぶりですね」

「はっ、前回は不在にしておりまして、すみません」

「いいのです。それよりも今日は、リュークが帰ってくるんですよね?」

「はい。主様から帰宅の連絡がありましたので」

「ふふ、一緒に出迎えようと思ってまいりましたわ」


 カリン様は主様の婚約者様です。

 私の主になられる方なので、私よりも上です。


「主様も喜ばれると思いますよ」


 そっと、カリン様が耳元に口を寄せてきました。


「リュークから、シロップを妾にしたいと言われました。シロップは良いですか?」


 主様は本当に私を大切にしてくれています。

 顔が熱くなるのを感じます。


「ふふ、言葉は不要です。一緒にリュークを支えましょうね」


 カリン様は偉大です。器の大きい方で、私のことを受け入れてくださいました。


「あっ、馬車が来ましたよ」


 私は自分でも驚くほどの速度で馬車の前に辿り付くことができました。


「うん?やぁ、シロップ。ただいま」


 誰よりも早く主様を出迎えることが出来ました。


「お帰りなさいませ、リューク様。お帰りをお待ちしておりました」

「尻尾が凄く動いているね。喜んでいるのかな?ボクもシロップに会いたかったよ」


 主様は凄い人です。私の気持ちがすぐに分かって頭を撫でてくれました。


 あっ、主様は学園に入る前よりも身長が伸びています。

 学園に入る前は同じぐらいだったのに、私よりも高くなられたのですね。


「夜にゆっくり話そうね。今はカリンもいるみたいだから、みんなでお茶でもしよ」

「はい!ご用意いたします!」


 久しぶりに主様から命令を頂きました。


 こんなにも嬉しいのですね!!! 私は幸せです。


第二章


序章です。

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