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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第一章 

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ダンジョンボス戦 後編

《Sideシーラス》


 私が異変に気づいたのは、日が昇ってからのことだった。引率員として、数名の教師がダンジョンの中で寝起きをしている。

 私もその一人として、テントを張って休息を取っていた。


 目が覚めた私が一番最初に感じた違和感は、森があまりにも静か過ぎるということだ。

 森には魔物以外にも生き物が存在する。

 いくら、ダンジョンと化して魔物が徘徊していると言っても、動植物や虫たちは魔物と共存するように生きているのだ。


「なんの気配もしない」


 魔物も、動物も、虫の声もしない。

 あまりにも静かなダンジョンを探索していく。

 生徒達の位置情報は、マジックウォッチが教えてくれる。


「高いところから見てみましょうか?」


 偵察を行うために木に登って私は異常な魔物の存在を目の当たりにした。


「なっ、なんだあれは? 森が浸食されている!」


 すぐに魔物の居る方向へ駆け出した。

 途中で、0クラスのタシテ・パーク・ネズールがチームリーダーをする004とすれ違った。

 彼に警戒を促して避難するように指示を出す。


 魔物に近づくにつれて誰かが戦っていることが分かり、私は駆ける速度を上げた。


 遠目で見ても魔物の強さは生徒たちが対応できる相手ではない。


 魔物の背後に到着して私が見たのは、魔物の魔石が生徒の爆発攻撃で剥き出しになっていた。

 これだけの攻撃力を誇る生徒が居ただろうか? 爆炎の向こうからダンが飛び出してくる。


 魔石を斬った? 魔物を倒した?


 なっ! ダンによって斬られた魔石が再生していく。


「ダン! 逃げろ!」


 私が叫ぶと同時に回避行動を取れていないダンを守るために動き出す。

 魔物の触手によって、吹き飛ばされてきたダンを受け止めて衝撃をやわらげる。


「大丈夫か?」

「シーラス先生!」


 爆炎の向こうでは、女子生徒達が触手に捕まり、服を溶かされていく。

 私は生徒を助けるために魔力を最大まで練り上げて、属性魔法を発動した。


「フラワーボンバー!!!」


 私が魔法を発動すると、スライムを中心に爆発が起こり花が咲き乱れる。

 ピンク色の花が咲き誇り、生徒達が解放されたことを見計らって次の魔法を発動した。


「フラワーエナジー!」


 花を咲かせた相手の能力を一時的に吸収する。

 今回は、相手の耐性を弱体化させる効果を持たせた。


「今です。攻撃しなさい」


 私は魔物から解放された生徒へ声をかけて攻撃を促した。エリーナとリベラが反応して魔法を放つ。


「ダン、立てますか?」

「シーラス先生……どうして?」

「あれはダンジョンボスです。まさか、こんなにも早くダンジョンボスが現われるなど、前代未聞なことです。現われたからには倒すまでダンジョンを出ることは叶いません」


 ダンの疑問に答えている場合ではないため、私は現状を伝えて走り出す。


「敵の魔法耐性は効果を下げました。今なら攻撃が通ることでしょう」


 私が花びらを投げつければ、魔物が苦しみ出す。


「えっ、攻撃が効いた?」


 後ろからダンの声が聞こえてくる。

 魔物には、それぞれ倒し方が存在する。

 ただ、闇雲に高火力の攻撃で倒すだけが戦闘ではない。


「相手の弱点を知りなさい。魔物学の授業をちゃんと聞いていればわかることです」


 私の攻撃を見た生徒たちが、攻撃を開始していく。


 しかし、レベル差があるためか魔物が抵抗してなかなか倒しきることができない。

 ただ、先ほどよりも戦えているので大丈夫でしょう。


 私は一人、座り込んでいるダンを見ました。


「一先ず、なんとかなりそうです。よく頑張りましたね」

「先生」

「あなたは最善を尽くしていました。私が来るまでに、あなた方がしていたことは遠くから見ていました。本当に無事でよかった」


 私が褒め言葉をかけても、ダンは顔を俯かせて塞ぎ込んでしまいました。


「どうしました?」

「俺……、俺は魔物を倒せなかった!」


 悔やんでいる声に私は優しく語りかけることにしました。


「あなたは立派です。誇って良いです」

「でも、あいつなら……リュークなら、先生の力を借りなくても魔物を倒すことが出来たはずだ」

「リューク? リューク・ヒュガロ・デスクストス君のことですか?」

「はい。俺はあいつに勝ちたい。勝たなくちゃいけないんだ」

「そうですか……。ですが、人には成長の早さが私はあると思います。リューク君は確かに魔法について、あなたの先を歩んでいることでしょう。ですが、戦闘においては、あなたもリューク君に劣っているとは私は思いません」


 視線を魔物に向ければ彼女たちの攻撃によって、少しずつ魔物が弱り始めている。


 決着は近いようですが、その前に彼女たちの魔力が尽きるかもしれません。


「あなたはあなたのやり方で強くなればいいのです。それでも不安ならば私が指導をしましょう。私は一応先生ですからね。強くなるため、魔法を知るためのご協力ができます」


 手を差し出してダンを見る。


「先生が俺を強くしてくれる?」

「ええ。これでも魔法の深淵を知る者と呼ばれていますので」


 自分で言っていて恥ずかしくはありますが、説得力ある言葉は、他人から言われた言葉の方にあるような気がします。


「魔法の深淵を知る者……、先生!俺を強くしてくれますか? 魔法について教えてくれますか?」

「ええ。あなたにその気があるならいくらでも」


 ダンは私の手を取って立ち上がる。


 最後の仕上げのために、私は魔物を見て不可解な現象を見ることになる。


 確かにダンジョンボスは弱っていましたが、さすがに倒しきれるほどではありませんでした。

 魔法を放ったリベラは気づいていないようですが、魔物は魔法に当たる前に消滅していました。


「やった! ダンジョンボスを倒したんだ! うわっ!レベル上がった」


 ダンが、ダンジョンボスが消滅したことでレベルアップをしたようです。

 しかし、不可解な現象に私は疑問を感じてしまいます。


「先生、助けて頂いてありがとうございます」

「いや、君たちが時間を稼いでいたお陰です。私は手助けをしただけですよ」


 エリーナに言葉を返して気持ちを切り替えることにした。


「ダンジョンボスが出たということは、ダンジョンはレベルが下がって一時的に機能を停止します。それが二ヶ月なのか、半年なのかはわかりませんが、しばらくは使えないので、皆さんの課外授業は終了です。今後のことは学校の先生方と話し合ってお伝えします」


「「「「はい」」」」


 生徒達は素直にダンジョンから帰宅していく。

 私は他の先生たちに現状を伝えて、残された生徒にダンジョンボス討伐を知らせて帰宅を促した。

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