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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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帝国潜入 5

《sideダン》


 吹き飛ばされた衝撃で、リューククラスの強者であることは伝わってくる。

 だから、俺は一人じゃ勝てない。


「ハヤセ」

「わかってるっす!」


 ハヤセは聖女ティアが張った結界の中から魔導銃を放って俺を撃った。


「なっ! なぜ味方を撃つのですか?」


 敵もハヤセの行動を理解できなくて、ハヤセを攻撃しようとした手を止める。


「キタキタキタ!!!」


 俺はハヤセから送られてきた愛情に体を強化させる。

 絆の聖剣が反応して、俺の体に力が注がれる。


「なんですか? 急に戦闘力が跳ね上がったですって!」

「むむむ? なんだ今のは?」


 敵だけでなく、カウサル帝王もハヤセの行動について考えているようだ。


「そんな余所見をしている余裕はないぞ!」

「ふん! その程度の強化で!」


 俺の全身が光に包まれて、《暴食》のルピナスへ迫る。


 確かにリューククラスの強さを感じるが、リュークじゃない。

 リュークなら、最初の一撃で俺は意識を奪われていた。

 それだけで《不屈》も何もなく、頭を踏み潰されて殺されていたはずだ。その時点でリュークより弱い。


「ぐっ! あなたはなんですか? 先ほどとは手応えが明らかに違う」

「俺か? 俺は絆の聖騎士だ!」

「絆の聖騎士? ふん、勇者でないのならば敵ではありません! 私は勇者を殺して復讐をするのです!」


 勇者? 勇者はカウサル帝王だ。

 こいつの狙いはカウサル帝王ということか? 俺が視線を向けると、カウサル帝王は知らぬ様子で首を振る。


「何を余所見しているのですか?!」


 俺の背後に回って背中へ一撃を加える《暴食》のルピナス。

 だが、ハヤセから与えられた強化に比べれば、大した痛みは感じない。


「それがどうした?」


 俺は殴れた背中の衝撃を受け流しながら切り返した。


「くっ! なんなのですか? あなた攻撃を喰らっているはずなのに、まるで効いていように感じません。むしろ、別の感触として受け取っているようにすら感じます」

「ふん、貴様如きが与える痛みなど片腹痛い。ハヤセやリュークがくれる物に比べれば、ハエだ。貴様の攻撃などハエ以下だ」


 俺は《暴食》のルピナスと距離をとり、カウサル帝王の横に並び立つ。

 絆の聖剣が発動すれば、《暴食》のルピナスだろうと大したことはない。


「見事だ。絆の聖騎士殿よ。魔王の配下を圧倒しておるぞ!」

「ありがとうございます。帝王様。ですが、油断はされませんようお願いします」

「うむ。勇者が舐められたものだ。次は我の力を見せてくれよう」


 帝王様の下へ戻った俺をあいつは追っては来なかった。


 だが、その体を震わせて拳を強く握っている。


「貴様! 貴様は今、私をハエ以下だと言ったのか?」

「そうだ!」

「調子に乗るなよ! 通人風情が!!! 私は魔王様に生み出され、魔王様より特別な力を授かった《暴食》のルピナスだ! それを貴様如きがハエ以下だと! いいだろう。貴様は絶対に殺して食べてやる! もう許しませんからね!」


 それまで体を震わせていた《暴食》のルビナス魔力を高め始めて、体を変化させていく。


「あれは! 勇者の剣よ」


 カウサル帝王が光の斬撃を飛ばして、《暴食》のルピナスを倒そうするが、変態を開始した。

 《暴食》ルビナスの体は巨大なワニを思わせる口が腹の部分に出来上がり、その体は巨大な化物へと変貌する。


「ふふふ、無粋ですね。人がお色直しをしているというのに攻撃をするなど。まぁいいでしょう。前食としては美味しくいただけました」


 カウサル帝王が放った一撃を食べたと告げる《暴食》のルピナス。


「さて、もうあなたは死になさい」


 ルピナスが、魔力を圧縮させた光線を出して、カウサル帝王の胸を貫いた。


「ガハッ!」

「ふん。オイボレ、あなたはこの戦場に相応しくありません。退場願いますよ」

「カウサル様!」

「良い。我のことは放っておけ。奴を! 奴を倒すのだ」

「わかりました!」


 俺はカウサル帝王に視線を向けるよりも《暴食》のルピナスを相手にする方を選んだ。


「皆さんは私が守ります」


 後ろから聖女ティアの声が聞こえてくる。

 心強い、二人を守る。それが俺の使命だ。


 勝てるか勝てないかじゃない。


「今ここで二人を守るのが俺の役目だ」

「何を言っているのですか? あなたは私に食べられるのですよ!」


 巨大な口が広げられて高速で向かってくる。

 聖女ティアが俺に身体強化の魔法をかけてくれた。


「なぁ? 俺を馬鹿にしているのか?」


 後頭部と尻へ、ハヤセの超強力魔法銃が撃ち込まれる。


「ぐっ!」


 ハヤセはわかっている。

 これまでよりも魔力が込められた超強力バージョンは、俺の尻に風穴が開いちまってるぜ。


 尻に二つも穴はいらないんだけどな。


「最大出力だ。受け取れよ」


 あの時、リュークが黒龍を吹き飛ばした威力の数十倍の力が絆の聖剣に込められている。


 ハヤセの気持ちが俺を強くする。


「キエエーーー!!!!」

「ウオォーーーーー!!!」

 

 迫るルピナスに、光の斬撃が奴の大きく開けられた口を切り裂いた。


「どうだ?!」


 真っ二つに切り裂いたルピナスをみようと振り向いた俺の目の前に上下から口が迫っていた。


「甘いですよ!」

「なっ!」

「確かに素晴らしい攻撃だ。吸収しきれなくて体を切り裂かれてしまいました。ですが、裂かれた物は元に戻せばいい。簡単なことです」

「ぐっ!」


 食われる! 俺は聖剣の力で抗っているが、奴の力の方が強い。

 このままでは……。


「魔王の手下と言っても幼い物だな」


 急に巨大な口から解放されて、外へと放り出された。

 

 見上げると、心臓を貫かれて死んだはずのカウサル帝王が、勇者の剣を持ってルピナスの首を刎ねていた。


「なっ! なぜ貴様が生きている!」

「その答えに応える意味はない」


 そのままカウサル帝王様は、《暴食》のルピナスを細切れにして切り裂いた。


「肉片一つすら残してはやらん。ブレイブストライク!」

「わっ私がこんなオイボレに!!!」


 巨大な魔力が勇者の剣に込められて、《暴食》のルピナスを消し飛ばした。

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