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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十一章

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領都ヒュガロ

 デスクストス領内は穏やかな時間が流れている。

 ギスギスとしたデスクストス家と違って、爽やかなそよ風が草原の花たちを揺らしている。


「綺麗」

「ココロはこういう景色が好きかい?」

「うん。好きだよ。旦那様もでしょ?」

「ああ、ボクものどかで、のんびりとした雰囲気がとても好きだ。王都のデスクストス家とは大違いだね」


 意外にもデスクストス家の領内は、ボクにとって居心地の良い雰囲気を提供してくれる。

 魔物もほとんど見かけることはない。


 マーシャル家は常に魔物と戦っていたのに、真逆の雰囲気だ。


 常に戦闘を意識して、ピリピリとした騎士たち。

 だが、騎士の姿も魔物の姿もほとんど見ることはない。


 畑に向かう領民、家々の間も塀や柵などを作ることなく、区切りのない町が形成されている。


「私も噂にしか聞いていませんでしたが、アレシダス王国内で最も穏やかで豊な領土というのは嘘ではないようですね」

 

 博識のリベラも来たことはないが、デスクストス領内の噂は知っているようだ。


「そうなんだね」

「デスクストス家は派手な印象がありますが、宰相として質素倹約も守られておられます。パーティーなどでは出し惜しみはなさいませんが、基本的にプラウド様もテスタ様も必要以上の贅沢はしません。あの、アイリス様も見た目は派手ですが、本当に欲しいものしか購入しないと社交界では有名でした」


 意外も意外な答えだね。


 義母上を見ていると贅沢三昧な生活をしているように見えた。

 貴金属やドレス、美を追求するのに余念がないため、お金の使い方は派手だった。


 社交界の至宝とも言われていたので、贅沢に見えていたのだろう。


「そうだったのか? なら、ボクが一番贅沢していたのかもね」

「リューク様は幼い頃から美容にお金をかけていたと言われていましたからね。ですが、そういう意味では、リューク様は全くお金はかかっていませんよ」

「えっ?」

「ふふ、デスクストス家の質素は、基本的にご自身たちが稼がれる収益に対して支出が少ないということです。宝石屋、服、美容に使う程度なら使い切れないほどのお金を持っておられるので」


 どうやらボクの感覚と、リベラが話してくれた内容には齟齬があるようだね。

 ボクって自由にお金を使っているはずなのに、その辺の利益に関しては鈍感すぎる。


「そろそろ到着するみたいですよ」

「ああ、大きな町が見えてきたね」


 賑わいのある風景というよりも、石畳の街並みに田舎町が広がっている。


「いい風景の街ですね」


 風車が見えて、街に水が引かれている。

 貯水はあるようだが、下水は作られておらず、生活が王都とは違って時代が止まっているようだ。


「やっと来ましたの。大きな馬が引く荷馬車がやってくると聞いて来ましたの」

「アイリス。出迎えに来てくれたの? ありがとう」

「べっ、別に当たり前のことですの。リュークはヒュガロに来るのは初めてですの」


 アイリスなりに気を遣ってくれたのだろう。

 ふと、アイリスの後ろから顔を出した人物を見て、ボクは首を傾げる。


「あれ? メイ皇女?」

「違いますの」

「えっ?」

「彼女は私のペットのキキと言いますの」

「キキ?」

「お姉様!」

「メイ様!」


 ココロとカスミもメイの姿を見て、ボクと同じように驚いた声を出す。

 ボクたちが彼女がいる理由を知らなかったので、アイリスにお茶をご馳走になりながら、メイ皇女とイッケイの戦いに参戦した時のことを教えてくれた。


「なるほど、大罪魔法の影響で」

「そうですの。ですから、彼女はもうメイ皇女ではありませんの」

「ココロ?」


 ボクは姉の変わり果てた姿にココロが傷つくのではないかと思っていた。

 だが、ココロは猿のように歩くキキを見て、笑顔を浮かべてオモチャで遊んであげていた。


「旦那様、大丈夫です。姉様は元々猪武者と呼ばれるぐらいに頭はあまり良くない方でした。それがプライドの高さから人を傷つける方へ向いていました。ですが、今の姉様はお猿さんのように無邪気で可愛くなりました。それにアイリス姉様の元にいるなら、いつでも会えるので、安心です」


 ココロなりにメイのことを思っていたのだろう。

 死んだと思っていたメイ皇女が生きていて、元気そうにアイリスの元で飼われている。


 認識としては悲しむところかもしれないが、精神が崩壊して闘争心よりも無邪気に体を動かしている姿は確かに楽しそうだ。


 迷宮都市ゴルゴンにも連れて来ていたそうだが、ボクは会うことがなかったから気づくことができなかった。


「それでは遺跡の調査を初めてくださるんですの?」

「ああ、そのためのメンバーだからね。ボクに任せてよ。アイリスのために頑張るね」

「まっ、まぁ、当然ですの。今日は屋敷でゆっくりして行きなさいですの。それと」「それと?」


 アイリスの雰囲気が変わったので、聞き返してしまう。


「近々、テスタ兄様が視察を兼ねてこちらに戻ってくると言われていましたの」

「テスタ兄さんか」

 

 ボクは正直、まともに話したことがない。


 ゲームのボスであった状況とは異なっている。

 今のテスタ兄さんが、何を思って行動しているのかわからない。


「家族なのです。話をすればわかってくれるはずですの」

「ああ、アイリスがそういうなら頑張ってみるよ」


 ボクらは屋敷を宿代わりに泊めてもらい、次の日から遺跡の調査を開始することにした。


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