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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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悪童キーロ 4

 ボクはクウが入れてくれたお茶を飲みながら、クロマに団扇で煽いでもらって涼しい風をあびる。

 海に来るのはいいんだけど、潮風はお肌に良くない。

 

 日差しが強くて、ボクはこんなところで絶対に戦いたくないね。


 海の中では、おっさん同士が戯れあっている。


「大迫力ですわね」

「エリーナも興味あるの?」

「どうでしょうか? 昔は戦いになれば自らと比べていたので興味がありました。ですが、リュークに自分の役割を教えてもらってからは、そんなことに囚われないようになりましたわ」


 アンナが入れてくれた飲み物には、エリーナが氷を落として冷たくしてくれる。


「自分の役割?」

「ええ、私は飾りです。飾りを上手く演じることこそが役目なのだと理解しました」

「飾り?」

「はい。王家として生まれ、王国を象徴する飾り。そして、戦闘になれば王族としてリーダーを任されますが、それもまた名ばかりの飾り。そして、今はリュークの隣で美しく彩る飾りですわ」

「君はそれでいいの?」


 ボクにとっては、久しぶりにエリーナと語り合う時間。昔から、エリーナは優秀でありながら、どこか抜けていた。


 そこが可愛いと思えるようになったから受け入れられたわけだけど、今のエリーナはどこか垢抜けたように思える。


 本来の彼女なら王宮を飛び出して、ボクと一緒に帝国漫遊など選ばなかったかもしれない。


「もちろん。人にはそれぞれ役割がある。私は自分という人間を知った。だからと言って自分を蔑んだりはしません。私は私のままリュークに愛される。そんな私でいたいから」


 エリーナの言葉に自分という人間に自信はない。

 だけど、自分という人間を嫌ってはいない。


 いいね。


 ボクは怠惰で彼女たちがいなければ、何もしたくない人間だ。

 そんなボクと飾りだとハッキリ言って、それでもボクに愛されると宣言するエリーナは、とても素敵な女性だと思える。


「さて、それじゃボクの大切なエリーナに質問だ。《欺瞞》のキーロとはどんな人物だと思う」


 エリーナたちもアンガスの歴史を聞いていた。

 ジュリアは賢く真面目だ。

 アンガスも豪快な雰囲気はあるが、根は真面目だと思う。


 同じく真面目ではあるが、視点が違うエリーナからはどのような雰囲気に見えるのだろうか?


「そうですわね。あの毛むくじゃらな姿は、表情や動きを隠すためでしょうか? それに無邪気そうな言動や口調は、本来の性格と乖離があるのかもしれませんね」


 彼女はとてもよく人を見ている。


 決して飾りで終わるような女性ではない。


「お見事。なら、君がもし《欺瞞》キーロなら、どうする?」

「そうですわね。もしも、あれが擬態ギタイとするならば、まずは相手を自分の得意なことへ引きずり込みます」


 エリーナが解説しているのと同じように、海の中にいたキーロにアンガスが飛び込んで行った。

 そして、アンガスが優勢に見えた戦いは、次第にキーロの戦術がハマり出す。


 海によって足場を取られたアンガスが、身動きを制限され始めた。


「ぐっ! 小癪な!」

「巨人族はバカばっかりだな。作戦っちゅうもんを考えねぇ」

「アンガス殿を援護するのだ! 放てー!」


 ジュリアがアンガスを援護するように魔法を放ってキーロを牽制するが、キーロはアンガスを盾にするように魔法を防いだ。


 すでに見えない海の中で、アンガスの足はキーロの毛に足が絡みとられていたようだ。


「エリーナの行った通りだね。海に引きづりこんで、動きを制限させたようだ」

「ふふん。やっぱりですわね」

「次はどうなると思う?」

「そうですわね。まだ手の内を見せるには、戦局が芳しくはありませんので、見極めるために一発どでかい一撃を放ちますわ」


 エリーナは氷の術師だ。

 全員を凍らせるような一撃を放つのだろう。

 キーロは巨大なアンガスを軽々と持ち上げて、器用に毛をロープのように使ってアンガスを投げ飛ばした。


 それはジュリアによって残されていた帝国兵の上に落とされた。

 さらにキーロは、海の水を持ち上げるように津波を引き起こして地上にいる帝国兵を襲わせる。


 ボクらがいる場所は少し離れているので問題ないが、戦場と化した砂浜は一溜まりもない。

 

 立っていられたのは遠距離支持を飛ばしていたレベッカと、ジュリア。それに数名の帝国兵だけだ。


 ソレイユとゼファーに、北西と帝都の調査として10000人を向かわせているので残された2000人は半数以上が戦闘不能になったことになる。


「またまた正解だね。それじゃ、あの《欺瞞》のキーロを倒す手段はあるかな?」

「う〜ん、それは難しいですわね。ハッキリ言えば、戦い方は擬態していても能力は未だに使っているように見えません。どのような能力があるのかによって、戦い方は変わりそうですわ」

「情報不足ということか、よし。ここまで相手の分析したご褒美だ。エリーナにヒントをあげよう」


 ボクはバルニャンを戦闘スタイルにして、キーロの毛を刈ってくるように指示を出す。


「(^O^)/」


 バルニャンは楽しそうに向かっていく。


「うん? なんだお前は? なっ! 俺の毛を!」


 バルニャンは両手に持っている剣を使って、キーロの全身から毛を刈り尽くした。


 全身の毛をかられて裸になった巨人族が姿を見せる。


 意外にもほっそりとした美男子が姿を見せた。

 もっと汚らしい相手かと思えば意外な見た目をしていた。


「うむ。バルニャンご苦労様」


 毛を刈り取ったバルニャンが帰還する。


 いつものクッション形態になったので、ボクは椅子から立ち上がってバルニャンに乗り込んだ。


 そのまま空を飛んでキーロへ近づいていく。


「エリーナ、どうだい? 彼を見て」

「そうですわね。やっぱり能力は分かりませんが、何年も封印されていたわりに綺麗なお顔をされています」

「うん。本当だね。どうやらそこに秘密があるのかもね」


 さて、ボクはアンガスをジュリアを見る。

 戦闘ができそうな帝国兵は三人だけ。


 他の者たちはキーロに対抗できそうな感じはしない。

 どうなるかな? それにボクはミニミニバルの情報で、ダンがハエに勝利したことを察知した。

 

 だが、帝都の方はだいぶ怪しくてなってきた。

 それにテスタ兄上はいよいよ。


 どこもかしこも大変そうだね。

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