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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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蠢く悪意

《side???》


 私は一体? どうしたのでしょうか? 確か体をバラバラにされて死んだはずでは? そうです。


 私は死んだ……、はずですよね?


「目が覚めたようだな」


 声をかけられて、私は目の前にいる人物に視線を向けました。


 悟ってしまう。

 

 私では到底勝てない存在。


 それは絶望であり歓喜。


 至高のお方に出会った喜び……。

 この方のために世界があり、私はこの方に仕えるために存在しているのだ。

 

 自然に私は膝を折って礼を尽くしていました。


「うむ。表をあげよ」

「はは!」

「貴様を回復させるのに少々時間がかかってしまった。記憶はあるか?」

「私が人間に敗北して、バラバラになったまでは」

「うむ。どうやらちゃんと記憶を取り戻したようだな」


 飢餓、狂おしいほどの空腹が私を襲っている。

 なんと卑しいのでしょう。

 至高のお方を前にして、私は空腹で考えがまとまらない。


「貴様には期待していた。だからこそ、普通の創獣ではなく、《暴食の大罪》を付与してやったのにつまらぬ終わりであった」


 空腹を自覚すると気がおかしくなりそうなほどです。

 いっそこの空腹に身を任せて、暴走してしまいたいほどの衝動が頭をおかしくする。


「腹が減っているのだろう。貴様は大量のエネルギーを欲する魔物だ。そこで貴様に任務を与えてやる」

「任務でございますか?」

「そうだ。外はなんとも楽しいことをしているというのに、我はこの地に縛られて動けぬ。忌々しい。貴様を拾いに行ったせいで面倒な」


 至高のお方が怒りに打ち震えて、私の心臓は空腹を通り越して恐怖で身が縮む。


「ふぅ、まぁいい。我が動けぬため、貴様に空腹を満たす機会を与えてやろう。ここより北西の方角に人間が作った帝国という土地がある。そこには様々な種族が住んでいて、我の眷属も封印されている。二体を解放してこい。そのついでに獲物を食い荒らしてくるがいい」


 食事? 好きに食べていい!!!

 それほどの褒美をいただけるなど、なんという褒美なのでしょうか?!


「まっ、誠にございますか?」

「うむ、復活の祝いだ。そうだな貴様に名前をくれてやろう。暴食のルピナス。今日より貴様は暴食のルピナスと名乗るがいい」


 名をもらう!!! 

 

 その瞬間、至高のお方から大量の魔力が私に流れ込み。

 私はこれまで以上の存在へと昇華していく我が身を感じます。


「ありがたき幸せ!」

「うむ。暴食のルピナスよ。いくがいい」

「はっ!」


 力を分け与えられ、私の体が喜びに体が打ち震える。

 羽根を広げて、魔王様の居城を飛び出した。


「ヒャハアアアアアアアア!!!! なんと心地いい。なんと気分がいい。ルピナス。私の名前は《暴食》のルピナスです」


 私は故郷である迷いの森へ降り立ちました。

 そのへんにいる魔物たちを食い荒らして前菜にします。前の時のように逃したりはしません。


 全てが私の栄養になるのです。

 ですが、いつまでもここで前菜を食べているわけにはいきませんね。


 二割ほどお腹が満たされたところで、空へと舞い上がりました。


 王国にも美味しい食材たちはいるようですが、食べるのを我慢して、私は帝国領内へと進んでいきます。


 大量の人々が集まる場所を数ヶ所見つけました。

 飢餓の影響で感覚が鋭くなっていますねぇ〜。

 今の私は知性を手に入れたのです。

 前のように自らの悦に浸って失敗を重ねはしません。

 あれだけの大量の人間がいる中に、強そうな者が混ざっています。


 その場所に近づく前に、私は仲間の解放と、帝国の弱者たちを食い荒らすのです。


「くくく! 到着しましたよ。さぁ〜ここら辺からいただきましょうか」


 魔王様より、いくつかお題をいただいております。

 

 一つ。人間たちをできるだけ多く食べること。

 一つ。魔王様が生み出した創獣を二体解放すること。

 一つ。帝国の王を殺すこと。


 ふふふ、楽しみで仕方ありませんね。


「なっ、なんだ貴様は!」

「私ですか? よくぞ聞いてくださいました。私は《暴食》ルピナスです」

「バッ、バケモノ!!」


 失礼ですね。魔導士のような姿をした人間を美味しくいただきました。


 ふふふ、人間とはなんと美味なのでしょうか?


 一人一人が魔力の味わいが違って、空腹の我が身を満たしてくれます。


「ふぅ、さてこの辺りの人間は全て殺しましたね。さて、次は」

「貴様だな! この辺りを荒らしている化け物は!」


 白銀の鎧にガタイの良い男性に声をかけられましたよ。


「うん? おやおや、こんなところにお強そうな方がいらしたのですね。あなた美味しいそうな匂いがしますよ」

「何を言っている? 私はイシュタロスナイツ第三位、ジャスティス・ゴッドマンである。貴様がこの辺りの住民を殺した魔物だな!」

「ええ、ええ。そうです。美味しくいただきましたよ」

「美味しくいただいた? 食べたということか!?」


 ふふふ、恐怖に歪んだ顔はいいですねぇ〜。


 ああ、心地いい。

 とても心地よいです。


 もっと私に恐怖した顔を見せてください。


「あなたを食べてあげますよ! キエーー!!!」

「聖なる槌よ。我に正義の鉄槌をくださん!」


 くっ! 嫌な感じがしますね。

 あの武器は危険です。

 私にダメージを与えるのに、十分な力を秘めています。


「いいですねぇ〜あなた。とてもお強いようです」

「ふん。化け物に褒められたところで嬉しくなどないわ! この正義の鉄槌を持って貴様を滅する。覚悟をするよがいい。ゴッドスタンプ!」


 強力なエネルギーが含まれた一撃が私をもう少しで押しつぶす。

 

 だが、遅い。


「ふふ、いい! いいですよ! もっと私を楽しませなさい」

「その必要はありません」

「なっ!」


 背後から突然現れた女が私の体を切り裂きました。

 

 巨大な斧を振り回して真っ二つにされてしまいました。


「よくやった! イレイザー君」

「ジャスティス先輩。油断しないでください。魔物ですよ」

「わかっている」

「ほう、切り裂いても油断しない。あなたのお名前をお聞きしても?」


 私は切り裂かれた体を魔王様に与えられた力で繋ぎ合わせます。


「イシュタロスナイツ第四位ヴィッチェ・イレイザーだ。化け物!」

「ふふ、これは骨が折れそうですね」


 強い。


 一人でも私と互角の強さを持つというのに、二人とは厄介ですね。


 どうしたものかと考えていると、良い物が私の視界に写りました。


「いいでしょう。あなた方を食べたかったですが、まずはこの場であなた方を倒す方が先決です」


 私は今まで食べてきたエネルギーを《暴食》の魔力に変えて、黒い太陽を作り出しました。


「なっ! なんて魔力だ」

「先輩!」

「くっ、この場は離れて!」

「いいのですか? 私はあそこの魔高炉を破壊させていただきます」

「なっ!」

「そんなことをすればあなただってタダでは済まないわよ」

「それはどうでしょうか?」


 私は空高く飛び上がりました。

 どうやら、私をバラバラにした男のように、二人は飛ぶことはできないようですね。


 そのまま高々と飛び上がった私は黒い太陽を魔高炉に向かって放ちました。


「イレイザー君。君は逃げなさい」

「いいえ。二人ならば」

「すまないな」

「これも帝国のためです」


 二人は魔力を高めて、爆発する魔高炉の勢いを抑え込んでいます。


「ふふ、とても素晴らしい。あなた方は帝国を救ったのです」


 すでに全身を焼かれて真っ黒な消し炭になった二人に賞賛を送ります。

 流石にこのままこの場に留まっていれば、強い者が来てしまいますね。


「二体を解放をされるのを、先にするとしましょう」


 私は、目的地へ向かって飛び立ちました。

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