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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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天魔対戦 12

 ボクは、フリーに案内されてジュリアとティアと共に帝都の上下水道が流れる地下ダンジョンへと入っていく。


 地上はダンに任せて、ルピナスの相手をしてもらった。


 汚染された匂いがキツく。

 

 ネズミの魔物や、スライムなどの汚染された環境でも生きていくことができる魔物たちが蔓延る。


「こっちです」


 フリーは、一度だけしか通っていないのに、よく覚えているものだ。

 剣帝アーサーで、今年度の剣帝フリー。

 ダンとの決勝戦では、あのダンを倒すほどの実力者だ。


 バルニャンについていきながら、彼女のことを思い出すが、正直な話を言えば、あまり記憶にない。


 ボクは探索魔法を発動して、現れる前に魔物を全て眠らせて討伐していく。


「魔物が出ませんね」

「ああ、ここまで静かなダンジョンは初めてだ」


 二人に説明するのも面倒なので、ボクは探索とオートマジックアローの説明をしていない。いつもならオートスリープにするが、今は全ての魔物を殺しておく。


「私たちが進行している間も、ここまでもっと魔物は出た」


 フリーも不思議に思っているようだ。


 そのまま魔物に出会わないまま、ボクはバルに寝そべってダンジョンを進んだ。

 先が下水道の独特な臭い匂いがなくなって、壁は白くなり神殿のような厳かな雰囲気へ変わっていく。


 こんな場所に来たことはなかったので、ボクとしても初めての領域に入っていく。


「どうしてでしょうか? 空気が変わってから、とても体が軽く感じます」


 聖女であるティアが反応を示し、体の軽さを告げる。


「ああ、私もそうだ。先ほどから体が軽くて、特に足に装備している聖なる武器に力が漲っていく感覚を覚える」


 二人の反応から、ボクはここがどういう場所なのか、理解できたような気がする。


「フリー。君は何か変化はあるか?」

「ない。だけど、しんどくもない」


 フリーは自由の民だ。


 どちらにも属していない存在として言えるのかもしれない。

 それに対して、ボクは先ほどから体の重さと怠さを感じる。


 まるで、怠惰に侵食されていた時のような怠さを感じてしまう。


「この扉の向こうに老人がいた」

「そうか、案内ご苦労様。ここからは入らなくても良いがどうする?」

「……入る」

「いいのか?」

「エリーナ様の代わりにリューク様を守るのも私の役目」

「わかった。よろしく頼む」

「承知」


 フリーは言葉少なくはあるが、しっかりと自分の意思を伝えてくる。


 ボクは、三人の女性を引き連れてダンジョンのボス部屋へと入っていく。


 扉を開くと、美しい真っ白な世界に玉座に座る老人がいた。

 背中には羽が生えており、頭には輪っかが見える。


 何よりも、放つ雰囲気が今までのどんな存在よりも、異質であり。

 そうだ。


 ボクは一度だけ、この感覚を味わったことがある。


 魔王……。


「ほう、現状でここにくるものたちがおったか」


《侵略を開始しますか?》


 やっとボクは戦うべき相手を見つけることができたようだ。


「あなたにも表示されているのでしょうね。改めて自己紹介をさせていただく。レベル5静かな眠りダンジョン、ダンジョンマスターリュークです」

「レベルが5程度でここに来たのか? 小物に興味はない。レベル8を超えたら、また来るが良い」

「そうも行っていられない状況でして、地上の侵略を止めていただけるのであれば、引き下がりますが」


《目の前の玉座に、天上ダンジョンのダンジョンマスターがいます》


 地下にあるのに天上ダンジョンとは……。


 魔王に匹敵する威圧に、レベル8を超えてやってこいという傲慢さ。


「できぬな。忌まわしき魔王の奴が領土を侵略してきたのだ。ここからは人間など、どうでも良い。我と魔王の盤面を揃える必要があるのでな」

「そちらにもそちらの理由があるということですね」


《侵略を開始します》


「挑発するか!!! 小童」


 叫びと威圧で、ティアが意識を飛ばす。

 ボクはティアを抱き留め、ジュリアとフリーも苦しそうに膝を負った。


 強い。


 どこまでも化け物というやつは存在するんだな。

 ボクは最強じゃなくてもいい。

 ダンが、他の化け物が最強を名乗るがいいさ。


 だけど、ボクの大切な物を壊すなら、それに抗うことはしよう。


「貴様如き通人族がいくら我に挑もうと意味などないとなぜ気づかない? 我は最強。直接戦えば魔王ですら相手にならぬ。この鬱陶しいシステムがなければ、もっと早く魔王を殺せていた物を」


《静かな眠りダンジョンレベル5 対 天上ダンジョン9 へ向けて侵略戦が合意されました。ここからは二つのダンジョンの空間を繋げます。それぞれのダンジョンは、己のDMPを使って敵ダンジョンコアを奪取した方の勝ちとなります。ダンジョンマスターの参入は可能です。また、DMPがある限りダンジョンコア以外の全ては復活可能です》


 挑発に応じた化け物が侵略戦に同意した。


「いいだろう。身の程を知らぬ通人族よ。貴様に見せてやろう。最強の力を、我は神の子、天王オーディアヌスが神罰を与えてやろう」


 ボクは魔王と戦う前に天王と戦うことになってしまったようだ。


 

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