表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

353/434

塔のダンジョン攻略 5

 ダンが一人で九十六階層を攻略してくれたことで、溶岩がなくなって、難なく突破することができた。


 意外なことだったが、ダンがここまで強くなってくれていたことは良い誤算だった。

 それにボクに力を貸してくれることも不思議な光景だ。本来なら、ダンのヒロインを奪って断罪されるはずだったボクを助けてくれているのだから。


「リューク! 扉が開いたぞ!」


 嬉しそうに走ってくる姿は、まるで忠犬のようだ。

 骨を投げたら咥えて戻ってくるんじゃないだろうか?

 

「ダン先輩、ご苦労様っす! 私が頭を撫でてあげるっす」

「おう! ありがとうな、ハヤセ!」


 ハヤセに褒められて喜ぶ姿はまさしく犬。

 ダンの後に尻尾が見えるようだ。


「リューク、このまま進みますの?」

「うん。進もうと思う!」


 マグマが消滅した九十六階層を進んでいく。

 温度が上昇していて、暑い部屋の中をオウキが浮かんで荷馬車に負担をかけないように部屋を越える。

 

 九十七階層に上がっていくといよいよ強いボスも残り三体になった。

 この世の恐怖を具現化したような存在が、ボスとして現れる。


「真っ暗?」


 扉を開いたダンの声にボクは距離をとる。

 先ほどのマグマ帝の時みたいに、死にトラップを警戒してだが、ダンは一切警戒していないようだ。

 その神経は感服するほどに図太い。


 案の定、無数の黒い手が伸びてきた。

 そして、ダンを暗闇の中に引きずり込んでいく。


「ダン先輩!」

「ハヤセ!」


 ダンを追いかけて、暗闇に飛び込もうとするハヤセの腕を掴んだ。


 流石のダンでも暗闇で生き残れるのかはわからない。

 そこへ戦闘では足手まといのハヤセが入れば危険が増してしまう。


 それでもダンならなんとかしてくれるのではないかと思ってしまう。


 ただ、10分ほど待っても返事がない。


「リューク。ここのボスはどんな魔物ですの?」

「ここにいるのは闇だ。ただの闇が挑戦者を求め喰らう。闇そのものを晴らさなければ、勝利したとは言えない。ダンの光ならばいけるかと思ったが、ダメだったようだ」


 死んではいないと思うが攻略もできていない。

 ボクは闇に対抗できるもう一つの手段に目を向ける。


「わっちの出番でありんすね」

「ああ、闇には光。だが、それがダメなら闇には闇を」

「任せるでありんす」


 ボクは暴食の腕輪をノーラへと渡した。

 ここからは闇の深さと強さを比べることになる。

 闇を制する者は、また闇に飲み込まれようとする。


「いくでありんす!」

「ああ」


 ボクはノーラの手を握った。

 シーラスやアイリスには部屋には、状況を見て判断してもらう。リーダーはシーラスに頼んだ。

 彼女なら冷静に敵の分析ができることだろう。


 二人で九十七階層へと入っていく。


 真っ暗で何も見えない。

 ダンの息遣いすら聞こえてこない。

 入った瞬間にノーラと手を繋いでいるのかもわからなくなる。


 だからこそ、ボク自信の感覚ではなくバルニャンを纏って全方位を警戒してもらった。

 ノーラは属性魔法《闇》を発動して、部屋全体の闇を飲み込んでいく。


「黒渦!」

 

 暴食の腕輪の力を使い、吸収する力を増幅させた。

 ノーラとボクによってエネルギーを消費した暴食の腕輪は、腹を減らせて新たなエネルギーを求めて《闇》の力を強くする。


 ノーラの力に引き寄せられるように集められていくが、それに抵抗する闇が生まれ出した。

 闇は形を作り、まるで死神のような鎌を持つ。


「あれがボスか! ノーラ続けていてくれ。君のことはボクが守る」


 暴食の腕輪を外したことで、訪れる体のだるさを感じながらも《怠惰》の魔力を全身に纏ってバルニャンに動かしてもらう。

 ボクは魔力の操作だけに集中して、迫る死神に対抗する。

 

ーーーギン!


 鎌が振り下ろされる瞬間にバルニャンが柄を弾く攻撃を加える。

 だが、怯むことなく何度もこちらに迫る死神。

 その間にもノーラと闇の鬩ぎ合いは続いている。


「ぐっ!」


 闇を飲み込むノーラの体の方が負担を感じ始めた。

 もしも、暴食の腕輪がなければ、ここまで耐えられなかっただろう。


 大量の闇の手がボクたちに迫ろうとしていた。


「俺を忘れるな!」

「GGGGGGGGGG」


 全ての闇の手を振り払う光の刃がボクらの前に現れる。


「待っているだけは退屈ですの」

「祈りよ!」


 ダンだけでなく、弱まり始めた闇を見越して、アイリスたちも合流してくる。

 聖女ティアが祈る姿勢で荷馬車に結界をはり闇を退ける。

 闇に対して、聖なる光を持つ聖女と、絆の聖剣を持つダンは、やはり効果を高い。


 塔のダンジョン攻略にここまでダンが適任だとは思いもしなかった。


「ノーラ!」

「いくでありんす!」


 ボクは改めてノーラを後ろから抱きしめた。

 倒れたとしてもボクが受け止める。

 彼女の体力を少しでも回復させるために、回復魔法をかけながら、抱きしめ続ける。

 ノーラは暴食の腕輪に力を注ぎ込むように吸収する力を強めた。


「GGGGGG!!!!!!」


 それは次第にダンと鎌をぶつけ合っていた死神すらも飲み込み始める。


「いくでありんす!」

「ああ、最後まで君を支えているよ」

「心強いでありんす」


 最後の悪あがきをするように大量の黒い手がこちらに向かってくる。


 皆が一丸となって耐えていると、聖女が力を発揮する。


「祈りよ! 届け!」


 それは眩い光線となって死神に当たって黒い手を消滅させていく。

 消えようとした黒い手をノーラが全て暴食に取り込んだ。


 ノーラと聖女が精神をすり減らして九十七階層のボスを倒し切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ