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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十一章

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デスクストス長男 終

《sideテスタ・ヒュガロ・デスクストス》


 プラウド父上に心臓を握り潰され、取り込まれた我はまだ意識がある。アビスの奴が魔力を貪っているな。


 サクラは生きているだろうか? いや、まだ死ぬわけにはいかぬな。

 最後にリュークが我を助けるために手を伸ばしていた。


 たとえ、心臓が止まろうと魔力でしばらくの時間は動けるはずだ。


「くくく、我がリュークにあとを託すことになるとはな」

「テスタ様。どうか私の力もお使いください」

「サクラよ」


 サクラは玄武の姿は人の姿に戻っていた。

 すでに冷たくなりつつある体を抱きしめる。


「もう長くはありません。どうかテスタ様のために私の力を使ってくださいませ」

「お前は良い女だ」


 我はサクラから魔力をもらい二人の力で、プラウド父上を抑えるために力を注ぐ。

 

 すでに《嫉妬》の力は我の中から残りわずかだ。

 プラウド父上の傲慢に我一人では勝てない。


「リュークよ。我々が抑えている間に父上を打ち果たして見せよ」


 我々の魔力が全て使い果たされる前に……。


 突然、我が身が空へと投げ出される。

 沈みゆく夕日に照らされる。


「倒したのか?」


 巨木と化していた獅子王は姿が消えて森へ戻っていた。空中に放り出された我の胸でサクラが眠る。


「先に逝ったか。この太陽を最後に見せてやりたかったな」


 もうあと少しで、我もサクラの元にいく。


「テスタ兄さん」

「リュークか」


 落下していた体がリュークによって受け止められる。

 

「プラウド父さんを倒したよ。もう大丈夫だ」


 なぜ、そんな情けない声を出す? お前は我ができなかったことを成し遂げたのだ。誇りに思うがいい。


「……リューク、すでに我は目が見えぬ。お前がどのような顔をしているのかもわからぬ」

「!!!」


 我の頬に暖かな雫が落ちてくる。


「泣いているのか?」

「うう」

「本当にお前は生まれた頃から愛苦しくて、可愛い弟だ」

「えっ?」


 そっとリュークの顔へ手を添える。


「生まれた瞬間に可愛くて、嫉妬してしまうほどだ。どうしてこんなにも可愛い生き物が存在するのだろうと、何度思ったかわからぬ」

「テスタ兄さん?」


 我はこれまで家族に対して何もできなかったな。

 

 家のはことは全てビアンカに任せてしまっていた。

 子供のことはサンドラに、そしてサクラにも随分迷惑をかけた。


 すまぬな。


 一つだけ心残りがあるとすれば……。


「魔王はお前に託す。父上の悲願を、我の願いを叶えてくれ」


 これでいい。もう思い残すことはない。


「ズルいよ! ボクは怠惰だって伝えたじゃないか! そんな面倒なことはしたくないよ。全部テスタ兄さんがやってよ」


 リュークは昔からやる気がないように見せるのが上手い奴だった。

 それなのに常に話題の中心にいるやつで、我の耳にもたくさんの話が聞こえてきた。

 

「そうか、だが、お前ならそう言いながらやってくれるだろ」


 ああ、もうリュークの頬に触れている感覚も無くなってしまった。

 サクラの温もりも、リュークの温もりも何も感じられぬ。


「テスタ兄さん!」


 最後に、我の死に場所を弟の腕の中にしてくれたこと。


 父上に感謝せねばならぬな。


《テスタよ。よくぞ、我を超えてくれた》

《父上》


 我は父上を尊敬していた。


 父上のような高潔な貴族になりたいと思ってきた。


 家族を愛していた。


 ♢


 《sideリューク》


 腕の中で冷たくなっていくテスタ兄さんをボクは抱き上げる。

 サクラさんも一緒に眠らせてあげよう。

 その前に、家族に遺体を届けなくちゃ。


「リューク!」

「エリーナ」 


 テスタ兄さんを抱き上げるボクの元に妻たちが駆け寄ってくる。

 

「戦いは?」

「うん。全部終わったよ」


 あまりにも重い、テスタ兄さんの想いを託されてしまった。

 そして、誰よりもデスクストス家のことをテスタ兄さんは愛してくれていた。


 ボクのことも愛してくれていたんだ。


「リューク!」

「リューク様」

「ご主人様」


 エリーナが、アンナが、クウがボクを抱きしめてくれる。


「リューク様の悲しみは、みんなで受け止めます」


 クロマの言葉にボクはゆっくりと地面に膝を折った。

 家族を失う悲しみを、テスタ兄さんに教えてもらうなんて思いもしなかった。


「ありがとう」


 ボクはボロボロと恥ずかしいぐらいに涙を流した。

 テスタ兄さんのことを思い、プラウド父さんのことを思い、残された者たちのことを考えて、涙が止まらなくなった。


 テスタ兄さんが残した思いを……。


 ボクは引き継ぐのは凄く面倒だけど、やらないわけにはいかないよね。


「エリーナ」

「はい!」

「王国を動かすことになりそうだ」

「えっ?」

「ボクは王になるよ」

「リュークが王に?!」


 きっとテスタ兄さんはそれを望むから、そしてカリンやタシテ君はずっとボクを王にすることを望んでいた。


 ユーシュンも受け入れてくれるだろう。


「うん。ボクはアレシダス王国の。そして、他国を全て従えて魔王を打ち滅ぼす王になるよ」


 魔王を倒した後は、誰かに王位を譲ってもいい。

 だけど、魔王を倒すまでは全ての力を使う。


「全部が終わったら、一生怠惰で過ごすためにね」

「どこまでもお供します!」


 ボクはもう一度テスタ兄さんを抱き上げて立ち上がった。

 どうも作者のイコです。


 第11章は以上になります。

 

 テスタの死は、この話を書き始めた当初から決めていたことでした。


 作者の中では次の章が最終章です。


 ここまでお付き合いいただけたこと心から感謝致します。


 どうぞ最後まで《あくまで怠惰な悪役貴族》にお付き合いいただければ幸いです。

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