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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十一章

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デスクストス長男 3

《sideテスタ・ヒュガロ・デスクストス》


 久しぶりに愚弟にあった。


 いや、大人になり力を手に入れたリュークを愚弟というにはあまりにも力をつけていた。我と並ぶ、いや、それ以上ではないかと思うほどの力に普段であれば嫉妬をしていたことだろう。


『なんだい? 嫉妬をしないことが不思議かい?』

「ああ、まるで自分ではないのではないかと思うほどに穏やかだ」

『シャシャシャ。呑気なもんだね。あんたは今、私のおかげで力を貯める期間に入っているだけさね。それに、ここはいいねぇ〜』


 リュークが去っていた遺跡を見つめて、アビスが舌なめずりしている。

 アビスの姿は我にしか見えていない。


「ここは父上が眠る地だ。貴様に踏み荒らせはしないぞ。リュークにもな」

『シャシャシャ。あんたはそんなんだから弟に負けるんだよ』

「何! 我はリュークに負けてなどいない!」

『いいや、負けているね。確かに互いの力だけなら、互角かもしれない。私とクマの戦いも互角だろう。だが、あんたはあの子が持つもう一つの力を持ってはいないんだからね』


 こいつの煽りはいつものことだ。


 嫉妬心が消えたわけではないが、アビスを取り込んでから薄らいでいる。

 だが、そんな我を嘲笑うようにアビスが嫉妬を煽るような言葉をかけてくるのだ。


 その度に、メラメラと瞳に緑色の炎が宿るような錯覚を味合わさせられる。


『シャシャシャ。いずれわかるようになるさね。あんたはこの地にきて、力を求める』

「今でも我は最強だ」

「はいはい。そうだったらいいね」


 鬱陶しいことではあるが、こいつがいることで精神的な安定はみこめている。


 この視察を終えた際に、王国に帰って我は政治の中枢を掴むことになるだろう。


「デスクストス様!!!」


 護衛の騎士から発せられる悲鳴のような声によって、我が視線を向けると禍々しい魔力が吹き上がる。


「ふむ。異質な力を感じて来てみれば、貴様、交じっておるな」


 突然、吹き上がった魔力から現れたのは魔王であった。

 我が出会うのは初めてであったが、話を聞いていた通りの人物が立っていた。


「貴様は魔王か」

「ほう、我の顔を知っておるか。今代の我が血脈を受け継ぐ当主と見える。すでに混じり始めた者よ。貴様は何を望む? 望みを我が叶えてやっても良いぞ」


 魔王の甘美な言葉に俺は耳を傾けることはない。


「必要ない。もしも叶えたい望みがあるならば、自分の力で叶えてみせる。貴様の申し出など必要ない」

「くくく、そうか。今代の当主は欲のないことだ。我と手を組めば、どれだけでも力を手にいれ望みも得られるというのに」


 我は魔力を込めて魔王に対して宣戦布告の力を解放する。


「くだらない。他人から与えられる望みになんの価値がある? そんな者は弱者がすることだ。本当に価値がある望みは自らが努力し、夢見て苦労して手にしたからこそ意味があるのだ」

「青いな。望みを手に入れるのだ。他人から貰おうと、自分が努力しようと同じではないか? むしろ、簡単に他人から受け取れる方が楽で良いではないか?」


 我はアビスを具現化させる。

 

 魔王の腕から魔力が収束して、巨大な魔獣が生み出される。


「お前はつまらないのだな。魔王」

「何?!」

「他者から与えられた喜びなどいっときだ。その与えられた瞬間は嬉しいかもしれない。だが、途方もうない虚無感だけが永遠に残り続ける。もしも自分が努力していれば、手に入れられたかもしれない。それを他者から与えられた。虚無だ」

「わからんな。物の価値など誰がどうしようと同じではないか」


 見たこともない化け物と、巨大な蛇が死闘を開始する。

 魔物同士の戦いは、激しく大地を変化させる。


「達成感、充実感、思い出、努力、過程、結論。その全てに意味がある」

「くっ、クククク!!!あ〜ははははははは。通人族よ。貴様からそのような言葉が出るとは思わなかったぞ。笑わせてくれる。現在世界は混乱に満ちている。その中で私は頂点となり得る力を手に入れたではないか。ただ欲しいものがないだけであろう?」


 魔王の魔力が高まれば、アビスが魔獣に押され始める。

 我はさらに魔力を追加で差し出して、アビスを強化する。


「これまで多くの先人たちが、お前に恐怖して来ただろうな」

「……貴様は違うというのか?」

「魔王よ。俺だけではない。弟も貴様の領域に足を踏み込んでいるぞ」

「笑わせるなよ!!! 下等生物が!!! 貴様は父親の犠牲によって、私の力を半減させているに過ぎんわ! 調子に乗るなよ」


 憤怒の魔王。


 怒りを増幅させることで、更なる力の上昇が望める魔王。


「その力も妬ましい」


 久しぶりに感じる欲しいと思う渇望。


 ぶつかり合い、《嫉妬》の大罪魔法を使ったことで思い出させてくる。


「我は誰よりも勉強をした、我は誰よりも武術を学んだ。我は誰よりも魔術を使った。大勢の魔物を殺し、人を殺し、政治に明け暮れた。魔王、お前が引きこもって力を誇示している間に我はお前の力すらも取り込んでくれるわ」


 魔獣がアビスへと取り込まれて食されていく。


「ほう、良く育っておる」

「無しかない貴様はもう死ね」


 アビスが魔王の体を喰らう。


 魔力の結晶であるアビスによって、魔王が食される。


 いや、魔王を模した力の集合体を喰らうが、意味などない。


「こんな者では俺を倒せない。貴様如きの力では私には届かない。精々、足掻くのだな通人族よ」


 魔王はアビスの体を突き破り、辺り一体を爆発させて立ち去っていく。


 勝敗をつけるならば引き分けだが、相手は力を失った状態なのだ。

 敗北に近い引き分けだと言える。

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