天王の最後
ボクがダンジョンコアを破棄すると、ダンジョンの声が脳内に響く。
《静かな眠りダンジョン & 帝国ダンジョンの勝敗がつきました。帝国ダンジョンのダンジョンコアが破壊されたため、静かなる眠りダンジョンを勝利とします》
「まっ、待て! ワシはまだ!」
先ほどまで美しい男神のような姿をしていた天王オーディアヌスは力を奪われ、萎んで元の老人よりもさらに弱ってヨボヨボでシワクチャの姿になっていく。
何年間生き続けたのか知らない。
だが、これまで多くの帝国の民を裏から操り、神のように人の命を弄んできた代償は受けてもらう。
ボクはジュリアを転移させて呼び戻す。
「リューク!」
「決着はついた」
ジュリアが振り返った先には、天王が地面に這いつくばってジュリアを見上げていた。
帝国の王族で残ったのはジュリアだけだ。
残念ながら、長らく侵食された帝国は深く天王の血が濃く残ってしまった。
「君自身の決着をどうするのか、ボクが決めることじゃない」
ヨボヨボの老人になった天王。
それを見下ろすジュリア。
「……お前は残酷だな」
天王の姿にジュリアは涙を流す。
「このような弱った相手に対して、どうしろって言うんだ……。弱い者いじめでもしろと言うのか?」
彼女の瞳はキラキラと揺れていた。
涙を拭い。
しっかりとした瞳でボクを見た。
「そうか。ならボクが終わらせよう」
「まっ、待て! 我は天王ぞ! この世界を統べる者だ。我がいなくなれば、誰が魔王から、この世界に対する脅威を守ると言うのだ!」
すでに力を失い崩壊を始めているにも関わらず、それでも生へしがみつこうとする天王はある意味で尊敬に値する人物なのかも知れない。
もしも、創造主によって作られただけの存在ではなく、自ら考え行動する存在なら、ボクはもっと苦戦していたと思う。
「もう誰もお前を求めてはいない」
「なっ!」
天王の存在を知るものなど存在しない。
魔王は世界が恐る脅威として知られている。
だが、それに対抗する戦力として天王を知る者はいない。
何よりも、魔王を滅ぼした人類を滅ぼそうとする裏ボスなんて存在だけするだけ最悪だ。
「通人族、聖霊族、亜人、魔人、種族なんて本当は関係ないんだよ。それぞれが、それぞれの信じる神を持ち、自由に生きている」
ボクの脳裏に映る様々な地域で生きる人々は、天王を神として崇めて生きているものなど誰一人いない。
「神は崇める対象であっても生きる目的になってはいけないんだ。人は自らの考えの下で判断して生きていかなければならない。神に縋って、神が言ったからと行動しても決してそれは神の言葉じゃない。自分の心が生み出した偶像だ」
どうしても心が弱くなって神に願うのは仕方ないかもしれない。
だけど……。
戦争をする者も、平和を求める者も、神を求める者も、
それを理由に戦う者は、
結局は自分の私利私欲や、自らの家族のために戦いを求めているだけに過ぎない。
純粋に家族を思っているだけでも、その心を悪用する者はいる。
だから自分で学び、考えて行動する必要がある。
弱者には選ぶ権利はない。
知識のない者は騙されるだけだ。
だから、己を鍛え、学び、争うんだ。
「ボクは断罪される未来から抗ったから、今ここに立っている。お前は神ですらない。人を人とも思わずに悪用した最悪の存在だ。それは魔王よりも劣る行為だとボクは思う」
《怠惰》よ。
《太陽》の力を失った天王に、全てを終わらせる《怠惰》をプレゼントする。
天王だった存在は、姿すらも消滅して全ての活動を停止した。
《勝利者は静かな眠りダンジョンマスターバル。勝利者特典が開示されました》
・ダンジョンの吸収
・ダンジョンレベルアップ
・ダンジョンの規模が最大値に達しました。
・召喚獣創世
・眷属契約
・世界の王に認められました。
・ダンジョン吸収
帝国ダンジョンを吸収しました。
全てはダンジョンマスターバルの物になりました。
・ダンジョンレベルアップ
帝国ダンジョンを吸収したことでダンジョンレベルが9になりました。
・ダンジョンの規模が最大値に達しました。
ダンジョンとしての吸収できる限界を超えました。
ダンジョンとして定める範囲を指定してください。
・召喚獣創世
己が考えた種族を生み出すことができるようになりました。
新たな生命を生み出す力です。
・眷属契約
自分の眷属として、力を分け与えられる存在と契約を結べるようになりました。
・世界の王に認められました。
ようこそダンジョンマスターバル。
あなたは世界の王に認められました。
これより王たちだけが得られる恩恵を、創造神より授けます。
唯一の王にならんことを心より願っております。




