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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
最終章

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戦争の準備

 ボクは、迷いの森へ進軍した王国軍を見送った後で、ノーラと、子供のアーラを連れて、塔のダンジョンの最上階へと転移した。


 ただ、最上階の扉は固く閉じられていて、お姉様は塔のダンジョンを封印するために中にした。


 ボクはお姉様を一度だけ呼べる手段を使って、合図を送る。


 すると、ゆっくりと扉が開かれていく。


「本当にあなたは……リュークちゃん。あなたって子は」


 その瞳には涙を浮かべていた。


 ボクはお姉様に約束をしたんだ。

 ノーラに子供が産まれたなら、孫を見せにやってくると。


「お母様!」


 ノーラが珍しく感情を出してお姉様を呼ぶ。

 胸に抱いた子供を見せるように、お姉様に近づいていく。


「ノーラちゃん。それに……。私の孫、になるのね」

「ええ。リュークとの間にわっちは子供をもちんした。名前をアーラというでありんす」


 お姉様は娘を慈しむように、ノーラとアーラを抱きしめた。

 その大きな体で、しっかりと抱きしめるように優しく二人を抱きしめる。


「ノーラちゃん。今、幸せかしら?」

「幸せでありんす。お母様がリュークを教えてくれて、わっちは、幸せでありんす」

「そう、よかったわね」


 親子の再会をしばし離れて見ていると、ボクをお姉様が呼んだ。


「ありがとう。リュークちゃん。あなたは本当にたった一度しかできない私を呼び出す権利をノーラちゃんとアーラちゃんに会うために使ってくれて」

「約束したじゃないか」

「うふ、あなたは怠惰なくせに、そんなところは律儀なのね」

「カウサル帝王、プラウド父さん、テスタ兄さんが逝ったよ」


 お姉様には、ノーラを会わすだけじゃない。

 もう一つのお願いごとをするために来たのだ。


「そう、そうなのね。男たちは去って、残されたのは私一人」

「……頼みがあってきました」

「わかっているわ」

「お母様?」


 ボクが詳しく伝えなくてもお姉様は理解してくれた。


「ノーラちゃん、そして、アーラちゃん。最後に二人に会えて私は幸せよ」

「最後? お母様はどちらに行かれるのですか? もうお役目を辞められても良いのではないですか?」

「ごめんなさい。私が役目を辞めてしまえば、この世界を全てリュークちゃん一人に背負わせてしまうの」


 ノーラがボクを見る。

 その瞳は、泣きそうな顔でボクにどうにか訴えかけるような瞳だ。


「わかっているよ。お姉様。これは保険です」

「保険?」


 ボクは一つのアーティファクトをお姉様に渡す。

 それはプラウド父上が守っていた遺跡の最奥で見つかったペンダントだ。


 それにボクが魔法陣を加えた特別性の魔導具だ。


「必ず肌身は出さずつけておいてください」

「うふ、あなたはどこまでも怠惰では無いわね」

「逆だよ。怠惰になるために、ボクはどこまでも怠惰なんだ」

「そうだったわね。ノーラちゃん。素敵な旦那様を見つめたのね」

「はい!」

「リュークちゃん。二人を幸せにしなければ、ぶっ殺しちゃうわよ」

「もちろんです」


 ボクらの返事を聞いて、お姉様は頷く。

 そして、構えをとるように塔のダンジョンを殴った。


「えっ?」


 ノーラが驚きの声を上げると、ボクらは塔のダンジョンから弾き出されていた。


 そして、迷宮都市から塔のダンジョンは消えていた。


「塔がなくなりんした!」

「ああ、お姉様は行ったんだ」

「行った? どこに行ったでありんすか?」

「最終決戦地は、魔王の住処だ。だけど、そこに乗り込む前に、ダンたちは迷いの森で戦いを行う。その間、魔王に手を出されると困るんだ」

「それは、アクージ元帥の役目でありんしょ?」

「いいや、アクージでは絶対に止められない。魔王を止められるのは、魔王だけだ」

「どういうことでありんす?」


 ダンジョンの支配者となっている者はダンジョンマスターであり。


 魔王だ。



《sideアグリ・ゴルゴン・ゴードン》


「あら〜久しぶりね。魔王ちゃん」

「貴様か、貴様ら世代は、期待できる世代だと思っていたが、誰も彼も期待ハズレであった」

「それはごめんなさいね。だけど、私たちはそれでもいいと思っているわ。次の世代に託すことができたんだもの」

「ふん、忌まわしい怠惰の小僧か、確かに奴は今までの者とは違う。この我と愚弄するような振る舞いばかりだ」


 最強と言われて幾千。


 カウサルが帝王になろうと、プラウドが王に迫る宰相になろうと、最強は譲りはしなかった。


 それは、あの日の戦いを私も忘れてはいないから。


「あなたが私たち三人を弄んだ日から、私たちの道は別れて行った。その逆らうらみぐらいは晴らさせてもらうわね」

「貴様にできるか? 傲慢の小僧は我の前で膝を屈した。勇者の小僧は、我にたどり着く前に倒れた。嫉妬の小僧は強かったが、傲慢に飲み込まれた。暴食はこれから育てればいい。残すは、強欲の貴様と、怠惰の小僧だけだ」


 これまで魔王の存在は、多く確認されていた。

 だけど、それは全て魔王の残留思念のようなもので、実体ではない。


 では、実体の魔王とは?


「うふ、これが憤怒の魔王なのね。目の前に立っているだけで身が焦がされてしまいそうね」

「立つ資格を得ただけで褒めてやろう。さぁ、出来ることをして見せよ」

「最強なめんじゃねぇよ! 魔王がナンボのもんじゃい!」


 若い子達の礎となるために、数日に時間を稼いであげるわ。


 リュークちゃん。


 あとは頼んだわよ。


 ノーラ、幸せになりなさい。

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