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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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割り込み

 ボクらがモースキーに教えてもらった情報を下に、皇国との国境を目指していると歓声が上がり出した。

 馬に揺られて数日で、やっとの思い出たどり着いた場所は、すでに戦場と化していた。


 偵察に赴いたタシテ君の報告では、すでに帝国と皇国の戦いは激化しており戦いは始まっている。


「リューク様」

 

 タシテ君が膝を折ってボクへ礼を尽くす。


「どうしたの?」

「どうか私に帝国への使者をさせていただけないでしょうか?」

「使者?」

「はい。私にイシュタロスナイツ第五位 ジュリア・リリス・マグガルド・イシュタロスの相手を任せて欲しいのです」

「ほぅ〜」


 タシテ君の申し出にボクは眉を顰める。


「何かあるのかい?」

「……こちらを」


 ボクはタシテ君が差し出した書状に目を通す。


「ふ〜ん、なるほどね。ここまで来ることが君の目的だったわけか」

「はい。そして、リューク様を連れてくることが目的でした」

「ボクを?」

「はい! あなたは英雄になられる方です!」


 アツい眼差しを向けられる。

 その瞳に曇りはなく、彼は始めて話した時からずっとこの瞳をしていた。


「面倒だ。ボクはただダラダラしたいだけだよ」

「もちろんです。リューク様の望みのままに。ですが、そのために必要なことであればリューク様はその歩みを止めることがないこともわかっています!」


 タシテ君は、カリンと同じようにボクを働かせることが好きだね。

 一年次の学園剣帝杯の時もそうだった。

 ボクはやる気がないっていったのに、決勝リーグまでタシテ君の力で残ってしまった。今回も、彼の思惑に乗せられることになるんだね。


「いいだろう。タシテ・パーク・ネズール。ジュリアを止めてみろ」

「はっ! 嬉しきお言葉!」

「クウ! クロマ! タシテ君を頼む。もしも、死んだならボクの下へ連れ帰ってくれ」

「「はっ!!」」


 二人が戦闘スタイルであるメイド服へと着替える。


「ありがとうございます!」


 タシテ君は死んだならと言っているのに、感動した顔を見せる。

 うん。君も変だよ。


「あとはナターシャを見つけたら、やってもらいたいことがあるから。クロマ、ちょっと」

「はい?」

「あの魔法は使えるかな?」

「はい。できますよ」

「なら、それをお願い」

「かしこまりました」


 ボクはクロマに下準備をお願いして、ナターシャの救出もお願いした。


「いいさ。なら、ボクはクーガと皇国の軍勢だね。エリーナ。アンナ。付き合ってもらうよ」

「ええ! どこへでも」

「お任せください!」


 全身タイツ姿になる二人。

 その姿にもならなくてもいいけど、気に入ったのかな? 仮面をつける意味ってあるのかな?


 全員の準備ができたので、あとは突入に向けてタイミングを待つ。



《sideクーガ・ビャッコ・キヨイ》


 帝国が戦いを先延ばしにしていることが見てとれた。


「俺たちは舐められてるんだろうな」

「皇王!」

「わかってんよ」


 三人の将軍たちの思いは俺と同じだ。

 皇国が舐められているなんて許せねぇよな。

 前回は、俺一人で苦戦した。

 だが、今回は皇国が誇る武士が揃ってんだ。


「先陣は俺がいかせてもらうぞ」


 ムクロに調べてもらった情報を下にして、俺たちは奇襲をかけることにした。


 どうやら奇襲は成功した様子で、帝国兵が混乱する中で乱戦が始まった。


 俺の前に美しい女が現れる。


「皇国の王よ。我こそは帝国イシュタロスナイツ第五位ジュリア・リリス・マグガルド・イシュタロス将軍だ」

「おうおう、帝国の大将ってことかよ。いいねぇ〜いい女だ。俺が勝ったら一晩の相手をしてくれよ」

「お前が私に勝てるのなら、この体好きにすればいい」

「いいねぇ〜面白い」


 俺は白槍を肩に担ぎ、白虎に跨って将軍をを見下ろす。


 半身になってレイピアを構えた瞬間に、圧倒的な威圧感を放ち始める。


 面白い!


「いざ!」

「いざ!」


「「参る!」」


 互いに高速で動き始める。


 いや、俺は相手の動きについていけていない。

 白虎が対応してくれなければ、一撃で終わっていた。


「なっ!」

「ほう、よいペットをお持ちのようだ」

「ペットじゃねぇ! 守り神だ!」

「そうか、ならば将を討つために、馬を倒させてもらおう」


 俺は白虎に守られている。

 悔しいが強さは向こうが上だ。


 白虎と帝国の将軍が睨み合う。


 青き雷鳴が木霊して、白虎が雷の速さで動くのたいして、帝国の将軍が全く同じ速度で対応する。


 爪と剣がぶつかり合う音が響き合い。

 俺は肉体強化を施して、白槍を振るう。


「くっ!」


 強者同士の衝突に力場が生じて弱者は近づけない。

 俺の白虎にしがみついているのがやっとになってきた。


「どうした神獣よ。その程度の力しか持ってはいないのか?」

「グルルルル!」


 戦いは帝国の将軍が押している。

 俺が白虎の背にしがみついているせいで、本来の力が出せていない。


 だが、ここで白虎から降りれば、俺は確実に殺される。


 どうすれば? どうすればいい!


「うおおおおおお!!!!」


 帝国陣営から歓声が上がる。


 将軍の誰かが討たれのたか? 帝国を消耗させることはできた。

 ここは引く方が得策だ。

 だが、簡単に引かせてくれるか? くそ、歳は近いはずなのに、老師に近い力を持ってやがる。


 リュークの兄貴にしても、どうして世の中には強い奴が多いんだ。


「どうやら皇国の将軍を討ったようだ。神獣を足止めしていれば、こちらの方に分があるようだ」

「くっ! 白虎!」


 ここはなんとしても逃げなければならない。

 俺が捕まるわけにも、武士たちを失うわけにもいかない。


「甘い!」


 帝国の将軍のレイピアが、こちらの油断をついて襲いかかる。


「邪魔するよ」


 突然、俺と帝国将軍の間に仮面をつけた男が割り込んできた。


 それに続いて、二人の仮面の女たちが現れる。


「くっ! 邪魔だてするとは何者!」

「ボクはバル! 冒険者をしている。故あって皇王の助太刀をさせてもらう」

「だっ誰だか知らないが、恩にきる!」

「なっ!」

 

 一目散に俺はその場を離れた。

 ちゃんと見ていなかったが、あの声はもしかして……。


「退却だ! 退却しろ!」


 俺は武士たちを連れて、国境へ向かう。

 帝国の将軍でないのなら、白虎の雷で近づけさせないようにできる。


 俺は殿しんがりの役を任されて、武士たちが逃げる時間を稼いで、門を閉じさせた。


「あばよ!」


 白虎は山を駆け上がって国境を越えた。 


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