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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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天魔対戦 18

《sideダン・D・マゾフィスト》


 あいつの攻撃を受けるたびに、俺の中で力を増加していくのを感じる。


 元々、《増加》の属性魔法を持つ俺は、今までは力や肉体を強化するだけだと思ってきた。

 

 だけど、ここにきて俺の持って生まれた《増加》の属性魔法が開花した。


「ウォおおお!!!」

「くっ! なんなのですか、あなたは! キエエええ!!!」


 俺に対抗するように《暴食》のルピナスも力を振るう。


「くくく、いいなぁ、いいぞ! もっとだ! もっと俺を殴れ! 蹴れ! そうすれば、俺の力が《増加》していく。オラオラ! どうした?!」

「ダン、油断してはいけません! 気を引き締めなさい」


 ゼファーがどこかに消えたと思えば、エリーナやタシテたちがやってきて援護を始めた。


 だが、今の俺は攻撃を受ければ聖剣に力が溜まって、光刃をいくらでも放つことができる。


 援護なんて必要ないんじゃないか?


「くっ、援護を受けてさらに戦いにくくなりましたね。それにしてもあなたはなんなのですか? 気持ち悪いにも程がありますよ!」

「俺か? 俺は勇者だ。勇者ダン・D・マゾフィスト! 覚えて死んでいけよ! 《暴食》のルピナス」


 姫様やエリーナよりも美しい見た目をした異形の化け物。ハヤセがいなかったなら惚れていたかもな。


 俺は光刃を飛ばして攻撃を繰り出す。


 素早い動きで避けられてしまうが、エリーナの氷が足止めをして、タシテの幻惑が相手の目眩しをしてくれる。


 ダメダメだ。俺はすぐに調子に乗る。

 何度、それで失敗してきたのか学んでない。


 援護があることがありがたい。

 ルピナスの動きが鈍くなってきた。


「くっ! このような相手は初めてです」


 俺はこれまでもそうだった。


 学園剣帝大会でも、王国剣帝大会でも、女性と戦う時……攻撃は全て俺を強くするように《増加》されていたんだ。


 ずっと《絆》の力で耐えているだけだと思っていた。

 だけど、《勇者》の力を手に入れたことで、全ての力が融合して理解できた。


「お前は俺には勝てないぞ。大人しく殺されるがいい」

「ふっ、ふん。すでに帝国に大打撃は与えました。二体の魔王様直属部隊も蘇らせました。私の役目は終わっているのですよ」


 後ずさるルピナスに俺は聖剣を構える。


「おいおい、逃げるつもりか? 逃がす思っているのか?」


 俺はハヤセに合図を送って、急所に魔弾を打ち込んでもらう。


 やっぱりだ。


 ルビナスの協力な攻撃を受けたからアドレナリンが出て、ハヤセの攻撃が全く痛くない。


 代わりに愛情だけが伝わってくるぜ。


 ありがとなハヤセ。


「うわ〜キモイっす。最大出力で撃ったのに余裕の笑みを浮かべているっす」


 何やらハヤセから声が聞こえてきたが、きっと俺を応援してくれているんだろう。


「どこに逃げても斬り殺す。全力・次元斬り」

「《暴食》よ!!! 空間を食べてなさい!」


 互いにゼロ距離の攻撃ができる必殺技を放って、互いの体に刃と牙が食い込む。


「グフッ!」

「ガハッ!」


 相打ちに見えるが……。


「くくく! 効かないぞ!」

「なんという化け物。《暴食》よ! 空間を食べなさい」


 続けての攻撃に備えるために、闘気を纏って構える。


 だが、《暴食》のルピナスは、空間に自らの体を入れて逃げた。


「なっ! そんなこと許さないぞ! 全力・次元斬り」


 空間を切り裂く一撃に、手応えを感じる。


 だが、仕留め損なった。


「くっ、逃したか」

「ダン!」

「エリーナ」


 俺は膝をついて礼を尽くす。


「倒したのですか?」

「申し訳ありません。取り逃しました。リュークと約束したのに情けない」

「そうですか、仕方ありませんね。ですが、こちらはどうやら無事に終われてよかったです」


 エリーナの安心した顔を見て、俺は戦いを終えたことで一つの疑問を抱いた。


「こちらは? リュークはどこに行ったんですか?」

「リュークは今も戦っています。この世界を統べる二人の王の一人、天王を相手にしているのです」

「なっ! さっきの化け物よりも強い奴と戦っているって言うのか?」

「ええ。私は、ダンを助けて《暴食》を倒すように頼まれたです」


 リュークが戦っているのに、俺がここで待つのか? ありえないな。


「頼みがあります」

「えっ?」

「俺をリュークの元へ案内してくれませんか?」

「なぜかしら?」

「エリーナ様、私も同じ気持ちです」

「ネズール卿。あなたまで……」

「俺はリュークと共に戦いたい」

「私もリューク様と共に」

「わかったわ。ついてきて」


 俺たちはエリーナに連れられて、帝国の地下ダンジョンへと侵入した。


 エリーナの侍女であり、リュークの妻だと言う兎族の案内で戦場に辿り着いた。

 

 空間が歪んで場所は、もう一つの帝国が広がっており、カウサル帝王に羽の生えた化け物と、シド宰相に羽の生えた化け物が、リュークに襲い掛かろうとしていた。


「ハヤセ」

「わかっているっす! いくっす!」

「ナターシャ」

「わかって〜います〜。タシテ様〜頑張って〜ください〜」


 俺と同じことを考えたタシテと目が合う。


「俺はカウサル帝王をやる」

「私はシド宰相に用があります」


 俺たちは、武器を構えて化け物の前に立った。


「ダン! タシテ君! どうして君たちが?」

「リューク、悪い。《暴食》のルピナスを逃した。だから、エリーナに頼んで、ここまで案内してもらったんだ」

「リューク様、申し訳ありません。リューク様が足手纏いと思われているのもわかっています。ですが、私は初めてリューク様の望みに逆らわせていただきます。私はあなた様のお荷物ではない! 私も戦えます!」


 なんだよ。


 ずっとリュークの後に控えてたくせに、根性あるじゃねぇか。


「そう言うことだ、リューク。こいつらの相手は俺たちがする。お前が相手をする敵がいるんだろ?」

「そうです。あの玉座に座る奴を倒してください」


 ふと、姫様を見れば、笑顔で親指を立てくれた。


 久しぶりに姫様の笑顔を見た気がする。


 なんでだろうな。


 昔に戻ったような気分になる。


「やってやろうじゃねぇか! 帝王カウサル。あんたは俺が倒す!」

「シド宰相、ネズールの恥はネズールが取ります」

 

 俺にはハヤセがいる。

 姫様が幸せそうで何よりだ。


 さぁ、リュークのために道を開いてやるよ!

 

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