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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第十章

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前夜 3

《side皇国(三人称視点)》


 復興を目指している皇国は、領土を4分の1を失って、残った4分の3で、復興活動を行なっていた。

 しかし、そんな皇国にもたらされた帝国からの書状に皇王は怒りを表して書状を投げつけた。


「なっ、なんだこれは!」

「あなた」


 そこに書かれていたのは皇族の血縁者である男性は首を差し出せ。

 女は身柄を差し出せというものだった。


 それはアレシダス王国に届いた書状と同じものであり、全面降伏を要求するものであった。


 そして、その帝国の狙いは、王族や貴族を排除することで、領民を全て帝国のものとするものであり、これまで生きてきた国の成り立ちやしきたりを全て取り払うものだった。


 こんな物は降伏勧告でもなんでもない。

 

 奴隷勧告ではないか! 


「クソがッ! だが、俺たちだけじゃ帝国とは戦えない。王国との連携が必要だ」

「ならば、我らが主に助力をお願いするしかありませんね」


 すでに彼らはある兄弟によって裏から支配されていた。

 いや、言葉としては間違っていないのだが、彼らは支配を受けながらも自由を許されていた。


「リューの兄貴は、どうしているんだ?」

「確か、塔のダンジョン攻略を行うとミソラが連絡をくれていたわ」


 王国に存在するデスクストス公爵家。


 その兄であるテスタは、玄武領を支配して、配下であるアクージ家へ譲渡した。さらに玄武領にあったダンジョンをテスタが支配下に置いた。


 青龍領は弟であるリュークによって支配されており、こちらはほとんどの自由を許されている。


「そうか、なら俺たちは王国に足並みを揃えるか?」


 皇王とその妻である二人は麒麟が現れ、皇国に変革をもたらしたリュークを兄としたい主従の関係を結んでいると思っている。

 それはリュークの指示に、全面的に従うことにしているからだ。

 

 だが、彼らとて一国の主を任されている者として、何もしないで待っているだけの無能ではリュークに見限られてしまう恐れがある。


 リュークという男は怠惰を訴え、自らで動くよりも考えて動く者を好む。

 任されて自由にしてもいいというのはそういうことだと二人ともわかっている。属国にできたのに自由を与えられている以上は、自らで考えて打開策を模索しなければいけない。


 声をかけてもらえる前にできることを考えた二人は、帝国を迎え撃つための準備をしていくことにした。


 手始めに彼らに取ってネックになっているのは、帝国将軍イシュタロスナイツ第五位ジュリア・リリス・マグガルド・イシュタロスによって奪われた白虎領に他ならない。

  

 帝国に面していた白虎領の一部が帝国の拠点になることは目に見えている。

 

 では、いつならば取り返せるのか? 現在の帝国は小国家郡を統一したことで、帝国内で統一の祝賀会をしているはずだ。


 有力な将軍や騎士たちは帝都に戻っていると忍び頭となったムクロによって調べはついている。


 皇国ができることは旧白虎領を取り戻して国境の整備に他ならない。


 白虎領へ侵略されたままにしていれば、こちらの防波堤はほぼ皆無と言ってもいい。だが、白虎領を取り戻して国境に作られている門と砦を利用できれば、防御はもっと楽になる。


 現在の皇国における全兵力を使って白虎領を取り戻し、帝国に対抗する準備を進める。


「行動は迅速に、そして帝国に気取られないように行う」

「お気をつけて」

「わかっておる。アオイノウエの腹におる我が子のためにも、属国になどできぬ」


 皇王クーガ・ビャッコ・キヨイは、白虎の鎧を纏い。

 幻獣白虎の化身に乗って出陣する。


・白の侍大将ジュウベイ

・赤の侍大将コジロウ

・青の侍大将アオシ


 三人の将軍と忍び頭ムクロを従えて、全兵力を持って帝国に支配されし領地を取り戻す。



《side教国(第三者視点)》


 通人至上主義国家は、魔王に対抗するために、魔王によって苦しめられた民たちが作った国である。

 それは、魔王の配下と言われる魔族を虐げ、通人こそが世界を支配する主であると訴える宗派だ。


 それは初代聖女が、魔王の脅威を書き記し聖人たち受け継いだとされてきた。


「まさか、帝国がこのような暴挙に出るなど」

「聖女様を差し出し、我々宗教家に全面降伏を訴えよと」


 教国は民主制であり、聖女は力の継承で決められ。

 教皇は、長い長い教主たちの話し合いで決められる。


 そのため王たちとは違って、血脈を絶ったところで意味はない。


 むしろ、現在の教皇を屈服させて従わせた方が手っ取り早い。


 何よりも、宗教家たちに信じるものを否定することは無意味だ。

 信じるものによって救われた者に、今度は帝国の法を信じろと言っても狂信者となって荒れ狂う恐れがある。


 そこを熟知している帝王は、教国の存続を認める代わりに一切の手出しをしないで帝国の邪魔をしないことを書状で知らせた。


 また、その際には聖女を帝国に差し出して協力させるように書かれていた。


 つまりは、教国へ全面降伏を訴えて、聖女を差し出せと言っているのだ。


「私一人が、帝国にいくことで平和的に解決できるならば、問題ありませんが、王国や皇国を裏切ったことになる。何よりも我々は戦争を望まない」

「わかっております。何よりも、王国が簡単に負けるようには私も思えません。魔王の脅威を目の当たりした私も、王国人の強さをこの目で見ました。絆の聖騎士にデスクストス家、アクージ家。彼らの強さは私も知るところです」


 魔王に扮したリュークとの戦いは、教皇にこれまでの金儲けだけの宗教家としての思想から、本来通人至上主義教会が行うべき魔王対抗組織としての意味合いを強くしてくれました。


 そして、聖女ティアにとっては、魔王に扮した彼らよりも。

 

 魔王を演じたリューク・ヒュガロ・デスクストスが負けるイメージが持てないでいた。


「期限は近い。判断は慎重に行いましょう」

「最悪、私はあちらに行って教国の安全を確保しても構いません」

「ティア様!」

「ですが、それは王国の動き次第です。ますは、王国を牛耳るデスクストス家がどう動くのか判断してからです」

「はい!」


 二カ国の注目は、帝国と正面から戦うことになる王国へと向けられた。


 

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