最後のチャンス
《sideルビナス》
私はどうして体が震えているのでしょうか? いえ、わかっています。
これまで余裕な顔をしておられた憤怒の魔王様がみたこともないほどお怒りになられているからです。
「貴様は二度もミスを犯した。今も生きていることが奇跡だと言えるだろう」
「はっ、はい」
「そうだな。ルビナスよ。貴様にチャンスをやろう」
「チャンス?」
「そうだ。あの忌々しいデスクストス一家が治める地に眠る力を取り込んでこい」
何を言っているのでしょうか? デスクストス家?
確か王国の貴族家の一つだったと記憶ぐらいはしていますが、そこに何があるというのでしょうか?
「そこに何が?」
「貴様は黙って行けばいい。これが封印を解くための鍵だ」
「わっ、わかりました」
私は逃げるように憤怒の魔王様から離れるように魔王城を飛び立った。
「怖い怖い。最近はピリピリしていますねぇ。魔王様らしくない。この間はボロボロになって帰ってきてからイライラが止まらない様子ですね。ふん、私はじっくりと強さを手に入れるタイプなのですよ」
迷いの森によって、イライラを鎮めるために食事を済ませてからデスクストス領とやらに向かいました。
魔力が薄い場所は、あまり得意ではないのですけどねぇ。
「ふむ。ここですか?」
私は魔王様に言われてやってきた古い建物の前に降り立ちました。
「遺跡、というのでしょうね。昔の人間が作った建物に何があるというのでしょうか?」
私は魔王様に指示に従って遺跡に魔力を注いでいく。
呪文を解くだけでなく、一定の魔力を注ぐことで栄養を与えると書かれていた。
『我を目覚めさせる者よ。汝に問う。何を求める』
「面倒な問いですね。そうですね。今の私が求める物は魔王を超える力でしょうか? いい加減作られた存在といわれても鬱憤が溜まってきましたからね。私が魔王を倒して食べてしまいたいところです」
『魔王を超える力を求める者よ。汝は何を差し出す』
「はぁ? 私がどうして差し出す必要があるのかわかりませんね。ですが、何か差し出すなら、私以外の大勢の命を生贄にしてあげますよ。一万でも百万でも好きに殺させてあげましょう」
『最後の問いだ。貴様は力を手に入れたなら何をする?』
「そうですね。まずは魔王をぶっ殺して、お腹いっぱいになるまで世界中の食べ物や生き物を食べ尽くすでしょうね」
『答えは出た。汝に力を授けよう』
「当たり前ですね。私ほど力が似合う者はいないでしょう」
『解析を開始します。解答者、魔人ルピナス。ベース能力《暴食》の属性魔法。アップデートを開始します』
いきなり無数の鉄の触手が伸びてきて私の体を捕まえました。
「何をするのですか? 私の体に傷を負わせるなど許しませんよ!」
抵抗するために鉄の触手を破壊して抵抗します。
「ふん、私を誰だと思っているのです! キエエエーー!!!」
さらに追いかけてくる鉄の触手を破壊して、抵抗をしていくと数が次第に増え始めて森全体が鉄へと変わっていく。
「なっ、なんなのですか?!」
『汝は、すでに力を求めた逃しはしない』
鉄の触手はいくつもの鉄の巨人が立ち上がる。
「くっ、舐めないでいただきたい。私は《暴食》のルピナスですよ!」
鉄すらも喰らってやりましょう!!!
《暴食》で強引に力を振り絞って鉄を喰らう。
魔力を感じられない上に、遺跡を発動するためにこちらの魔力を消費したのが痛いですね。力押しされては………。
「ハァハァハァハァ」
全身が傷だらけになって、鉄の触手に捕まりました。
『解析を完了しました。これより《暴食》のルピナスをベースにした機神体を生成していきます』
「やっ、やめなさい!!!!!」
『全身との適合を開始。《暴食》のワニを取り込みました。さらにルピナスの体を改造開始。改造を完了しました。機神体としての改造が全て完了しました。この地に新たな生命体が誕生したことを心から喜び申し上げます』
全身がバラバラに切り刻まれ、また繋ぎ合わされた体は本当に自分の物なのか……。
『全ての適合を完了しました。機神体《暴食》のルピナス。射出』
鉄の触手にいじられている感覚がなくなり、やっと自由に体が使える。
「なんだったのでしょうか?」
「マスター。おはようございます」
「なっ!」
いきなり声をかけられて驚いてしまう。
小さな鉄のワニが宙に浮いて私を見ていました。
「なんですか? あなたは」
「私はマスターのナビゲーターAI、WANIです」
「ワニ?」
「はい! 現在、マスターは機神の力を授かりましたが、未だ使い方を理解されていないと思いましたので、僭越ながらご説明のサポートをさせていただきます」
「ほう、いいですね。私はどうなってしまったのですか?」
「それでは説明をさせていただきます」
その説明を聞いて、私は口元から笑みが溢れてしまいます。
「素晴らしい!!! 差し詰めサイボーグルピナスということですね」
「そうです! もっとさらに機神体として力を引き出せばもっと凄いことも可能です」
「いいですね。憤怒の魔王と繋がっていた繋がりも遮断されている。つまりは、死んだと判断されていることでしょう。これで私を縛る物は何もありませんよ。いい。いいですね! 手始めに、この遺跡を破壊するとしましょう」
「どうして遺跡を破壊するのですか?」
「私と同じ力を持つ者が現れては行けませんからね」
「なるほど! マスター! 賢いのですね」
「当たり前です!」
私は全力を持って森を焼き払いました。
遺跡を破壊するつもりで放った魔力弾も、エネルギーが不足したところでやめました。
そして、私はその場を立ち去ります。
必ず魔王を喰らって、私が魔王になってみせましょう。




