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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
最終章

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484/496

迷いの森攻略戦 終

《sideハヤセ》


 迷いの森攻略を命じられた際に、私はリューク様に個人的に呼ばれていたっす。


「リューク王様、どうされたっすか?」

「すまないな。君一人を呼び出して」

「構わないっす。リューク様にはたくさんの恩を感じているっす」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。今回の戦いは、魔王に続く戦いだ」


 リューク様は、二人で話をされる際に、私を椅子に座らせて、ご自身は立ったまま語り始めたっす。

 それは、リューク様が抱えていた想いだと思ったっす。


「はいっす。これが最後の戦いになると私も思うっす」

「ああ、長年、マーシャル領を苦しめ、王国の脅威でありつづけた。危険な最高ランクダンジョンを攻略する。そして、その勤めをダンに託す」

「リューク様は来られないのですか?」

「もちろん、最後の時には駆けつけるつもりだ。だが、お前たちが迷いの森で戦っている間、俺は別の戦いをしなくてはいけなくてな」


 別の戦い? 魔王以外にまだ倒すべき敵がいるってことっすか?


「ハヤセ、ダンの力を引き出せるのはお前だけだ」

「ダンの力?」

「そうだ。ダンの力は絆の力であり、何も考えない強さだ」

「絆の力と何も考えない強さ」

「ああ、絆の力は、もちろんハヤセを想う気持ちであり、何も考えない強さは、ダンはボクでも勝てるのかわからないほど強くなっているのに、最後の自信がどうしても持てていない。だから、それをお前が背中を押してやってくれ」


 リューク様は、ダンを眼中にも留めていないと思っていた。だけど、違ったのだ。


 ずっと前からリューク様は、ダンのことを認めてくださっていた。

 それは帝国の時にも、そして迷宮都市の時でも同じだった。


 いや、もしかしたら学園であった頃から、リューク様はダンにだけは厳しかった。


 その時からずっとダンを認めていたのかもしれない。


 戦場には、常にダンの助けだけはしなかった。

 むしろ、塔のダンジョンでは、ダンに戦いを任せて自分は控えておられることの方が多かった。


「わかりましたっす。私がダンの背中を押すっす」

「ありがとう。《暴食》の倒し方だが」


 そう言って、語ってくださったリューク様の戦い方は、ダンが導き出した答えと同じだった。ただ、戦い方はリューク様ができることと、ダンができることは違うと説明してくださったっす。


「ダン、あなたはリューク様が認める強さをちゃんと持っているっす。だから、自分に自信を持つっす」


 私はダンの心が折れそうになった時に、支えるための役目をするだけっす。



《sideダン・D・マゾフィスト》


 不思議だ。


 《暴食》のワニとして暴走を開始した時は怖くてたまらなかったのに、ハヤセが背中を支えてくれている。

 その後ろにリュークがいるような気がして、二人に支えられていると想うだけで、俺は負ける気がしなくなる。


「GYAAAAAAAA」


 もう叫びにも強さを感じない。

 突進してくるパターンを覚えて、切りつける。

 ルピナスなった頃なら、多彩な技や、攻撃を仕掛けてきたが、今のワニは単調で、ただただ俺を喰らうことしか考えていない。


 どうして、こんな奴を怖いと先ほどまで思っていたのか、忘れてしまったほどだ。


「ルピナス。お前はそこにいないのか? お前だったなら、もっと手強かったと想うぞ」


 最初の頃よりも、ワニは小さくなって、その身は巨大と呼ぶほどではなくなった。


 その辺にいる魔物と変わらない大きさになり、逃げ出そうとするが、アクージ元帥の迷路によって、この場に戻される。


 マルリッタさんの魔力無効も効果を発揮できるようになり、俺の聖剣で斬れるほど弱っていった。


「もう終わりにしよう」


 すでにボロボロで動くことも出来なくなった《暴食》のワニ。

 トドメを刺すために俺は聖剣の光を纏わせる。


 大罪魔法にとっては本来もっとも効果のあるエネルギーであり、《暴食》のワニが力を強めている時なら吸収することも出来たのだろうが、今のこいつにそれは出来ない。


「GYU」


 最後の鳴き声を発して、魔石が砕け散る。


 これで完全に《暴食》のルピナスが復活することはない。


「お前は、完全体になるには心が弱すぎた。自分を過信したことが敗因だ」


 俺が迷いの森の主人を倒したことを告げると、各地で歓声が上がる。

 どうやら、マーシャル様、ガッツ様も大物を討ち取ったようだ。


 マーシャル家の悲願が、やっと達成されようとしていた。


「どうやら、終わったようだな。俺は魔王の住処へ進軍する拠点に戻るぜ」

「アクージ元帥。あなたが来てくれて助かりました。ありがとうございます」

「いいってことよ。これもリューク王の命令だからな」

「えっ?」

「じゃあな」


 アクージ元帥が去っていく姿を、俺は唖然とした姿で見つめる。

 代わりにやってきたハヤセを見る。


「リューク王の命令?」

「ダンは難しいことは考えないでいいっす。次は魔王っす。だから、今日はたっぷり癒してあげるっす」

「うっ、そっそんなことよりも生きていてよかった。お前が死んだと思って……俺は」

「私はそう簡単に死ぬ女じゃないっす。嘘っす。今回はリューク様に命を救われたっす。だけど、今度はちゃんとダンに守って欲しいっす」

「任せろ!」


 リュークの手のひらで踊っていた気がするが、それでもマーシャル家の悲願が達成できたのも、ハヤセが生きていたのもリュークのおかげだ。


 やっぱりあいつの背中は俺には、遠すぎるな。

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