デスクストスの真実
ボクは目を覚ましたテスタ兄さんの容態を見るために、アイリスと共にテスタ兄さんの部屋を訪れた。
そこで話されたデスクストスの真実は、ボクの知り得ない過去。
《魔王の呪い》
まさか、プラウド父さんが魔王に挑んでいたなど、ゲームではそんな事実は存在しない。
だが、暴走するプラウド父さんや、魔へと落ちていくテスタ兄さんがゲームの世界で魔王の策略の一つなのではと聞かれれば、そうかもしれないと思ってしまう。
デスクストスの反乱が起きて、帝国と協定を結んで、魔王討伐に向かうシナリオの根本はやはり魔王にあるように思えた。
「我は父上が眠る遺跡に行かねばならぬ」
「遺跡に?」
ボクはあの遺跡にプラウド父さんが眠っていることを聞かされて驚いてしまう。
クロマが謎を解いて、ルピナスが奪った機神体以外にも遺跡には謎があるという。
「お前たちが調べた祭壇の更に奥。あの遺跡の中へ入る方法があり、その奥にある玉座にて、父上が遺跡ダンジョンの主人として眠っておられる」
「それで……」
ボクは魔王が誰かに邪魔をされていて、身動きが取れないとルピナスが言っていた。それは帝国で戦っていた時に、ミニミニバルニャンが調べてきた一つだった。
そして、その魔王を抑え込んでいる人物がプラウド父さんなんだ。
「我はもう一度父上に会いにいく。その上でダンジョンを手に入れようと思っている」
「手に入れるとはどういうことですの?」
アイリスだけが事情をわかっていないので驚いた声を出す。
ボクはテスタ兄さんに意向を理解して、テスタ・ヒュガロ・デスクストスが魔王との最終決戦に向けて、己の力を高めようとしているのが伝わってくる。
「リューク」
「はい」
「お前は意味がわかるな」
テスタ兄さんの瞳に頷き、そんなやりとりにアイリスが驚いた顔を見せる。
「そうですの?」
「ああ、アイリスには後で説明するよ」
「わかりましたの。絶対ですの」
「我が父の後を受け継いでも問題はないか?」
テスタ兄さんから、そんな聞かれ方をするとは思っていなかった。
不思議に思いながらもボクは目を閉じて受け入れる。
ボクのダンジョンランクは上限に達してしまっている。
プラウド父さんのダンジョンを受けいれる余裕はボクにはない。
テスタ兄さんはここ以外に皇国のダンジョンをいつでも手に入れることができるだろう。
ここで阻止をしたところで意味などない。
「もちろんです。ボクに異論はありません」
「そうか、お前も欲しているのかと思っていた」
「ボクはただ、平穏な日々を望むだけです。妻たちと幸せで入れる環境をもらえるなら、テスタ兄さんが魔王を討伐するのに協力してもいい」
もしも、魔王の呪いがボク自身に降りかかり、子供達をこの手にかけてしまうことを思うなら、ボクはボク自身を許せない。
魔王を殺すのはボクにとっても絶対に行わなければいけないことになってしまった。
「ふふ、魔王の首は我がもらうぞ」
「どうぞどうぞ」
「なんだ、魔王を倒したいのかと思っていたが」
「どうやらテスタ兄さんは、ボクのことを誤解しているようですが、ボクは《怠惰》なんです。あくまで貴族らしく優雅な生活はしたいと思っていますが、《怠惰》に仕事もしないでのんびりとした生活をすることが望みです」
ボクの宣言に、テスタ兄さんだけでなくアイリスも目を丸くする。
「ふふ、リューク、それでは全然ダメなやつですの」
「あははははは、お前はそれでいい。そういうやつだとわかっただけで、兄弟で話ができてよかったのだろう」
「二人がどのように考えているのか知りませんが、ボクは《怠惰》に生きたいんです」
しっかりと家族に意思表示をしたのは初めてだったのかもしれないな。
大人になったからこうやって理解し合えるようになったのかもね。
「それぞれが思うように生きればいい。その道が互いに混じり合うならば、その時は共に手を取り合うことにしよう」
テスタ兄さんが手を差し出す。
そこにアイリスが手を重ねて、ボクもアイリスの上に重ねる。
「こうしてデスクストス兄姉弟が共に手を取り合えたこと嬉しく思いますの」
「ボクは二人に弟だと認められる日が来るなんて思わなかったよ」
ボクらは手を重ねて誓いを立てた。
「我らデスクストス兄姉弟は、互いを尊重し、互いの生活を干渉せず、また互いの目的が同じ道に進むときは、互いに協力して目的を達成するものとする。これまで話しをしてこなかったことを改めて、ここに誓いを立てる」
テスタ兄さんの言葉で告げられた誓いは、今後のデスクストス三兄姉弟の誓いとして未来永劫守られるものとなった。
ボクらはテスタ兄さんのことを考えて、部屋をでた。
「それで、ダンジョンを手に入れるとはどういうことですの?」
テスタ兄さんの話に出てきたダンジョンの話をアイリスに部屋でのんびりお茶を飲みながら説明をした。
「リュークが死んでいた間に、そんなことをしていましたの?」
「死んでいたって、まぁそうだね」
「だから、表舞台にいないようにできていたのですの」
アイリスはボクが死を偽装した時のことを今でも根に持っているようだ。
「そういうことだね。色々気苦労をかけたね」
「本当ですの。それで? テスタ兄さんのいう通りリュークはダンジョンを手に入れなくていいですの?」
「ああ、ボクのダンジョンランクはもう上げようがないんだ」
「そうでしたの。それを聞くとわたくしも欲しくなってきますの」
アイリスの我儘が始まる前に、ボクはお部屋を退出して逃げることにした。




