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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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悪童キーロ 終

 ボクはエリーナの手をとって、バルニャンの上で踊り始める。

 バルニャンは、ボクの動きに合わせて足場を作ってくれた。


「なっ! なんだお前は?!」

「うん? ボク? ボクのことは気にしなくていいよ。エリーナ、君は綺麗だ」

「まぁ、リュークは本当のことを言ってくれるので嘘ではありませんよね?」

「もちろん」


 ボクらは《欺瞞》のキーロを相手にすることなく、クルクルと空の上で踊り続ける。


「ばっ、バカにしやがって! 俺を誰だと思っている《欺瞞》のキーロだぞ!」


 手を叩くと、それまで海だった場所が景色を変化させて溶岩のように状況が一変する。


「溶けて死んでしまえ!」

「それがお前の属性魔法か?」


 ボクはキーロが動く前に、キーロの目の前で停止する。


「なっ!」


 ボクは奴の目の前で指を鳴らす。

 その瞬間に溶岩だった場所は、一瞬で海へと戻る。


「タネは明かされた。エリーナ」

「はい! 氷よ」


 海だった場所はエリーナのコキュートスによって氷の世界へと変わっていく。


「なんなんだお前たちは!」

「ジュリア」

「はい!」

 

 聖なる武器であるブーツに力を込めたジュリアが、ボクが作り出したバルニャンの階段を駆け上がって空高くからキーロへ攻撃を放つ。


「流星よ!」


 飛来するジュリアの飛び蹴りがキーロの額を打ち抜く。

 氷によって動けなくなったキーロは避けることができないままジュリアの攻撃を受けた。


「グハッ!」

「まだよ」

 

 さらに、額を打ち抜いたジュリアはキーロを足場にして、加速していく。


 キーロの全身を蹴り抜いていく。


「うぐうう!!」


 キーロがなす術なくジュリアの攻撃を受けて氷に縛り付けられた足場を破壊して、キーロが倒れていく。


「お見事」


 ボクの横へと着地したジュリア。

 

 これで倒せた訳ではない。種明かしとして十分だろう。


「ジュリア」

「お手を煩わせました」

「ボクはこの場を離れるよ。帝都の方が怪しいようだ」

「アンガス! レベッカ!」


 ジュリアは二人の名を呼んだ。


「ジュリア様! どうされました」

「《欺瞞》のキーロは戦闘力が低いと判断します。私たちは伝説と《欺瞞》という言葉に踊らされていました。彼はすでに戦える状態ではありません。ですから、巨人族の伝説は、アンガス。あなたが終わらせなさい。そしてレベッカ、見届け人になってあげてください」

「ジュリア将軍はどこにいくんだよ?」

「私はリュークと共に帝都に向かいます」

「帝都?」

「ええ。どうやら今回の事件は全て帝都にいるシド殿に聞かなければいけない事情が含まれているようです」


 ボクが出したヒントを、しっかりとジュリアは把握したようだ。


 そう、《欺瞞》のキーロ。


 奴はただ囮に過ぎない。

 封印されている間に力のほとんどを失っていた様子で、毛を刈られた今ほとんど力は残されていない。


 アンガスはただ作戦にハマっただけだ。


 冷静に対処すれば、問題なく倒すことができる。


 氷の海に寝転んでいるキーロを見下ろして声をかける。


「貴様は元々死に場所を求めていたんだな。伝説の巨人《悪童》キーロよ」


 ボクの発言にキーロは視線を向けるだけだった。


 だが、アンガスもボクの言葉で伝説は本当であり、キーロは魔王によって改変された存在であることが窺える。

 だが、魔王が帝国まで簡単に来れた理由は、他にもあると言うことだ。


 その鍵を握る人物は帝都にいる。


「さて、行こうか? 帝国に決着をつけるために」

「お力をお借りします」


 ボクはジュリアとエリーナを両腕に抱いて、荷馬車へ乗り込んだ。



《sideテスタ・ヒュガロ・デスクストス》


 五十万の巨人と魔人の軍勢は容易に相手にできるものではない。


「ディアスボラ!」

「はっ!」

「我は敵将を討ちにいく。道を作れ」

「なんと無茶を! ですが、仕事とあらば!」

「仕事だ!」


 戦場とかした国境では敵味方入り乱れる中で、どこから矢や魔法が飛んでくるのかわからない。

 いくら注意していても不意を疲れる。


「テスタ! 私もいくぞ!」

「王自ら出向いてどうなる?」

「この戦いに決着をつける」


 意思の強さを表すユーシュンの瞳にテスタは目線を逸らす。


「好きにしろ。着いて来れるならな」

「ガッツ!」

「おう! 朕を守れ!」

「任されよう」

「セルシル! ガウェイン様! 指揮をお任せします!」


 ユーシュンの声に二人の武将が答える。


 この戦いはこの乱戦を制した国が大きなアドバンテージを得られる。

 それは帝国北西部で起きた大爆発があるからだ。

 帝国が押し切られれば、帝国は新たな安住の地を手にいれ。

 王国が押し返せば、帝国は自国の問題を解決するために奔走しなければいけなくなる。


 これは王国と帝国の戦争を決定付ける重要な場面になったと言うことだ。


「皆様に加護を!」


 後方支援として控えていたチューシンが、前線にやってきて我らを回復する。


「いくぞ!」


 ディアスボラが糸のトンネルを作り出す。


「片道切符になります。帰りは勝たなければ帰れないと思っていただきたい!」


 戦場を抜け切った先の殿をディアスボラが務める。


 そして、酒を飲みながら座るイシュタロスナイツ第一位アウグス・バロックク・マグガルド・イシュタロスと目が合った。


「ほう、俺までたどり着いた者がいるか」

「我はデスクストス公爵家、テスタ・ヒュガロ・デスクストス! 王国の総指揮官を務める者なり!」

「くくく、このご時世に名乗りたぁお前バカだろ! だが、嫌いじゃないぜ! イシュタロスナイツ第一位アウグス・バロックク・マグガルド・イシュタロスだ。 その心意気に免じて相手してやろう」


 巨大な神槍を携えたアウグスにテスタは鉄の剣を折る。


「はっ?」

「何をしているテスタ!」

「武器を手放して放棄するつもりか?」


 ユーシュンとアウグスが驚いた声を出す。


 だが、次の瞬間、テスタの周りに緑色の魔力が溢れ出す。


 それは蛇のような形を取り、鉄の剣だった物にまとわりついて一振りの剣を作り出す。


 誰も見たこともない緑色の剣。


「ほう」

「お前の槍が羨ましいな」

「ならばくれてやろう! デストロイ!」

envyエンビ


 剣になった蛇は迫り来る破壊の力を呑み込んだ。

 

「なっ!」

「ウェ?!」

「マジかよ!」


 三者三様。


 アウグス、ユーシュン、ガッツ。


 三人が驚きを口にする。


「お前の力を貰い受ける」


 次の瞬間、破壊の力よりも遥かに大きな神の槍は、悪魔の槍となってアウグスへ放たれる。


 跡形もなく、アウグスと呼ばれた者の存在を消滅させて、テスタは前のめりに倒れた。


「テスタ!」

「力を使い過ぎた。しばらく冬眠状態に入る。ディアスボラ! 我を自陣へ」


 それだけを告げるとテスタは目を閉じた。


「失礼」

「触るな! この役目は朕の役目だ。王国の英雄を王の手で連れ帰る。ディアスボラといったな。貴様は道を作れ。ガッツ。お前は我らの護衛だ」

「……承知」

「おうよ!」


 我は薄れゆく意識でユーシュンに抱き上げられて意識を手放した。

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