塔のダンジョン攻略 1
ボクは塔のダンジョンを攻略するために、迷宮都市ゴルゴンにやってきた。
それは、今後の展開のためにも必要なことであり、魔王を倒した後にここに来ると、かなりの危険な場所へと進化してしまう。
世界を滅ぼすような展開も待っている。
だから、今集められる最高戦力で挑みたい。
「改めて、ボクの呼びかけに応じてくれてありがとう」
塔のダンジョン門の前。
ボクはバルとしてではなく、リュークとして共に塔のダンジョンを攻略してくれるメンバーたちに声をかけた。
今回の戦いに参戦して、生き残れる人間しか一緒には進めない。
「シーラス」
「ええ」
深淵を知る魔女であり、あの火事を鎮めてくれた魔法は共に進むべきレベルに達していると思う。
それにこの場にいる誰よりも知識を持つ彼女は、ボクが思い付かない攻略の発想を与えてくれるはずだ。
「ノーラ」
「はいでありんす」
この世界最強。つまりは、戦闘に関して彼女以上に頼りになる味方はいない。
「アイリス」
「ふふ、仕方ありませんの」
大罪魔法《色欲》に覚醒したアイリスは、強い。
その力を制御していることで、ノーラと対等に渡り得る力を持つ。
「ディアスボラ・グフ・アクージ」
「仕事とあらば」
アイリスの従者であり、アクージ家が誇る実行部隊随一の強さを誇る戦闘のプロだ。
壁役もサポートもどちらもできる万能型で、パーティーにいてくれるだけでありがたい。
「チューシン・ドスーベ・ブフ」
「はっ! リューク様と共に戦えることを誇りに思います」
チューシンは相変わらず忠誠心が高い。
回復や結界などサポートに関してレベルカンストさせて、司祭としてかなり高位に位置している。
「ダン」
「おう!」
戦闘技術に関しては、この場では一番低いとも言える。
だが、その耐久力と聖属性の絆の聖剣は、このメンバーの中に参加しても肩を並べられるレベルに達している。
「ハヤセ」
「はい!」
ダンを連れていく相棒として、ハヤセを外すわけにはいかない。
ハヤセを守る際に、ダンの力は強化していく。
以上の八名とオウキが引く馬車で塔のダンジョンを攻略することにした。
その間の迷宮都市ゴルゴンに関しては、ノーラの従者であるマッスルが実質的な運営をして、エリーナが責任者として残ってくれることになった。
アンナ、クロマ、ミリル、ルビー、フリーには、エリーナの補助についてもらった。
「ボクの我儘に付き合ってもらうこと、ありがたく思う。必ず、このメンバーで塔のダンジョンを攻略しよう」
今いるメンバーでは、これが最上のメンバーであると言える。
「リューク・ヒュガロ・デスクストス様!」
名を呼ばれた先には聖女ティアが立っていた。
「聖女様、どうしました?」
「……私もお供させていただけないでしょうか?」
「えっ? ですが、あなたは教国の代表で」
「教国は教皇様と新しい十二使徒が支えてくれています。それに、ダンジョンを攻略する日々は危険が多いのではないでしょうか? 私は役に立てるはずです」
そう訴える聖女ティアは、確かに強力な助っ人だと思う。ただ、彼女を信頼できるのかは不安が残る。
「本当に良いのか?」
「はい! 今回の事件を、調査依頼してくれたことを聞きました。聖女アイリス様やエリーナ様から最初からリューク様が私は犯人ではないと言ってくれたと、嬉しく思います」
頬を染めて嬉しそうにボクを見上げてくる聖女ティアにアイリスを見れば、してやったり顔をしていた。
どうやらボクがしたことがバレてしまったようで恥ずかしいね。
「ボクは何もしてないよ。情報を伝えただけだ」
「それでも感謝しているのです。ですから、これは恩返しだと思っていただければ」
「そういうことなら助かるよ」
「ふふ、よろしくお願いします」
聖女ティアという強力な助っ人を得て、九人で塔のダンジョンに入っていく。
前回倒すことができた九十一階層の堕天使。
あの時には、ノーラが堕天使を一人で倒してくれた。
ダンも協力していたが、今回はノーラの力を借りないで、他のメンバーの力を見たい。
「そういうことですの。いいですの。ディアス。チューシン。行きますの」
アイリスが二人を連れて前に出る。
シーラスと聖女ティアは三人の補助に動きを見せた。
堕天使が姿を見せると、アクージが糸を張り巡らせて堕天使の動きを止めてしまう。
簡単にアクージに堕天使が捕まったのは、チューシンがデバフ魔法を堕天使に施し、聖女ティアがバフ効果を三人に使っていた。
さらにシーラスが《花》の属性変化魔法によって、堕天使が魔法効果無効にしていた能力を無効化させている。全員の連携が簡単に堕天使を撃ち落とす。
墜落した堕天使の前にアイリスが立った。
「終わりですの」
そう言って堕天使は戦闘スタイルとは思えない姿をしたドレス姿のアイリスがピンヒールで堕天使を踏み抜いて倒してしまう。
「リューク。わたくしたちは合格ですの?」
「ああ。もちろんだ。十分な力を見せてもらった」
あっさりと九十一階層の堕天使を倒した五人に賞賛を贈る。
やはりこのメンバーを選んでよかった。
「ここからは冒険者ギルドでも、報告が上がっていない未開の地だ。どうかよろしく頼む」
「任せてほしいですの」
アイリスの自信ある声に上の階へと上がっていく。




