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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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悪童キーロ 1

 ボクは北西部から伸びた海を目指しながら、アンガスの捜索を行なった。

 捜索といってもミニミニバルニャンを大量に作り出して、探索魔法の範囲を広げただけだ。


 普段は、ドーム上に探索魔法の範囲を広げてオートスリープで敵を倒すように魔法を発動している。

 今回は12000人の帝国兵がいるから、彼らを守る必要はないよね。


 逆にボクが帝国兵に守られて、馬が引いてくれる荷馬車に乗って、魔法を発動していた。


「そんなことまでできるんだな」

「無属性魔法の可能性は無限大だからね。ボクの師匠の受け売りだけどね」

「良き師匠を持ったんだな」

「そうだね。ボクにとっては魔法の師匠はマルさん一人だけかな」


 シーラスは先生ではあるけど、魔法を習ったという覚えはあまりない。


「どうやら網にかかったようだね」

「アンガス様を見つけたのか?」

「ああ、それに北西部で誰かが戦っているようだ」

「戦う? いったい何が起きているんだ?」

「さぁね。それを調査するのがボクらの役目だ。タシテ君もそのためにナターシャを連れて、この陣を離れたわけだしね」


 帝国の草と連携を取るためにタシテ君はボクらとは別行動を取るために離れて行った。

 元々、帝国陣営にはかなりのネズール家が潜んでいるそうだ。


 タシテ君がいつもどこから情報を手に入れるのか不思議だったけど、協力者を様々なところに潜ませているんだね。


 それを理解し合う彼ら独自の伝達手段を持っているそうだ。


「とにかく今はアンガス様と合流だ」

「ああ、話した通りで頼むよ」

「回りくどいことをしなくてもアンガス様はわかってくれるぞ?」

「そうかな? 帝国の人たちってどこか戦闘的っていうのか、力を示さないと認めないって風習があるよね。ジュリアもそうだったでしょ?」

「む〜、それは否定できない」


 今のボクはアンナに膝枕をしてもらって、ジュリアと話をしている。

 エリーナは退屈だと先ほどからボクが持ち込んだ恋愛小説ばかり読んでいた。《帝国のジュリエッタと王国のビュークイズの悲恋》という悲しい話だ。


 ボクは悲恋にしないために頑張らないとね。


「見えてきたね」


 アンガスは巨人族で、普段から大きい。

 だが魔力を高めることで、さらに巨大化できるという特殊能力を持つ。


「これは! ジュリア様ではありませんか?! どうしてこのようなところへ? 皇国との戦争はどうされたのですか?」

「アンガス。今は未曾有の危機に瀕しております」

「むむ、確かにあの大爆発は帝国始まって以来の事件でしたですが、私も下手人を追っている身として、どちらを優先すれば良いのか悩んでいたところです」

「その下手人ですが、あの馬車ではありませんか?」


 そういってジュリアが示したのは、ボクが乗っている荷馬車のことだ。


「なっ! 確かにあれはワシが追いかけていたものに間違いない! ジュリア様が捕まえてくれたのですか?」

「実はあれに乗っていた人物たちが今回の爆発犯を見たというのです!」

「なんと帝都に忍び込みワシから逃げる際に、そのようなことを……。ジュリア様一度、馬車に乗っていた者に合わせてはもらえないでしょうか?」

「もちろんです」


 ジュリアの呼びかけに応じて、ボクはバルニャンのお面をつけたまま荷馬車を降りる。アンガスとは、帝都に向かう際に女装して。

 そしてアレシダス王立学園にジュリアを迎えにきた際に顔を合わせているので、顔を見せることはできない。


「なっ! ふざけているのか?」

「いいや、俺は冒険者バル。これが正装でな。素顔を見せるつもりはない」

「むむむ、このような者を本当に信用なさるのですか?」

「もちろん、彼の言い分だけでは信用できません。ですが、帝国流の歓迎を彼は受け入れるといっているのです」

「ほう〜ならば」


 アンガスはジュリアの言葉を聞くと同時に、魔力を高めて十メートルの大きさまで体を膨れ上がらせる。


「冒険者バルよ。貴様が帝国の流儀に則った勝負を受けてもらう。ワシからの一撃に耐えられたなら、貴様を認めよう。だが、逃げたり防げなかった際には貴様を認めん」


 ボクの身長は190センチぐらいはあるのに、10メートルのアンガスは遥か高みから拳を振り下ろす。


「バルニャン」


 ボクは体に魔力を纏わせて透明なバルで全身を覆う。

 レアメタルバルニャンに比べれば、大した防御ではないが、ないよりはマシだ。


「行くぞ!!!」


 振り下ろされるアンガスの太い腕から放たれる一撃がボクを襲う。

 だが、ボクが魔力を高めて迎え撃とうとしたところで、アンガスが拳を止める。


「うむ。どうやら本気のようだ。悪かった冒険者バルよ。私の一撃を喰らえばいくらお主が強者でも死んでしまう。覚悟を問うための試験であった。貴様は覚悟を示した。このイシュタロスナイツ第二位アンガスが認めよう」


 突き出されたアンガスの拳。

 ボクはそれに対して自分の拳をぶつけて、アンガスを宙に浮かせる。


「なっ!」


 帝国のルールでは、互いに認め合うために拳を交える。

 だから、ボクは12000人の兵士を組み手をしたんだ。

 アンガスは拳を止めたが、ボクは迎え撃って拳を振り抜いた。


 尻餅をついたアンガスが驚いた顔を向ける。


 ジュリアが懸念していた通り、どうやらアンガスは話し合いでも良かったようだ。

 ボクは元々拳をぶつけ合って勝つもりだった。


「見事!」


 倒されたアンガスの方が、驚いた声を出しながらも認める言葉を発する。


「アンガス殿も素晴らしい拳圧だった。止めてもらえなければ、どちらかの腕が使い物にならなかっただろうな」


 負けるつもりはないことを伝えておく。


「ガハハハハ、面白い! 気に入ったぞ! 北西の犯人を教えてくれ!」


 アンガスたち十名を追加して、食事会を開くことした。互いに情報交換が必要だと思ったからだ。


 アンガスは、ボクらを追いかけながらも各地を回ってシドからの依頼をしていたそうだ。

 確かにイシュタロスナイツ第二位が、ただ追っ手を探しているだけというのはおかしいと思っていた。


 そちらにも思惑があったようだ。


「なるほど毛むくじゃらの巨人化。ワシの知る限りでは封印されし巨人《欺瞞》のキーロしか思いつかんのぅ〜」

「《欺瞞》のキーロですか?」


 食事をしながら、アンガスが語ったのは巨人族の昔話だった。

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