王としての仕事
ボクはユーシュンが持ってきた書類を確認する。
「現在、王国は帝国との戦争以降、様々な物資が枯渇するとともに流通が増えている。正直、管理が行き届いていない現状だと言える」
ユーシュンの報告書に対して、ボクはそれぞれの大臣へ視線を向ける。
「内務大臣」
「はっ!」
俺の呼びかけにカリンが立ち上がる。
内務大臣は、公共事業や農工業などの国の生産力や整備に尽力する。
「魔王との戦いでは、マーシャル領が前線基地となる。そこに通じる街道の整備を優先せよ。食料は十分か?」
「はっ! すでにリューク様が魔王と戦いを決意された時から、整備は開始しております。王都、カリビアン領、アクージ領の整備は完了しています。食料はカリビアン領から10年分の戦うための備蓄は用意出来ているので問題ありません」
「なっ!」
カリンの報告にユーシュンが驚いた声を出す。
「しっ、しかし兵たちを動かすのにもお金が」
「オリガ!」
「はい〜」
ボクが名前を呼べば、財務大臣であるオリガ・ベルーガが立ち上がる。
「ベルーガ家の資産は全て王のために使っていただいてかまいません。現在はどれだけの兵を動かされるおつもりですか?」
「どこまでも」
「王の期待に応えて見せましょう」
「そんなバカな」
ユーシュンが何やら情けない声を出す。
オリガは最初からボクのためにこの場に来てくれたんだ。
「アクージ、ガッツ。戦局の説明をせよ」
「戦局の説明っつってもよ。俺はまだ兵を動かしてねぇからわからねぇな」
「ならば、今は俺から報告しよう。現在のマーシャル領は不思議なほどに静かだ」
「静か?」
「ああ、マーシャル領全体に溢れていた魔物が現れなくなり、まるで嵐の前の静けさを思わされる雰囲気が漂っている」
ガッツもわからないということなので、ボクはタシテ君に視線を向ける。
「それについては私からお話しします。ネズール家の情報網である魔族を調査しておりました」
「魔族?」
「はい。リューク王によって危険視されていた《暴食》のルビナスです」
なるほどあいつか、結局は自分が生まれた故郷に帰ったということか。
「ああ、そういえば、消息をつかめていたのか?」
「聞いた時から調査を始めておりました。そこで迷いの森にいることが判明して、ダン・D・マゾフィスト殿と討伐に向かおうと思っておりました」
さすがはタシテ君だ。
ダンを使うことを考えているのも完璧だね。
「なるほど、魔王の側近を倒すことはかなりの功績だな。アクージ、マーシャル、マゾフィストは協力して迷いの森攻略に赴いてくれ。セルシルからも支援を」
「面白じゃねぇか」
「任されよう」
「ああ、任せてくれ」
「承知しました?!」
武闘派の三人はすぐに返事をして、参謀であるセルシル・コーマン・チリスはボクと接点が少ないので、それほど多くの指示することもない。
現在は妹のセシリアに領地経営を任されているが、ユーシュンが婿養子に入ることが決まっている。
「外務大臣アイリス・ヒュガロ・デスクストス、国教教主チューシン・ドスーベ・ブフ。他国への対応はどうなっている」
「はいですの。皇国とは協力関係が結べましたの。いつでもリューク王の呼びかけに応じると皇国から返事をいただいてますの」
「同じく、教国からも魔王討伐で動かれるのであれば、全面的に協力することが告げられています。現教皇猊下は、聖女ティア様と新十二使徒を派遣すると言われておりました」
帝国は、戦争の被害が大きく魔王へ戦いを挑むことは厳しい。
そのため聖なる武器の数もダン以外はほとんど機能していない。
「ユーシュン」
報告に対する対処方法を各部門の大臣に報告と命令を終えると、ある程度ユーシュンが貯めていた仕事は終わりを迎えていた。
「はい! ああ、すまない。ここ数年。頭を抱えていた問題がたった1日で解決してしまうなんて」
アレシダス王家には、非協力的な者たちもデスクストス家の命令ならば行ってくれる。
「ならば、会議は以上でいいな」
「あっ。ああ。以上で大丈夫だ」
食料問題。
財務問題。
整備問題。
魔物問題。
全ての仕事が、大臣が一新されたことで解決してしまう。
お役所仕事というのは、部門ごとに責任者が変わって情報伝達が遅くなり、決断して実行されるまでに、命令系統がうまく機能しないために遅くなっていく。
だが、今はここで話されて決まったことは速攻で動いてもらうことになる。
「ならば、今日の会議を終わりにする」
全員に指示を出して会議を終了した。
ボクは働くのが嫌いだ。
だから仕事は極力他の者にふる。
適材適所で仕事をしてもらった方が上手くという者だ。王城は現在シロップ率いるメイド隊、執事隊が管理している。
プライベートルームに移り住んだ妻と、カリビアンに残った妻がいるが、王としての仕事が終われば家族とゆっくり出来る。
今すぐ魔王に挑んでも勝てるかわからない。
確実に戦力を削いでから挑む。
「リューク、おかえり」
「おかえりなさい!」
リンシャン、エリーナを筆頭にボクを出迎えてくれる。クウ、アンナ、クロマ、ノーラ、シーラスと続く。
他の者たちはカリビアンで仕事を持っているので残った。みんな一緒にいるためにはやっぱりカリビアンに戻りたい。
「うん。ただいま」
だけど、今は彼女たちといられることを喜ぼう。




