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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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対面

 ボクは皇国陣地から飛び立って帝国陣地の天幕へと降り立った。

 すでに暗くなった陣地は、認識阻害をかけている仮面をつけており、誰にも騒がれることなく降り立つことができた。


 だが、兵士の数も少なく爆発が起きたばかりの陣営とは思えない静けさがある。


「バルニャン。タシテ君たちの居場所はわかる?」


 ボクが探索の魔法を発動すると、相手に気づかれる恐れがある。

 そこで透明なバルを飛ばしてタシテ君たちの居場所を突き止めた。


 バルニャンがタシテ君を見つけたと知らせてきたので。

 

「連れてきて」

「(^O^)/」


 どうやら牢に捕まっているのではなく、普通に客人として天幕を与えられているようだ。


「リューク様。おかえりなさいませ」

「おかえりなさいませ〜」


 ネズール夫婦がバルニャンに乗って飛んでくる。

 さらにクウとクロマも合流して全員が揃う。


「リューク様」


 クウとクロマを抱きしめて、無事を確認する。


「さて、タシテ君。時間がなくなってしまった」

「はい。先ほどの地震ですね」


 タシテ君たちは天幕の中にいたので、爆発は見ていないようだ。


「魔王か、それに連なる者が襲来したと考えていい」

「魔王が!!!」

「帝国陣営はやけに静かだね」

「先ほど本陣を引き払って最低限の兵士だけを残して、ジュリア様は発ったようです」


 ジュリアは戦争よりも自国の民を守ることを優先したんだろうな。

 だが、魔王に連なる者がこちらにきているとするならば、ジュリアが不利だ。


「追いかけるしかないね」

「皇国側はよろしいのですか?」

「ああ、あっちはそろそろオリガが何か仕掛けてくれるだろう」

「ベルーガ辺境伯が?」

「ああ、カリンから書状が送られているはずだからね」


 世界的な情報がないので、わからないがカリンならすぐに動いてくれるはずだ。リンシャンのエナガ隊がいるから最速で連絡をしてくれていると思う。


 なら、オリガは動いてくれる。

 ボクの知っているオリガなら、ボクの求める物も、今後の展開を読んだ先見の明もあるはずだ。


「つまり、ボクがすべきことはジュリアを止めることだ」

「できますか?」

「タシテ君。君の策はここまで組み込まれているのだろう?」

「リューク様のお望みのままに」


 タシテ君が笑顔で膝を降りながら涙を浮かべている。

 彼がどんな思いでボクをここに連れてきたのか知らないけど、きっとそれはボクのためなんだろうね。


「さて、行こうか」


 ボクたちは隠していた荷馬車に乗り込んで、クマに任せていた馬たちと共に空を飛ぶ。普通に走っても追いつけない。


 ここは、クマとバルニャンに頑張ってもらうしかないね。


「軍勢は北西に向かっているはずです」

「ほう、それはどこからの情報だい?」

「私です〜。ちょっと兵士さんに〜どっちに向かったのか聞きました〜」


 ナターシャはこの短い期間で帝国の兵を手なづけたようだね。


「ありがとう」

「はいです〜」


 空をかければ、ジュリアが指揮する軍勢の土煙に追いついた。


「さて、一万ぐらいはいるのかな?」

「そのようです。しかも急ぐ様子で夜間の行軍を続けておられます」

「夜は寝よぅ〜よ」


 ボクは皇国にしたのと同じように、ジュリアを残して全員を眠りにつかせた。



《side ジュリア・リリス・マグガルド・イシュタロス》


 突如、馬車が停車して、私は馬車を降りた。

 夜の行軍が停車して、驚いてしまう。


「どうなっている!?」


 馬車から飛び出してきた私は警戒してなが剣を抜く。


 そんな私の前に美しき男性が舞い降りる。


「リューク?!」

「やぁ、ジュリア」


 先ほどは仮面をつけていて、問いかけても姿を表さなかったリュークが仮面を外している。


「リューク……、やはり全てはあなたの策なのですね」


 帝国は未曾有の危機に直面している。

 それをリュークが成したと言われたなら頷ける。

 それだけの技量を目の前の男性は待ち得ている。


「全てではないけど、ボクの手下がしたことだ。ボクが責任を取らなくちゃいけないだろうね」

「……。確かに、我々帝国は非道な手段を使ったことは認めます。ですが、このような不意打ちで多くの民を……。いえ、私も言えた義理ではありません」


 あの爆発でいったいどれだけの民が死んだのだろう? せっかく戦場にでて家族を守ろうとしていた者たちを裏切る行為だ。


 彼らを裏切り、民を死なせてしまった。

 悲痛な面持ちで、ぐっと言葉を飲み込んでしまう。


 内乱は平定のために必要であると割り切ってきた。

 だが、帝国は強引な手段で判断を間違った。

 

 乱れる帝国に対して、安定している他国へ侵略するなど馬鹿げている。

 そこから生じる様々な問題に直面して、頭を悩ませる日々だった。


 タシテ・パーク・ネズールがもたらした手紙は、私にとって衝撃を与えた。

 さらに帝国北西部で起きた爆発によって、全てを投げ捨てる覚悟ができた。


「今、君の配下は全てボクの魔法で眠らせている」


 12000人の兵がリューク一人に全滅させられた。


「……私よりも高みにいるあなたならそれもできるのでしょうね。ですが、全てが力で解決できると思わないでください! 私は決して心を折ることはない。帝国のために「帝国は滅ぼすよ」」

「なっ!」


 信じられない言葉を聞いて、私は絶句してしまう。


「帝国は滅ぼす。これは決定事項だ。どれだけ帝国の上層部が抵抗しようと、ボクは成し遂げてみせる」


 いつも怠そうに笑っていた彼の顔が、今日は悲しそうに私を見つめていた。


「君にその協力をしてほしい」

「そんなのできるわけがない!」

「できるさ。君は、帝国という国よりも、帝国が統一した民を守りたいと思う人だから」


 リュークの言葉に私はぐっと胸を掴まれた気がする。


 私が選ぶべきは、帝国という国なのか? それともそこに住まう人々なのか? 手紙の内容を見れば、帝国に未来はないに等しい。


 そして、私は今ここでリュークに対して、自分だけでなく兵士たちも殺されてしまうほどの状況に追い込まれていた。


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