表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

437/440

天魔対戦 19

 ボクの前に立った二人の背中を見て、自然に笑みを浮かべてしまう。


 ダンは相変わらず詰めが甘い。

 ルピナスを逃したら、《暴食》はさらに成長して、もっと大変になるじゃないか……。全く主人公様は敵を後に残したがる。


 タシテ君、すまない。

 君の気持ちに気付いていなかった。

 悔しい思いをして、君が戦いたいと思っているなんて思いもしなかった。


 ボクは二人の言葉を聞いて……。


 向かってくる帝王カウサルと、シド宰相を二人に任せることを決めた。


「わかった。ここからはパーティー戦だ。シロップ、クウ、ルビー、リベラ、ナターシャ!タシテ君の援護をしてやれ!

「「「「「はい!!!!」」」」」


 タシテ君が驚いた顔をする。


「戦うんだろ? ボクの婚約者を死なせるなよ」


 タシテ君の胸を叩く。


「ケホッ! はい! ありがとうございます!」


 ボクは意識をダンに向ける。


「リンシャン、ミリル、アンナ、クロマ、ハヤセ、ダンを任せる」


 ボクはダンにではなく、リンシャンとハヤセに頼んだ。


「任されよう」

「わかってるっす!」


 ダンの肩に手をおけば、拳を握って覚悟を決めた瞳を向けてくる。


「アカリには静かな森ダンジョンの全権を任せる。援護が必要そうなら、みんなを助けてやってくれ」

「任せとって!」

「シェリフには、深海ダンジョンを。ミソラには青龍の湖ダンジョンを。それぞれ頼んだ」


 二人はボクは頷き応えた。


「ユズキ、ミソラの補佐をしてやってくれ」

「おまかせください」

「シェルフはカメ爺がいるから大丈夫だろう」


 襲撃を受けたことで、空白の空間となっている地下迷宮ダンジョン。


「ソレイユ、ゼファー、レベッカ、貴様らにはスケルトン部隊の召喚権を与える。任務だ。地下迷宮ダンジョンを取り返して来い」

「「「はっ!」」」


 ボクは帝王ではないが、三人は反論することなく命令に従う。


「エリーナ、ティア、ジュリア、君たち三人はボクと一緒に来てくれるかい?」

「リュークと共に戦えるなんて嬉しいわ」

「選んでいただきありがとうございます。聖女として、皆さんの治癒と補助をさせていただきます」


 ジュリアは拳を握りしめて天王を睨んだ。


「もちろんだ! この戦いを終わらせる! 帝国をめちゃくちゃにした犯人を私は許さない。誰もが平和を求めて戦っていたのに、それを横取りしただけでなく、考え方が体まで使われて、我々の思いを歪めた元凶に終止符を打う。そして、民と共に歩むための話し合いの場を作ってみせる」


 これで全員に役割を与えた。

 あとは帝国ダンジョンのコアを破壊するか、ダンジョンマスターを倒せば決着だ。


「さぁ、作戦開始と行こうか」


 ボクは3カ国の姫君を連れて、天王の元へと舞い降りる。


「ダンジョンマスター自らお出ましとは、敗北を認めに来たか?」

「いいや、逆だよ。お前に敗北をプレゼントするために来たんだ」

「お前如きに何ができる? 私は何百年も王の座に君臨してきたのだ。創造主によって作られた唯一の存在として、魔王のやつと戦い続けてきた」


 老人の姿をして、白い羽を生やし天使の輪っかをつけた天王の姿はお世辞にも強そうには見えない。


「悪いが、あんたを倒して帝国ダンジョンを手に入れさせてもらう」

「我を倒す?」


 天王の雰囲気が変わり、全身にかかる圧力が強くなる。


「我は天王……この世界の天を統べる者。魔なる奴と長年にわたって戦い続けてきた我を倒す? くく、がははははははは」


 高笑いする天王に怪訝な顔を向ける。


「我、最高傑作たちを見よ」


 振り返ってみれば、二体の大天使によって蹂躙されるダンとタシテ君が目に入る。


 傷つき、それでも倒れず、真っ直ぐに敵を見て諦めていない二人の顔にボクは満足する。


「どうだ? 圧倒的ではないか? 貴様が犠牲にした仲間たちをすぐにでも灰と化して、我の下にやってくるであろうな」


 自慢するように自分の部下を褒める天王にボクは笑みを向ける。


「あんたが作った偽物に、あの二人が負けるかよ。ボクの友人を舐めないでもらいたい」


 ボクが発言してすぐに二人の魔力が溢れて、大天使を押し返した。


「ふん、どいつもこいつもしぶとい! もう良い。ならば、貴様を先に葬って、他の奴らを後から滅してやろう」


 天王が指を鳴らすと二体の大天使が現れる。


 一体は先ほどまで、天王の後ろに控えていた。


「ドロメア兄さん」


 大天使レミエル、イシュタロスナイツ第六位ドロメア。

 ボクはゲームにも登場しないので、どんな人物なのかも知らない。


 そして、もう一人。


「愛しきアフロディーナ」


 ガラス細工を思わせる美しい女性は、まるで人形のように整った容姿を変化させることなく天王を見た。


「愛しきオーディアヌス様」

「ありがとうアフロディーナ。さぁ、我息子レミエルよ。愚かなる者たちを滅ぼすのだ」

「はい! 偉大なる父よ! 愚かなる者たちを滅ぼします」


 どこまでも偽物ばかりで作られた歪な天王に、魔王よりも恐ろしさを感じる点を見つけてしまう。


 ここには何一つ、本物も、心も、存在しない。


 誰かがプログラムを組んだような違和感。

 現れた相手に決まったセリフ話す機械を相手にしているようだ。


「さぁ、終わらせようではないか! ここまでよく戦ったぞ、小僧。だが、我が愛しきアフロディーナに抱かれて眠るがいい」

「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


 突然、アフロディーテ呼ばれた女が、大きな口を開けて叫ぶと女の体は異形の化け物へと変化していく。


 ナーガのような下半身が蛇になり、千を超える腕が上半身から生えて、三つの顔をもつ化け物へと進化ていく。


 それは神獣に近いようで、より化け物となった異形のボスだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ