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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
最終章

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迷いの森攻略戦 1

《sideダン・D・マゾフィスト》


 俺はマーシャル領を発つ前に、リューク王にハヤセと共に呼び出された。


「ダン。お前に迷いの森攻略の指揮官を命じる」

「俺でいいのか?」

「お前の聖剣が魔王を倒す鍵だ。それとハヤセには、これを」

「魔法銃も頂いたのに、私も何かもらえるっすか?」

「ああ、普通のペンダントだ。お守りだからな。肌身は出さず持っていろ」


 俺はリュークの近衛隊長に任命された上に、リューク王から迷いの森の攻略を明示られた。


 マーシャル家が、そして俺自身が長年悲願としていたことを、国が味方をしてくれる。


 これがどれほど嬉しいことなのか、今までマーシャル領で騎士や冒険者たちが、苦労していたことが一気に推し進められる。


「一匹の残らず、魔物を排除しろ!」


 俺の命令に10や20の兵が動くんじゃない。


「「「「「「「「うおおおおおおーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」


 数万の軍勢が、マーシャル寮内に入って迷いの森に存在する魔物たちを借り尽くす。

 それだけではない。各国が連携をとって魔物討伐が行われ全世界で始まった。


 リューク王の一声でだ。


「ダンよ! 最前線は任せるよ。我々は左翼から回り込む」

「ガッツ様! よろしくお願いします」

「まだまだ若い者に負けてなるものか、我々もいくぞ。セルシル!」

「はい。ガウェイン様!」


 ガッツ様、ガウェイン様、セルシル様、上位貴族の方々が俺を総大将にして指揮官として軍を動かしておられる。


 しかも……。


「ハァー、森の先は《魔王の住処》かよ。しかもお粗末な見張り台に城壁だな。いいだろう。この辺りは俺たちが帳尻を合わせてやる」

「アクージ元帥自らの出陣、ありがとうございます」

「お前のためでじゃない。王の命令だからだ」


 今までバドゥ・グフ・アクージは戦争屋と言われて、悪の貴族として名前を売っていた。


 そんなアクージ元帥ほどが味方になるなら、これほど頼りになる味方はいない。


「リューク王の」

「そうだ。親友の弟が、兄の意思を継いでやり遂げたいと言ったんだ。それを叶えてやるのが義理だろ。俺たちアクージ家の家訓は戦いは勝てばいい。だが、義理と人情は大切にしてんだ。これでもな! ディアス、いくぞ」

「はっ! 兄上」


 バドゥ元帥。ディアス将軍が迷いの森を突っ切って魔王領へ目指して進軍を開始する。


 迷いの森は長年マーシャル家が抱えてきた問題だ。

 それを考えてリューク王は、マーシャル家とチリス家に迷いの森討伐を委ねてくれた。


 そして、俺の役目は一つ。


「《暴食》ルピナス! 俺は《勇者》ダン・D・マゾフィストだ! いざ、尋常に勝負をしろ!」


 魔物が現れなくなり、SSSランクの迷いの森に潜んだ。魔王の側近にして、魔王となる素質を持つ者。


 それが《暴食》のルピナスだ。


「クソッ! タシテの情報だから、ここにいるのは間違いないのに、全く姿が見えない」


 リューク王の話では、機神体とかいうサイボーグの体を手に入れて、《暴食》として覚醒を果たしているという。

 倒せるのは、俺だけで他の者たちには露払いをさせろと言っていた。


「そんなに焦っても仕方ないっす」

「ハヤセは怖くないか?」

「もちろん、怖いっす。だから絶対に私のことは守って欲しいっす」

「当たり前だ。お前は俺が守る。その時に俺は一番の力を発揮できるんだからな」


 どんな戦場にも、ハヤセはついてきてくれる。

 戦闘ができないわけじゃないが、俺や他の騎士に比べれば、戦闘向きではないハヤセは俺の強化の鍵を握っている。

 

「なら、大丈夫っす。それにこれだけ大規模な戦闘をして、森が侵略されているのに出てこないってことは何か仕掛けを施しているのかもしれないっす」

「そうだな。油断せずに侵攻しよう」


 俺が戦って全てが終わるならよかったが、そうも言っていられない。


 相手は、地上最強と言われる魔王。

 それに連なる《暴食》のルピナスだ。


 誰が死んでもおかしくない状態なんだ。


 絶対にハヤセは守るつもりだが、勝てると俺自身が思ていない。


「覚悟を決めろ!」


 迷いの森は一つの領地だけでなく、三つの領地に跨るほど広い。

 マーシャル領を中心に、チリス領、ベルーガ領にも範囲を広げている。


 1日で見つかるほど簡単な話じゃない。

 

 だが、三つの領から迷いの森の範囲を縮めて、出現する魔物は全て借り尽くす。

 そのための人員も、食料も、武器も全てが揃っている。


「リューク王には感謝しなくちゃな」

「そうっすね。どれだけ感謝してもいいと思うっす」

「はは、そうだな。本当にあいつは凄いやつだ」


 学生時代に一戦交えて感じたリュークの凄さは本当だった。


 どこまでも遠い背中は、遠いまま未来までやってきた。


 だけど、ふとした時にはリューク王は振り返ってくれる。振り返った時には、いつも決まって俺に声をかけてくれているような気がした。


「お前はそんなものか? 追いかけてこないのか?」


 そんな風に問いかけられているような気がした。


 俺はこんなものじゃない? リューク王に追いつきたいと思ってガムシャラに強くなった。

 どこまでも、ずっとずっと追いかけたリューク王が俺に命令したんだ。


「ダン、魔王をお前が倒せ。そのために《暴食》のルピナスを倒す指揮をとれ」


 これほど嬉しいことはない。


 ずっと相容れぬ関係だった。

 だが、今では同じ王国の民として、同じ方向を向けている。


 あいつは王として、俺はリューク王が作る王国の将軍として。


 これほど誇らしいことはない。


「必ず、魔王は俺が倒す」

「頑張るっすよ。えっ?」


 それは本当に不意に、ハヤセが崩れ落ちる。


「なっ?」

「うるさいですよ。あなたなど、その女がいなければ、何もできないクズではありませんか。なら、不意打ちで女から殺せば、脅威にすらならない」

「ルピナーーーーース!!!!!!」


 崩れるハヤセを抱き止めて、地面に寝かせる。

 息も絶え絶えなハヤセを見て涙が流れる。


 だが、それよりも怒りによって、ルピナスの名を叫ぶ。


「行ってらっしゃい。あなた」


 そう言って、胸に穴を空けたハヤセは血だらけになりながらも、俺に向けて魔弾を放った。


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