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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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帝国潜入 4

《sideダン》


 カウサル帝王の護衛として駆り出された。


 王国からの潜入者だとバレるわけにはいかないので、俺としては緊張の連続だ。


 なるべくカウサル帝王に近づかないようにして、先頭を走り続けている。


「ダン先輩、大丈夫っすか?」

「何がだ?」

「顔がいつもよりも緊張して怖っす」

「そうか?」


 自分でもいつもと違うことはわかっているが、これはどうしようもない。

 俺にかかる責任の重さに、押しつぶされそうになっているんだから。


 王国を守るなら、帝王は一番に倒さなければいけない相手だ。

 だが、あの爆発の原因を突き止めることも大事だと思う。


「う〜ん、確かに緊張はしている。だけど、リュークからのミッションはやり遂げるつもりだ」


 そうだ。俺のミッションは、ハヤセと聖女ティアを守ることだ。そのミッションだけはやり遂げる。


「ユーシュン王様の仕事もやって欲しいっす。だけど、どうやら帝国の状況は随分と変わってしまったようっす」


 ハヤセの情報収集能力は学生の頃よりも遥かに高くなっている。


 ユーシュン王の元で諜報活動をしていた時期があると打ち明けてくれた時は驚いた。


 だが、その力が今の俺たちの役に立つなら関係ない。

 

 秘密や言えないことなど誰でもあるものだ。


 夜になってテント張っていると、カウサル帝王が近づいてきた。


「聖騎士殿」

「はっ!」


 俺は礼を尽くして頭を下げる。


「良い、他国の騎士だ。最低限の礼儀を守ってくれればな」

「はっ。どうかされましたか?」

「うむ。貴殿は聖なる武器を所持している。その武器の力を把握しておきたいと思ってな。どんな力を宿しているのだ?」


 カウサル帝王は、聖なる武器の一つ《勇者の剣》を持っているとリュークから聞いた。


 なら、俺が隠す意味はない。


「私の剣は絆の聖剣と呼ばれ、《不屈》の能力を授かっております」

「《不屈》? それはどのような力なのだ?」


 自分でもどこまで説明をすればいいのか悩みながらも、正直に話すことにした。


「私が守りたいと思った相手と心を通わせることで、力を得られる能力です」

「ふむ。なるほど対象限定型か、そしてそちらのお嬢さんを守る際に力を発揮するというわけか」

「はい!」

「君たちは、セットで使う方が良さそうだ。ありがとう。どんなことになるのかわからぬが、頼りにさせてもらう」

「ありがとうございます」


 カウセル帝王はどこか、ガウェイン様と同じ匂いがした。


 懐かしさを感じさせ、それと同時にリュークのようなカリスマ性を持っておられた。ついていきたくなる背中だと思える。


「どうかしたっすか?」

「いや、敵であることはわかっているんだが、カッコいい人だなって思ったんだ」

「そうっすね。私もよくはわからないっすが、カッコいいと思うっす」


 俺たちはカウサル帝王を認めつつあった。

 帝王になられるだけの度量と、強さを感じる強者の風格がある人物だ。


 それから数日の行軍が続いた。

 俺たちは北西部にたどり着いた。

 爆発したのは、魔高炉と呼ばれる各地域のエネルギーを貯蔵させるための装置だ。

 

 大量の魔力を貯められるように作られており、貯められた魔力を各地域に送ることでエネルギーとして使うことができる。


 これが暴走したり、爆発すれば、半径60キロ程度まで被害が広がっていく。

 さらに二次災害で、土や海も魔力濃度が濃くなることで魔物が発生しやすくなり、まともに住める環境ではなくなってしまう。


「それなのに、爆発した割には被害が少ないな。人の気配はほとんどないが、土や海まで被害は及んでいないようだ」

「そうっすね。まるで誰かが爆発を抑え込んだようっす」

「実際に抑え込まれたのだ」

「えっ?」

「どういうことですか? カウサル帝王」


 俺たちの代わりに聖女ティアが、カウサル帝王へ質問を投げかける。


「我が帝国が誇るイシュタロスナイツ第三位と第四位が何者かと戦った際に、魔高炉を爆発させられたようだ。それを抑え込んでくれて、命を失ったのだ」


 カウサル帝王は、魔高炉の周辺を歩いて一つの場所で立ち止まった。


「すまぬな。二人ともこんなところで眠らせてしまって」


 カウサル帝王は悲しそうな瞳をして、数名の従者たちに何かを命じていた。


「イシュタロスナイツのお二人があそこで亡くなられていたのでしょうね」

「……勇敢だな」


 帝国を守るために、己の魔力を使い果たしたのだろう。聖女ティアの祈りによって、二人の冥福に祈りを捧げる。


「おやおや、こちらに魔力を感じて来てみれば、随分と美味しそうな餌が集まっているじゃないですか?」


 突然、息苦しいほどの重圧が体を抑えつけた。


「ぐっ!」

 

 隣でハヤセが苦しそうに膝を折る。

 

「皆さん結界を張ります! 私の側に!」


 聖女ティアの叫びによってみんなが集まっていく。

 だが、俺とカウサル帝王だけが、結界に入ることなく敵を見上げる。


「ほう、私の威圧を受けても立っていられる者が三人もいるとは驚きですね」


 俺と、カウサル帝王。それに聖女ティアのことを言っているのだろう。


 まさか、ここまでの敵が現れるなら、ムーノやフリーにもついてきてもらえればよかった。


「いいでしょう。あなた方三人を順番に美味しくいただくとしましょう! キエエー!」

「カウサル様、まずは俺が相手をします。見ていてください」

「すまぬな。任せよう」


 迫る化け物を俺が迎え撃つ。


 振るわれた爪を受け止めるが、あまりに強い攻撃に吹き飛ばされる。


 《不屈》がなければ、一撃で殺されていた攻撃だ。


「ほう! 今の一撃で生きておられたのですか? あなたやりますね」

「お前は誰だ?」

「私ですか? うむ、一撃を受けとめたご褒美です。名乗って差し上げましょう。私は魔王様第一の配下、暴食のルピナスと申します」


 魔王の配下だと一礼する姿はスキだらけに見える。

 だが、攻撃をすれば殺されるイメージしか持てない。


 こいつは今まで出会った中で、リュークと同じぐらい勝てる気がしない化け物だ。

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