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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
最終章

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487/501

家族との時間

 各国の重鎮に魔王が滅んだ後に起こり得る弊害について語ったボクは、一旦家族を連れてカリビアン領へ戻ってきていた。


 ダンがいくら強くなっていたとしても、迷いの森を攻略するためには数日が必要になる。《暴食》のルピナス以外にも迷いの森にも、たくさんの魔物が存在するのだ。


 さらに、魔王の住処に向けて、前線基地の構築も行なってもらうつもりなので、数ヶ月は必要になると思っている。


 そのため王宮の実務をユーシュンに丸投げして、カリビアンで家族で過ごす時間を取ることにした。


 カリンが作ってくれた夕食を集まれるだけの妻たち全員と食事を取る。

 何かを語り合うわけではなく、ただ、一緒に過ごす日々ではあるけれど、それでもこの時間が貴重で大切なことをみんながわかってくれている。


 夕食を終えて、王宮の中で静かな時間が流れる。


「リューク、いいかしら?」

「うん。もちろんだよ。カリン」

「みんなは気を聞かせて今日はそれぞれの家に帰って行ったわ」

「そうか……」


 カレンを寝かしつけたカリンが、ワインとチーズを持って現れる。

 カリビアン地方特産のワインは、全世界で人気の一本になっている。


「乾杯」

「ああ、乾杯」


 カリンが注いでくれたグラスを二人だけの時間で打ち鳴らす。


「ふぅ、こうやってリュークと二人でお酒を飲む日が来るなんて昔は考えもしなかったわ」

「そう? ボクは他の誰よりもカリンと過ごす時間を大切にしてきたつもりだよ」

「ええ、わかっているわ。あなたが私を特別にしてくれていることは知ってるもの。これだけのたくさんの妻たちを迎えながら、あなたは最初から私を一番だと宣言してくれていた。とても不思議なことだけどね」

「そうかな? ボクにとっては、君と出会ったことは運命の出会いだと思っているんだよ」


 本当にカリンと出会ったことが、ボクが外へ飛び出す運命の分岐点に思えた。


「ふふ」

「どうかした?」

「いいえ、私の方が運命の出会いだと思っていたのに。あなたもそんな風に思っていたなんて、嬉しいって感じてしまって」

「カリンも思っていたんだね」

「当たり前です。出会ったその日にプロポーズをされたんですもの」


 カリンはボクたちの出会いを振り返るように昔のことを語り出す。


 アイリスのお茶会にきて、中庭まで迷っていたカリン。

 そこでモーニングルーティンをしてシャワーを浴びていたボク。


 あの頃は、怠惰でありたいけど、キモデブガマガエルになりたくない。

 そして、断罪を回避するためにはどうすればいいかということばかり考えていた。


 家族が信じられず、執事に裏切られて食事も安定して美味しいものが食べられずに自分で作っていた。


「カリンの作った料理は衝撃的だったからね。ボクが……前世も含めて一番美味しいと思える食べ物だった。そして、カリンという人物の可愛さに一目惚れだったよ」

「本当かしら? あの頃の私は太っていて、お世辞にも可愛くはないと思うけど」

「そんなことはないよ。ボクは君の見た目など気にしていなかった。君の本質の可愛さに惚れんだから」

「そうね。あなたはダイエットをしたいって私が言わなければ何も言わなかった」


 カリンがダイエットすることに協力して、それをきっかけにカリンは変わっていった。それは良い方向にだ。


 健康に痩せる食材を開発して、王都でも人気の料理店をいくつも経営するようになった。


 カリビアン料理は、一種のブームを産んで、今ではブランド化されている。


「色々な事があったね」

「ええ、本当に色々なことがありました」


 熟年夫婦のような会話だけど、ボクにとってはやっぱり妻はカリンなんだと思える。


 シロップも、リンシャンも心を許すことはできる。

 アイリス、エリーナ、シーラスは美しくて、見ているだけで輝かしい。

 ローラ、ココロ、ミソラ、ユヅキには癒しを与えてもらえる。

 アカリ、リベラ、ミリル、ルビーとは長い付き合いて分かり合えた友のようだ。

 クウ、アンナ、クロエ、カスミはボクを信頼して支えてくれている。


 普段は離れている、ジュリア、ティア、シェルフ。

 

 妻たちそれぞれの心がボクをここまで運んできてくれた。


 だけど、ついボクが寄り添っていたいと思うのは。


「何かがあっても、いつも君の隣が一番落ち着くと思ってしまうんだ」

「ええ、私はリュークの妻ですから」


 カリンは背筋を伸ばして大きな胸を張る。

 どんなに時が流れても彼女がボクの妻でいる限り、ボクが負けることがないと思えてくる。


「ありがとう」

「はい。あなた」


 互いに寄り添いあって、キスをする。


 昔は、バルに乗って空の旅をしたこともあった。


 魔王討伐が終わったなら、皆の元に帰って、一人一人と出かけたいものだ。


「カリン、ボクは魔王を倒すよ」

「ええ、リュークなら、いいえ。リュークにしかできないことだと今ならそう思います」


 カリンと共に、ワインを飲み干して部屋へと向かう。


 これは臆病なボクの心を、カリンに押してもらうために必要な時間だ。

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