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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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天魔対戦 21

《sideダン》


 帝王カウサル。


 元勇者であり、現最強の存在として名前を知らない者はいないような存在だった。


 そんな人に俺は挑むことができる。


 昔、マーシャル様が話してくれた話がある。

 それはかつて共に戦った最強の三人の話。


 マーシャル様がいくら追いかけても追いつけなかった三人。

 その一人と俺は戦うんだ。


「ダン、落ち着け」

「姫様」

「今回は一対一で戦うわけじゃない。お前には仲間がいるんだ。リュークはお前を信頼して、任せたのだろう」

「そうだな。くく」

「どうした?」


 アレシダス王立学園に入学する前の俺たちに教えてやりたいぜ。

 デスクストス公爵家を敵として定めて、リュークにバカな喧嘩を挑んでのされるんだ。


 二人とも敗北して、自分たちが甘いことを知ることになる。


 だけど、あれがあったから、今の俺たちは成長することができた。


「俺たちは弱かった。だけど、最強の一角を任せれるほどに強くなれたんだ。それが誇らしくて、嬉しいって思ったんだ」

「そうか、うん。そうだな。今では私は一児の母だ。娘のためにも、絶対に帰らないとな」

「おう、俺もこれが終わったらハヤセにプロポーズしようと思うんだ」


 そうだ。俺は帝国との戦争が無事に済んだら、ハヤセと結婚しよう。


 子供を作って、家族を作ろう。


「ダン! 来たぞ!」

「おう!」


 姫様と久しぶりに肩を並べて、帝王カウサルと戦闘を開始する。

 巨大な剣を振り回すカウサルに、俺たちは二人で剣をさばいて応戦する。


 久しぶりに呼吸を合わせるが、昔馴染みは戦いやすい。


 ハヤセとアンナ嬢が、遠距離と中距離から援護をしてくれて、クロマ嬢が撹乱をしてくれる。


 ミリルの補助魔法で全員が強化されて体が軽い。


 先陣で戦い続ければ、姫様がチームをまとめてくれる。


「グウウ」


 帝王カウサルを相手にしても戦えている。


「ミカエル!」


 いきなりシド宰相に呼ばれたカウサル帝王が逃げ出していく。


 追いかけた先には、大量のスケルトンがシド宰相の支配下に置かれていた。

 さらにカウサル帝王が力を使えば、スケルトンたちが強化されていく。


 タシテと肩を並べて、大天使二体の膨大な魔力で圧迫してきた。


「うおおおおお!!!」

「ああああああ!!!」


 タシテと声が重なる。


「「絶対に負けねぇ」ない」」


 俺たちは互いの動きを意識しながら、大天使に挑んだ。


 悪いが姫様たちには大量に溢れるスケルトンたちの相手を任せる。


 こいつらを倒せば、スケルトンたちの支配もなくなるはずだ。


「まさか、あなたと肩を並べて戦うことになるとは思いませんでしたよ」

「俺だってそうだ。お前がここまでやるやつだって知らなかったぞ」

「隠し事は誰にでもあるものです。それよりも、女性に滅法強いあなたが、おじさんの相手をして勝てるのですか?」

「舐めるなよ。俺はリューク以外に負けるつもりはねぇよ」

「ふん、あなたがリューク様のライバルなどあり得ませんね」


 シド宰相の翼が剣になって俺を襲う。

 さらに、カウサル帝王の剣が振り下ろされた。


「ぐっ! 《不屈》よ!」

「相変わらずバカのような頑丈さですね! いただきます」


 俺が作った好機をタシテが使って、両者の首を掻っ切った。

 しかし、すぐに再生して、傷口が塞がる。


 天使族ってのは首を切っても再生するのかよ。


「化け物かよ」

「所詮は作り物の生物です。攻撃を蓄積させれば、倒せるでしょう」

「おい、俺が力を溜められる時間を作れるか?」

「誰に物を言っているのですか? 舐めないでもらいたいですね。どれくらい必要なのですか?」

「三分、それだけあれば聖剣に力を溜められる」

「いいでしょう。ここから三分間、二体の大天使を相手にして差し上げます」


 タシテが俺の前で二人の大天使と相対する。


 俺はハヤセに視線を向けた。


「欲しがりな駄犬っす!」


 ハヤセがどこから出したのか、二丁の魔導銃を持って魔力を込めていく。


 これまでは一丁でも十分だったはずなのに、いきなり増えた魔導銃にドキッとさせられる。


「ルピナスに散々弄ばれていたっす。これぐらい耐えて欲しいっす!」

「来い!」


 氷と炎の相反する魔法が魔導銃から放たれて、左右から俺の体を冷やして、熱する。


 別々の痛みが同時に俺を襲って、今までにない快感が溢れ出してくる。


「くうううう!!! キタキタキタ!!!」


 急激に絆の聖剣に力が溜まっていく。

 これが俺とハヤセの愛だ。


「タシテ!!! 退け!!!」

「遅すぎですよ!」


 タシテが二体の大天使に何をしたのか知らないが、グルグル巻きにされた二体の大天使に俺が技を放つ。


「全力・次元斬り!」


 どこにいても間合いを無視できる俺の最強技が二体の大天使を真っ二つにする。


「どうだ!」


 上半身と下半身を分断した大天使は、ギロリと俺を見て、帝王カウサルは次元を超えた。


「なっ!」

「頭が高い!」


 カウサル帝王の上半身だけが次元を超えて現れ、俺の心臓を貫いた。


「ガハッ!」

「ダーーーーン!!!」


 ハヤセの声が遠くから聞こえる。


 くっ、俺はこの戦いが終われば、ハヤセとけっ こん……。


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