迷いの森攻略戦 4
《sideルピナス》
《暴食》の化身である巨大なワニが現れて、私を飲み込んだ。
完全体になるために必要な準備だとしても気持ちの良い物ではありませんね。
これで全て、私が……。
「ガッ! なっ、なんです。このとてつもない空腹感は」
『ようこそ暴食の世界へ』
「なっ、貴様は?」
それは小さなワニで、私を飲み込んだワニの核となっていたものだ。
『ねぇ、君は自分が強いと思っているの?』
「何を言っているのですか? 当たり前じゃないですか? 私こそが魔王になるべくして生まれた存在なのですよ。私以上に強い者は存在しません」
『ふ〜ん、だけど、ごめんね。君は不合格だよ』
「不合格? 何を言っているのですか?」
『だって、君は大罪に耐えられる精神を持っていないもの。これは試練なんだよ。試練は乗り越えてこそ強さを手に入れられる。だけど、君は不合格。君の弱い精神じゃ僕を使うことはできない』
何を? 言って……。
目の前に先ほどまで小さいと思っていたワニが大きな口を開けて私を喰らう。
『いただきます。僕が君に変わってあげるよ。さようなら』
バカな! 私が……。
♢
《sideダン・D・マゾフィスト》
「GYAAAAAAAAAAAAAAAA」
ルピナスを食らったワニが雄叫びを上げる。
「お前はルピナスなのか?」
獰猛な獣を思わせる瞳は、こちらを見ていない。
ただ、捕食者として喰らうことしか考えていないようだ。
「くっ!」
ルピナスと対峙している時は威圧もなく、勝てると確信を持てていたが、目の前に現れた《暴食》のワニは異常な存在感を放っていた。
「それでも俺は負けない!」
覚悟を決めた瞬間に、急激な空腹感が俺の体を襲う。
「なっ、さっきまでは感じなかったのに、ぐっ」
お腹の中が空っぽで異常な気持ち悪さを感じる。
胃酸が大量に溢れ出して、胃を熱しているようだ。
「欲しい! 食べたい!」
懐から干し肉を食う。
全然足りない。
なんだ、この異常な空腹感は!
「GYAAAAAAA」
こちらを睨みつける。
ワニは不敵な笑みを浮かべているように見える。
「俺は負けない! 絆の聖剣よ!」
ハヤセの思いを、ムーノの思いを、俺はここに立たせてくれた者たちの思いを乗せて、全力を示す。
聖剣の光は巨大ワニよりも大きくなって、閃光が刃となってワニを切る!
「絶対に倒す!」
刃が《暴食》に触れた瞬間……。
光が消えた。
「なっ!」
「GYAAAAAAAA」
俺が放ったエネルギーを全て吸収されていく。
「さらにデカくなった!」
俺は倒すつもりで放った攻撃で相手を強くしたのか?!
「GYAAAA」
ワニは俺の攻撃を受けてさらに元気になった様子で! 俺に食うために襲いかかってくる!」
「くっ! ガハッ!」
牙を避けて、逃げようとしたが、尻尾も体も、全てが口になって俺の体に喰らいつく。先ほどまでの小さなワニと違って全身が鋭い牙を持つ化け物になったルピナスは手がつけられないほどに強い。
「ぐっ?!」
もう少しで半身が食いちぎられるところだった。
口の中に聖剣の刃を飛ばさなければヤバかった。
「どうやら、外側から放てば、餌として食べられるが、中から放てば通るのか?」
ダメージは受けたが、喰われそうになったことで、一つのヒントを得た。
だが、下手なことをして相手にこちらの闘気や魔力を食われて仕舞えば、強くする。
それでなくても飢餓感がずっと体を襲って、どんどん力が出なくなってきている。
「おいおい、こりゃどういう状況だ?」
「アクージ元帥!」
「とんでもねぇ〜化け物じゃねぇか」
「《暴食》のルピナスが暴走しているんです」
「《暴食》のルピナス? ああ、大罪魔法とかいうやつか?」
「そうです! 知っておられるのですか?」
「昔、友人から聞いたことがあるだけだ」
俺はアクージ家を敵だと教えられてきた。
実際に、アクージ家が仕掛ける悪事に振り回されたこともある。
だが、実際に戦うところ見るのは、ディアス将軍の糸を使った戦いだけだ。
「しかし、飲み込まれれば、こんな化け物になるのか」
「飲み込まれた?」
「うん? わかってなかったのか」
「どういう意味ですか?」
「いいか、本来の大罪魔法は自らの体内に能力として取り込むことが成功なんだ。こんな風に化け物になった状態は失敗作。そして、どっち付かずの状態は、能力と術者が戦っている状態だ。そして、これは完全な失敗作で、《暴食》?の能力だけが全面に出ている。そして、この飢餓感のように能力を振り撒く存在になる」
アクージ元帥の言葉に、俺は巨大なワニとなったルピナスが、《暴食》に取り込まれたことを知る。
そして、失敗作といわれた《暴食》そのものをどうすれば倒せるのかわからない。
「どう知ればいいんですか?」
「それは」
「それは?」
「知らん」
「なっ!」
「対峙するのは初めてだ。それにあいつからはそれ以上の力で倒すしかないといわれている」
「それ以上の力?」
「そうだ。あの《暴食》を完全に消滅させるような力で倒さなけれな、倒すことはできない」
アクージ元帥の言葉に、先ほど俺が放った全力の一撃で倒せなかったことを思い出す。
「しかし、俺の攻撃では倒せませんでした」
「お前の攻撃力が、あいつに通じるレベルじゃなかったんだろ? 知らんけど」
ワニの攻撃を避けながら、相手を観察するがどうやって倒せばいいのか、全くわからない。




