遺跡ダンジョン攻略 3
《sideテスタ・ヒュガロ・デスクストス》
リュークを見送った我々は直進して階段を下っていく。
「テスタ様」
サクラが何かを警戒するように、我の前に立って警戒を示す。
感知能力の高さは、サクラほど高い女はいない。
ゲドウによって作り上げられた最高傑作は、我にとって力をもたらす蠱毒の主人として前に立つ。
「おい、調査を頼む」
「はっ!」
騎士の一人を先行させる。
サクラが警戒をした場所を一歩踏み出したところで、根を張っていた木によって足を掴まれて騎士が壁へ投げ飛ばされる。
「……」
「テスタ様、危険です! お下がりください!」
残った二人の騎士も前に出ようとしたので、我はそれを制止する。
「出るな」
「しかし!」
「サクラ、行けるか?」
「はい」
サクラの体から魔力で作り出した虫が放たれる。
全身から滲み出る虫は襲いくる木々を食すしていく。
「なっ! なんと悍ましい」
騎士の言葉にサクラは反応を示すことはない。
サクラが消滅させた木の向こうへと足を踏み入れる。
父上と話をした時よりも明らかに周りの雰囲気が禍々しいものへと様変わりしている。
「父上、聞こえておられますか?」
呼びかけるが、地鳴りをして何も反応は返ってこない。
だが、その存在は感じられる。
「父上、おられるのですか?」
「グルル」
唸り声のような声が聞こえて、鋭い瞳が暗闇の中から姿を表す。
「テスタ様! 灯りです!」
「やめよ!」
止める間もなく暗闇に対して、灯を投げた騎士は何かにその身を攫われていく。
だが、彼が投げた灯によって、暗闇が照らされて、一体の獣が浮かび上がっている。
「獅子でございますね」
サクラの呟きに対して、我はあれが父上であると確信が持てた。
すでにその身は傲慢に呑まれ、獅子の姿を形に変貌したのであろう。
「サクラ、すまないが少し下がっていてくれ」
「かしこまりました」
我の言葉に従ってサクラが階段まで下がっていく。
残された騎士も辺りを警戒しながら下がっていく。
「父上、意識があるのかどうかは分かりませぬが、テスタにございます」
「グルル」
「再び、参ったこと申し訳ございません。ですが、やっと理解することができたのです。魔王を討つ意味。そして、魔王と戦うためにダンジョンの力が必要です。父上がそのような姿になっても、魔王を抑え込もうとしてくださったことは感謝しておりまう。ですが、父上の封印を解き放ち、魔王を解放した後に、魔王を討ちます」
唸り声が止んで、辺りに真っ赤な火が灯る。
浮かび上がったのは獅子の顔と、遺跡全体に繋がる木の根。
そして、金属製の体であった。
「獅子王デウス・エクス・マキナである」
「すでに父上としての記憶は無くされておられましたか」
「侵入者よ。今ならば引き返すことを許そう。だが、これより先に踏み込むのならば容赦せぬ」
「魔王を封印するだけの力を持つ者よ。我は貴様の力すらも取り込むつもりでここにきたのだ。引くことはない」
「よかろう。ならば、試してやろう。倒してみせよ。この獅子王を」
遺跡全体が振動を開始。
調査に向かったリュークは大丈夫だろうか? だが、ここかはそれを考える余裕もない。
「うっ、うわあああああ!!!!」
階段付近へ避難していた騎士が、振動で崩れた地面の狭間に落ちていく。
「サクラ」
「テスタ様!」
サクラは己の力で我の元までやってきて、互いに魔力で防御壁を作り出す。
歯車が回るような起動音が遺跡全体から響き始めて、ゴゴゴゴゴゴという地鳴りが響く。
木々が石の遺跡を破壊して、一つの塊となって集合していく。
その集合する場所には獅子の顔を持つ、獅子王デウス・エクス・マキナが形をなしていく。
獅子の顔に巨木と石が合わさった不思議な体を持った化け物が構築されていく。
「サクラ、外へ出るぞ」
「はい! テスタ様のお供をします」
天井を突き破る勢いで巨大化していく獅子王から距離をとり階段を駆け上がる。
地上に出た我々は遺跡の外へと飛び出す。
「テスタ兄さん」
「リュークか」
すでに外へと逃げていたリュークに迎えられて、森だった場所は一つの巨大な木に全てが吸い寄せられる。
「どうなっているんだ?」
「あれは父上であり、傲慢の化身、獅子王デウス・エクス・マキナだ」
「獅子王デウス・エクス・マキナ!」
巨木は人の形を成すように、木と石と砂、それに駆動音を響かせる歯車を合わせた化物が完成する。
「挑戦者よ。獅子王デウス・エクス・マキナの全力を持って貴様を試してやろう。挑戦に耐えられない場合は、その命だけでなく、この世界の滅びを持って償ってもらう」
「なっ!」
「これは、とんでもないことになったね。魔王よりも強い聖なる木の化物というわけか、世界樹を相手にするようなものだね」
リュークの言葉に我は人などがちっぽけに思えるほど巨大化した獅子王デウス・エクス・マキナを見上げる。
「それでも倒すだけだ」
「ああ、その通りだ」
プラウド父上が、これを一人で抑え込んでいたのだと思えば偉大な父であったと思える。
そして、息子とは父を超えるものだ。




