迷いの森攻略戦 6
《sideダン・D・マゾフィスト》
ハヤセ、ナターシャ、マルリッタさんの三人が、俺と共に戦場へ戻る。
戦場ではアクージ元帥が、雲を使ってワニを翻弄していた。
「よう、戻ってきたのか? うん? 奥さんは亡くなったんじゃないのか?」
ワニを翻弄しながらも、普通に会話をするアクージ元帥は、やっぱりテスタ将軍と肩を並べる将軍なんだ。
「どうやら、リューク王のお守りによって一命を取り留めることができました」
「なるほどな。王は、この戦いで多くの命を失われることを危惧したんだろう。俺にも渡してやがる」
そう言ってアクージ元帥の首からネックレスが除く。
「テスタを失った悲しみを抱えているのかもな。まぁいい。それで? どうして女たちを連れてきたんだ?」
「実は、彼女たちに《暴食》を倒す秘策があるというのです」
「ほう、それは凄いじゃないか。それで? どんな方法なんだ?」
ずっと戦いながら、巨大なワニを相手にしているこの人で十分に勝てるんじゃないかと思えてしまう。
「言っておくが、そろそろ俺も限界だ。一度魔力を回復させなくちゃ、迷路を出すこともできないぞ」
「えっと、変わります!」
「まって」
「えっ?」
俺がアクージ元帥の代わりに戦いに行こうとしたところで、ハヤセに止められる。
「どうしたんだ?」
「ダン、魔法を一切使わないで、闘気も極力少なく」
「それじゃ倒せないんじゃないか?」
「いいから、信じて」
「ハァー、わかった」
「うん」
俺はハヤセがいう通りに、闘気を少なくして、《暴食》のワニに近づいていく。
ハヤセは、休んでいるアクージ元帥にも同じことをお願いしたようだ。
この場には魔力を抑えて、存在感の薄いものばかりになる。俺の闘気だけが大きく輝いて見えていることだろう。
「GAYAAAAAAAAA」
《暴食》のワニが俺に向かって襲いかかってくる。
俺は聖剣に闘気を纏わせた状態で振るう。
「ぐっ?!」
聖剣で切り付けることはできたが、俺も肩の肉を抉られる。
「ナターシャ、マルリッタ」
「任せて〜」
「ああ!」
二人が動いて、ナターシャは俺の治療に、マルリッタさんは、《暴食》に魔力を放つ。《暴食》は戸惑うようにキョロキョロと彷徨い出した。
「何? 何が起きているんだ?」
「マルリッタの属性魔法は、魔力の遮断です。相手の魔力を使わせなくすることができるのですが、さすがに化け物の力を全て抑えられるとは思っていません。ですが、少しの休息をかせぐぐらいなら、できるとマルリッタが教えてくれました」
「少しの時間をかせいでどうする?」
「ダン、リューク様ならばどうするのか、バケモノのことを考えました」
「リュークだったら?」
リュークだったら、物凄い魔法でこいつを倒すだろうか? それとも体術でいなしてやり過ごす? 先ほどのアクージ元帥のように翻弄する?
どれでも出来てしまいそうだから、手札が多すぎる。
「どうするっていうんだ?」
「ダンが考えた空腹によって、餓死させるは正解だと思うっす」
「何?」
「まず、相手を逃げられないようにするっす」
「それは俺の仕事ということか?」
ハヤセの説明にアクージ元帥が立ち上がる。
魔力を回復したようだ。
「はい。相手が逃げることはアクージ元帥に迷路と雲と使ってもらっす。この場に戻してもらうっす」
「確かにずっと閉じ込めて、魔力を奪われるぐらいなら、一時捕まえて戻す方が魔力消費は大きくねぇ」
「続けて、マルリッタとナターシャがサポート要員っす。ダンの怪我を治したり、休息を与えるために、時間を稼いでくれるっす」
ハヤセの説明に時間を稼いでくれ他二人が頷く。
「なら、俺は?」
「ダンは私と共に《暴食》と戦うっす。この場でリューク様がいれば、今言ったことを一人でしてしまいそうでっす。私たちはリューク様ではないっす。ダン!」
「おう!」
「あなたはその身を《暴食』に捧げてほしいっす」
「はっ?」
「あの、口だらけの《暴食》のワニに餌として、前に立って餓死するまで、殴り、斬り、食われ続けてほしいっす。私はあなたを応援し続けるっす」
正直、意味がわからない。
「俺が餌で」
「そうっす」
「俺を食わせて」
「そうっす」
「魔法もダメで」
「そうっす」
「闘気だけで倒す?」
「そうっすよ」
……うーん?
「倒せるのか?」
「私たちにできる方法はこれしかないと思うっす。ダン、あなたの耐久力で相手を餓死させてくださいっす」
そう言って、ハヤセが俺の頭にダーツを突き刺した。
「愛情注入っす」
「おう! 行ってくる!」
頭にダーツが刺さって頭に昇っていた血が一気に抜けた。
そうだ。俺は考えるのは得意じゃない。
考えるのはハヤセの仕事だ。
ハヤセが考えてくれた通り動く。
「《暴食》のワニ!!! 俺が相手だ」
「GYAAAAAAAA」
先ほどまで不明なバケモノに見えていたワニが、ただの口が多いだけのワニに見える。だから、聖剣でいなして、傷を負っても、気にならない。
ジンジンと頭に響くハヤセが刺したダーツの方が感じ取れる。
ワニから受ける痛みなんて何も感じない。
「おいおい、どうなってんだよ。あの動き」
「あれが〜ダン君なんです〜」
「ふぅ、何度も続けばヤバいかと思ったがなんとかなりそうだな」
三人はダンを見て驚いているけど、これが普通なんだ。
私にとって、ダンはリューク様にも負けないヒーローだから。




