ヒロインたちの会話 終
《sideカリン・シー・カリビアン・デスクスト・アレシダス》
ギュッと胸苦しい思いを感じる。
リュークは、妻たち全員を王都から離して、カリビアン領のリューへ連れてきていた。
どうしてここだったのかは、シェリフがいるから? 多分、深海ダンジョンがあるからだと思う。
「行ったんですの?」
「はい。行ってしまいました」
リュークが去ってしまったリューの宮殿。
バルコニーで海を見つめているとアイリスがやってきた。
「あなたは本当に強くて、ワタクシの憧れですの」
「えっ!」
アイリスに抱きしめられる。
幼馴染であるアイリスは私の憧れだった。
貴族たちの中でアイリスは常にトップに立つ人で、みんなを引っ張っていた。
そんなアイリスが私に憧れているという。
それはこちらのセリフだ。
「ずっとあなたとは話をしないといけないって、思っていましたの」
「私もずっと話をしたかった。どけど、アイリスはどんどん大きな存在になってしまって」
学生時代の間に、剣帝杯で優勝して騎士爵を取り、聖女になり。卒業後は通人至上主義教会の指導者として、各地を飛び回っていた。
「何を言っていますの。あなたの方が凄いではありませんの。ダイエットを成功させて、美のカリスマと呼ばれ、カリビアン領の領主として伯爵になり。ふふ、ワタクシたちはリュークに引っ張られて、とても遠くに来てしまったんですの」
あの日、アイリス様に太っていた私は醜いと言われて、デスクストス公爵家の庭を迷った。
そんな私を救ってくれたのがリュークで、私たちは出会うことができた。
あの日から、私たち三人の関係は歪な綱渡りだった。
アイリスは、姉弟という中でリュークに惹かれ。
私への嫉妬を持っていたのだろう。
たまに向けられる憎悪の視線の意味が当時はわからず、今ならばリュークへの想いだったのだと理解できる。
学園を卒業した後は接点がなくなり、どんどん距離が空いていった。
「アイリス。リュークを奪った私を怒っていますか?」
「……ふぅ。ええ、かなり嫉妬しましたの。あなたのことを呪ってやろうと思いましたの」
「やっぱり」
「だけど、それ以上にリュークはあなたを選びましたの。それがワタクシは誇らしいと感じていましたの」
「えっ?」
「リュークは見た目で判断する人間ではありませんの。当時のあなたは素質はあるのに、醜く太っていてみっともありませんでしたの。ですが、リュークはあなたの見た目ではなく、本質を見てあなたを選びましたの。それがワタクシは誇らしかったですの」
アイリスから告げられた言葉は、私が知らないアイリスの気持ちそのものだ。
こんなにも赤裸々にアイリスが気持ちを語ってくれることは初めてで驚いてしまう。
「あの当時、ワタクシには様々な人たちによる思惑が絡み付いていましたの。だから、本音で私と話してくれるのはあなただけだったんですの。そんなあなたを選んだリュークを誇りに思いますの。そして、あなたはリュークの隣に立つために、美のカリスマだと言われるまでに上り詰めましたの。あなたたちはワタクシにとって誇りですの」
自然に涙が溢れていた。
ずっと、私の胸にはアイリスへの想いが胸のつかえとして引っかかっていた。
心の中では、私は嫌われていてアイリスと分かり合える日は来ないんじゃないかと思っていた。
「カリン。あなたがリュークを育てたんですの。この街も、そしてリュークの妻たちも、全てはリュークではなく、あなたを中心にしていますの」
宮殿からリューの街が見える。
「リュークは《怠惰》な子ですの。ふらふらとどこかに飛んでいって、フラッと帰ってきては女性を増やして、それなのにあなたはそれを全て受け入れていましたの。それは凄いことですの。誇るべきことですの」
もしかしたら、私は誰よりも一番アイリスに認められたかったのかもしれない。
「ありがとう。アイリス」
「ふふ、何を泣いていますの。あなたがリュークの正妻ですの。つまりは、現在の世界を統べる王の妻ですの」
「大袈裟だよ!!」
「そんなことはありませんの。あなたには一番の妻になってもらって私は二番目になりますの」
「ふふ、うん。一緒にリュークを支えようね」
リューの宮殿から外を眺めると、これまでリュークが妻にしてきた子達がこちらに手を振っている。
シロップ、リンシャン、エリーナ、リベラ、アカリ、ミリル、ルビー、シーラス、ココロ、カスミ、ユヅキ、ミハル、ノーラ、アンナ、クウ、クロマ。
シェリフは深海ダンジョンに、ジュリアは帝国に、本当にリュークはたくさんの妻を持ったものね。
「みんな〜そろそろご飯にしましょう〜」
私が声をかけると全員が手を振って答えてくれる。
みんな良い子、嫌いになんてなれるはずがない。
「「「「「は〜い!!!!!」」」」」
空を見上げる。
私たちはリュークの帰り待つしかできない。
「どうか無事に」
祈りを捧げる。




