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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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戦争終結

 戦争の終結が告げられた。


 帝国の敗戦を帝王の姫であるジュリア・リリス・マグガルド・イシュタロスの宣言によって。


 帝王の血筋は彼女を残して全て死に絶えたことを告げ、帝国の支配を終わらせる宣言をした。

 

 ジュリア・リリス・マグガルド・イシュタロスは続けて、演説を行う。


「多くの悲しみを生み出した大帝国イシュタロスは今日をもって滅びます」


 王国の国王ユーシュン・アレシダス。

 皇国の皇王クーガ・ビャッコ・キヨイ。

 教国の聖女ティア。


 各国の重鎮達が、顔を揃えている前で帝国の終幕を告げる。


「ですが、争いを呼び戻す戦乱の時代に戻って欲しいわけではありません。大帝国としてのイシュタロスは力を失いました。ですが、帝国の生き残りとして、私が最後の仕事をしようと思っています!」


 帝国の最後の盟主として、各国だけでなく帝国の民と言われていた者たちにも向けて発せられた。


「今後も帝都マグガルドは健在させます。私が最後の盟主として、帝国の役目を果たすためです。王国の人々よ。私は自分を処刑して終わらせるなんて方法を取らない。王国が攻めてくるのであれば、私が帝国の大地を守るために最前線で戦い続けるでしょう」


 ジュリアの瞳は、ユーシュンに向けられ、ユーシュンは何も言わずにジュリアを見つめ返した。


「帝国の大地で共に生きてきた皆さん、争いではなく話し合いで今後の方針を決めていきましょう。武力で皆さんを従わせようとした帝国は滅んだ。だけど、こうして一つの国として一度はまとまったことは嘘ではない」


 帝都に住んでいた者たちは天使族に乗っ取られながらも、帝王の呪いから解き放たれた。民は半分以上いた。

 その中には王国の第二王子であるムーノ王子も含まれていた。


 だが、半分の命は失われた。


 そして、イシュタロスナイツはジュリアを残して全てが死に絶えた。

 軍としての機能はジュリアに従った12000人と、アンガスとその部隊。それに帝都以外の帝国の民たちがどれだけ帝国として、彼らを支えるのかによるだろう。


「不満も怒りもあるでしょう。帝国に対して恨みを抱く方も多いはずだ。ですが、ハッキリ言います。それらを受け止める気はない。大帝国イシュタロスは滅んだ。何よりも、かつて行った全ての出来事は帝国の正義だった。そこに嘘はない。負けたから嘘だと終わらせていいはずがない! それでは蹂躙されて死んだ多くの民も。そして殺すことを命令された帝国の民も報われない!」


 ジュリアはギュッと拳を握る。


「無責任だという者もいるだろう。どうしても不満だというなら、ぶつけてくるがいい。その折り合いを話し合いでつけよう。つけられなくても、つけられる努力をしよう。だが、未来を生きる子供達にこの遺恨を残すな。私が生きている限りは恨みつらみを聞いてやる。だが、私の子やその未来の子にまで恨みをいうな! お前たちが弱かったから負けたんだ。そして帝国は弱かったから負けた。話し合いをしても許せないのであれば、滅ぼしに来い」


 どこまでいっても人間は野蛮な生き物だ。


 知識を持ち、知力を持てる時代になっても戦争を止めることはできない。


 ならば、最初から、恨みを受け止めないことを告げるしかない

 それが承認できないなら、また戦争をして滅ぼし合うしかない。


 ジュリアが示したのは覚悟だ。


 これから帝国は三国だけでなく、帝国内部でも冷遇される恐れがある。

 だが、帝都マグガルドや、他の都市を帝国が抑えている以上は物流の管理を行えることができる。


 それは帝国民と言われたものたちを守る処置でもある。負けたから何をされてもいいという状況を作るわけにはいかない。


 王国、皇国、教国の全てから敵として見定められて、攻められることも可能はあった。

 実際に、各国にジュリアが管理できない領土を開け渡した。 


 それが敗戦国が勝利国へ差し出す代償だった。

 もちろん、帝国に属さないと判断した種族たちにも帝国の領土は戻される。


 ただ、様々な種族がいる手前、管理が必要な危険な種族も存在していた。


 魔族として生を受けて、魔物を操れる者や、人の生命エネルギーを必要とするものなど、生きて行くために共存が必要なものたちがいた。


 それは各国や種族間でも認識しておこなければいけないことで、どうやって助けていくのかも考えなければいけない。


 互いを知り合うための期間は、一年や二年で埋まるような話ではないだろう。

 だが、帝国が仕掛けた戦争によって、互いを知る機会を得た。


 だからこそ今回の出来事を正しく伝えなければ、恨みを伝承するようなバカな種族を残してはいけない。


 それを外交に使う国も、戦争で苦しんだ者たちがいなくなった後も、ひきづるような政治家たちを出してはいけない。


 戦争をしたのだ。


 綺麗に終わることなんてできない。


 どこかに恨みが残り、どこかにぶつけようとする感情を募らせる者たちが現れる。


 ジュリアはその者たちに立ち向かう覚悟を示した。


「さて、わかっているよね」


 ボクの前に座る三人の代表者。


「通人至上主義教会はこれまで通り、通人族を支える女神様を信仰し、これ以上帝国の問題に介入するつもりはありません」


 聖女ティアが口を開けば、後の二人もボクを見る。


「リュークの兄貴。俺たちは領土と保証金をもらう約束した。これ以上求める物はねぇ。何より失った皇国の民も、帝国にいた鬼人族を受け入れることで話はついている。北東地域を奴らに渡してこれまで通りの生活をするつもりだ。戦争を仕掛けるつもりはねぇよ」


 皇王クーガ・ビャッコ・キヨイの言葉に頷く。


「……王国の被害はテスタ・ヒュガロ・デスクストスの手柄によって防がれた。今回の事態は彼の一存で判断される。私の言葉ではどこまで採用されるのか判断できない」


 最後に残ったユーシュンの言葉に二国の代表は驚いた顔を見せ。


 ボクは大きく息を吐いた。


 結局、問題になるのは《デスクストス家》というわけだ。


「わかった」

「ただ、王国としてはこれ以上の戦争継続は望まない。それだけは約束しよう。帝国が助力を求めるのであれば協力もする」


 三カ国は、ある意味でボクを仲介人として、ジュリアとの裏取引を終えた。


 その内容の詳細を語るのは後日として、こうして帝国は滅び、新たな時代が訪れようとしていた。


 

 どうも作者のイコです。


 これにて帝国編 完となります。


 ここまで読んでいただきありがとうございました。


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