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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
最終章

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リューク将軍

《sideダン・D・マゾフィスト》


 ルピナスとの戦いは激しかった。 

 ムーノの犠牲だけでなく、多くの騎士が命を散らすことになった。

 それでも迷いの森を占拠していた魔物たちはルピナスによって捕食されていたこともあり、数を圧倒的に減らしていた。


「ガウェイン様 ガッツ様」

「ダン。よくぞ、迷いの森のボスを倒してくれた」

「いえ、多くの犠牲を出してしまいました。俺自身もハヤセがいなければ危なかったです」

「恥じるな。彼らは騎士として務めを果たして死んだのだ。むしろ誇りに思ってやってくれ」


 ガウェイン様の激励に俺は顔をあげる。


「はい! 後悔を俺がするのは違いますよね」

「うむ。それよりも今後だ。迷いの森の魔物は九割が殲滅状態だ。それでも迷いの森に根付いた主たちが今も粘っておる。ワシとガッツはそこにかかりきりになるだろう」

「はい! そちらはマーシャル家の悲願でもあると思っているので、お願いします」

「ありがとう。兵士も出してやりたいが、不甲斐ないことに我々では倒し切れるのか不安でな」

「そちらも大丈夫です。最前線はアクージ家とネズール家が兵を。カリビアン家が食料を、ゴードン家が職人を送ってくれています」


 全てマーシャル家とは敵対していた家々だが、リュークが王になったことで従ってくれている貴族家だ。


 今、アレシダス王国はリュークを中心にまとまりを見せている。

 不思議なことだ。


 たった一人の人間に全ての者たちが期待して、後についていきたいと思ってしまっている。


「ワシの時代では考えられないことだ」

「ガウェイン様?」

「いや、昔を思うのは年寄りの悪いところだな。ダン」

「はい!」

「次世代の代表として、貴様の働きが鍵だ。我々が成し遂げられなかったことを貴殿に託す!」


 ガウェイン様が膝を付き、俺に礼を尽くしてくれる。


「やっ、やめてください! 俺が偉いわけではありません」

「いいや、それは違うぞ。ダン」

「えっ?」

「お前はすでに《勇者》だ。魔王を討てる者、それが《勇者》だと言われている。そして、お前は勇者に相応しい戦いを繰り広げてきた。先の迷いの森の主である《暴食》のルピナスもダンが倒してくれた。我々では太刀打ちもできなかっただろう」


 そんなことはないと、俺は否定ができない。

 多分、お二人が相手をしていたら勝てなかったと思ってしまう。


「《勇者》ダン・D・マゾフィストよ。ガウェイン・ソード・マーシャルは貴殿を育てたことを心から誇りに思う」

「あっ」


 そうだ。俺はこの人の背中を見て育ってきた。

 そして、その人に未来を託されているんだ。

 簡単に否定していい話じゃない。


「マーシャル様、あなたのことを第二の父だと思っています。ガッツ様は兄だと。そしてリンシャンのことを姉だと思うようになりました。俺のような我儘で不出来な弟をこれまで育て、見守ってくれたこと心から感謝いたします」

「ガハハハ、堅苦しい挨拶はここまでじゃ! 我々には似合わぬ。ここからは笑ってお前を見送ろうぞ!」

「はい!」


 ガウェイン様に背中を叩かれ、ガッツ様にも同じ場所を叩かれる。

 それは二人と共にいく。

 マーシャル領の騎士たち、全員から受ける洗礼になった。


 みんな、幼い頃には俺を育ててくれた先輩たちばかりだ。


 多くの騎士が欠けてしまった。

 それでもこの戦いが終われば、マーシャル領から魔物の行軍はなくなり、平和が訪れるのだ。


「必ず! やり遂げてみせます」

「頼んだぞ。ダン」

「ダン! よろしく頼む」


 二人だけでなく、マーシャル騎士団全員から敬礼を受けた。


 彼らの思いを受けて涙が流れる。

 

 だが、その想いを抱えて俺は戦場に行こう。



 《魔王の住処》の前に建てられた砦に入る。


 砦には、アクージ元帥。タシテ宰相、ディアスボラ将軍が顔を揃えていた。


「遅れて申し訳ありません」

「別に遅れてねぇよ。それに一番の遅刻野郎がやっときたぞ」

「えっ?」


 会議室に繋がるバルコニーに巨大な幻獣が降り立つ。

 馬のようにも見えるが、その大きさが異常であり、何よりも空を翔ける馬など存在しない。


「麒麟!」


 何度か、リュークと共にいるのを見たことがある。

 今回は荷馬車を引くのではなく、人を乗せてやってきた。


「リューク!」


 バルコニーから入ってきた人物に俺はつい声を出してしまう。


 リュークは片手をあげて、俺とタシテに軽く挨拶をする。

 その姿すら様になっている。


 そう思えるようなリュークの服装は紫の軍服だった。


 デスクスト家の紋章に使われる蛇。

 アレシダス王家の王冠に銀狐。

 カリビアン家の海と船。


 それぞれの紋章を刻み込まれた特別製の軍服に身を包んだリュークは様になっていた。


「諸君、よく迷いの森の討伐を成し遂げて、魔王の住処が見える位置に砦を作ってくれた。私としても全ての準備は整った。だから、魔王を終わらせに行こう」


 短い言葉だったが、俺は自然に拍手を送っていた。


 それは俺だけでなく他の三人も同じで、四人でリュークを称えた。


「ふっ、テスタの弟が将軍として、戦場に立つのか? くく、よろしくなリューク将軍」

「全体の指揮はお任せしますよ。バドゥ元帥」

「任されよう」


 俺は? 俺は何をすればいいんだ?


「露払いは、全てアクージにお願いして、少数精鋭で魔王城へ乗り込みます」


 胸が高鳴る。これはあれだ。


「ボク、ダン、タシテ、ハヤセ、ナターシャ。そして」


 リュークが合図を送るともう一人の人物が会議室に入ってくる。


 それは、聖女ティアだった。

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