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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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脱出劇 

 帝国の夜は眠らない。


 巨大な街の中はどんな時間でも人が起きている気配がして、どこかで何かが行われている。

 帝王との謁見が終わったボクは女装を解除した。


 アンナやクロマは何故か女装姿のボクにうっとりしていたが、今度カリンたちの前でもしてみようかな?

 

 帝国に潜り込んでいたタシテ君の手下がやってきた。

 ボクらが抜けた後の人数の合わせだ。


「帝国兵の巡回順路の把握は済んでおります」

「さすがはタシテ君だね」

「帝国にもネズール家の草はおりますので」

「そうか、ならば行こうか」

「問題ありません。そちらも手配しております」


 今回の旅の共に選んだ。エリーナ、アンナ、クウ、クロマ、タシテの五人にボクを含めた六人は帝都に到着したその日に脱出することにした。


 長くいればいるほど、監視の網はキツくなることだろう。


「ご武運をお祈りしております」

「ああ、決して逆らうことなく大人しくしていることだ。どうしても助けが必要な時は、この人形に魔力を流してから話しかけてくれ」


 ボクはミニミニクマさん人形を聖女ティアに渡す。


「わかりました。ですが、危険なのはリューク様の方です。どうかご無事で」

「ああ」


 聖女ティアと別れのキスをする。


「必ず迎えにくる」

「お待ちしております」


 聖女ティアに見送られて、ボクらは屋敷の下水道へと飛び込んだ。

 屋敷の外では監視者がいるが、彼らが見落とすのは下水道ぐらいしかない。


 バレないように脱出する必要があり、少しでも人数の減る明け方を狙った。

 下水道が整備されている帝国では、ある程度の場所までは下水道で移動することができる。


 しかし、これだけの人口が住んでれば、地下迷宮と化す下水道はダンジョンへ様変わりしてしまう。


 しかもそこそこに強力な魔物がウヨウヨと存在するので、厄介なことだ。

 オートスリープを発動して、討伐はタシテ君とクロマに任せた彼からのレベルアップのためだ。


 エリーナ、アンナ、クウは、すでにレベルをカンストさせている。


 レベルを上げながらダンジョン内を進んで出口を目指す。


「こちらです」


 タシテ君が帝国内の下水道を迷うことなく突き進んでいく。ボクは少し大きめの気配に気づいたのでオートスリーブを解除した。


「くくく! こんな朝早くにどこに行かれるのかな?」


 そう言って声をかけてきたのは、ネズミの顔をした獣人族だった。


「我こそは、この地下迷宮の支配者にして」

「お前じゃない!」


 ボクの目の前にはダンジョンボスと戦うためのコマンドが現れない。

 スリープを使って眠らせて、先へと進む。


 上手くダンジョンマスターを誘き寄せて、ダンジョンを手に入れたいと思ったが、簡単に上手くいく話でもなかったようだ。


「リューク様?」

「相手もこちらの動きを警戒して出てきてはくれないね。ダンジョンマスターを見つけないことには、ダンジョンを奪い取ることもできない。ダンジョンコアを探している時間もない。行こうか」

「はい!」


 タシテ君がいくら下水道の地図を理解していても、それは脱出に関することであり、攻略に関してのことではない。


 今は脱出を優先する。


「ふぅ、無事に帝国の外まで出られたようだね」

「このような道しかなくて申し訳ありません」

「いいさ。それよりもボクが頼んでおいた人物には連絡できたのかな?」

「はい。連絡はできていると思います」


 下水道は近くの川まで流れ着いていて、ボクらは下水道を抜けて、川へと出た。


「ならいいさ。さて、あれからは逃げられるかな?」

「あれ?」


 タシテ君がボクが指摘した方角を見て、迫る人物を目に留める。


「どうして!」

「さぁ? 先ほど出会ったダンジョンのやつのせいなのか? それともスパイ容疑がかけられたのか? 聖女ティアが心配ではあるが、ボクらにできることはあれを引き連れて逃げることだ」

「はい!」

「みんな、ここからは逃亡戦だ。ボクから離れないように気をつけてくれ」

「「「「はい」」」」」


 四人はしっかりとボクへ捕まる。


 ボクはカリンが用意してくれた新しいマジックバッグから荷馬車を取り出して、全員を乗せる。


「クマ、悪いが頼むぞ」

「人使いが荒いご主人様だぜ」


 巨大な熊として実体化させて召喚されたクマが、荷馬車を引いて走り出す。


 戦えば勝利はできるかもしれない。


 だが、イシュタロスナイツを引き連れて逃亡すれば、ボクらはイシュタロスナイツから逃亡しなければいけない者だと認識してくる。


「さて、問題はボクらの素性がバレているのかどうかだ」

 

 もしも聖女ティアたちに危険が及ぶなら、捕まることも考えなければいけない。


「貴様らか! 地下迷宮に侵入した者は! 許さぞ! どこぞの残党か知らぬが、帝国に逆らう種族は皆殺しだ!」


 アンガスの大きな声にボクは聖女ティアの身は安全であると確信した。


「我々は獣人族の生き残りだ! 巨人族など帝国に尻尾を振る! 反逆者だ!」


 クウとクロマに獣人として、並んでもらい。

 ボクもバルニャンを纏って獣人族を演じる。


「獣人族がまだ生き残っておったか! ならば、殺してくれるわ!」


 アンガスが嬉々として迫る中で、ボクはクマに指示を出す。


 船を使わねばならぬ、大運河を飛び越える。


「なっ!」


 バルニャンとクマなら空を飛ぶことも可能だ。


「いつか帝国を内部から破壊してくれるわ!」


 捨て台詞にアンガスの体が巨大化していく。


 普段から四メートルはありそうな体が三倍近くまで大きくなり、大運河に足を踏み入れる。


 流石に一歩で渡れるほどではないが、ゆっくりと向かってくる。


「クマ!」

「承知!」


 ボクの指示で、クマが空を翔ける速度が上がる。


「くっ! 絶対に貴様らを捕まえて拘束してくれる!」


 鬼のような形相をした巨人が叫び声をあげて、大運河の真ん中で闘気を斬撃にして飛ばしてきた。


 大運河が一瞬だけ割れて、道ができる。


「エリーナ!」

「はい!」


 エリーナが氷の壁を作って斬撃を受け止める。


「お返しだ!」


 ボクは透明なバルで作り出した特大魔法弾をアンガスへ打ち込んでやる。


「ぬぬうおおおお!!!!!」


 さすがはイシュタロスナイツ。

 

 ボクの魔弾をその身で受け止めてしまった。


 だが、割れて道になっていた大運河は、元通りに戻っていく。


「くっ!」


 その頃には、ボクらは随分と遠くまで逃走に成功していた。


「ふぅなんとかなったね」

「地下迷宮への侵入者だと思ったようですね」

「他にもそういう奴がいるのか?」

「調査不足ではありますが、あると思います。各地の残党は未だに逃げ延びている者もいるそうなので」


 タシテ君の情報があると言っても危ない綱渡りだった。


 ボクらが逃げられたとしても、聖女ティアが捕まったり酷い目に遭えば意味がない。

 

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