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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

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式典参加者 終

《sideノーラ・ゴルゴン・ゴードン》


 アイリスやシーラス、エリーナなど多くの協力者のおかげでわっちの街は守られんした。

 聖女ティアからは謝罪を告げられ、教皇からは人材と融資をいただきんした。


 そうして一ヶ月もしない間に大図書館は修繕が完了したでありんす。


「この日を迎えられたこと、心より感謝するでありんす」


 街はまだ半壊している場所も多く、全てが元通りには戻っておりはしません。

 それでも、皆が協力し合って街を戻す姿は、この街の強さを知るきっかけになったでありんす。

 そして、多くの人たちの絆を結ぶ結果になったと、今では思うでありんす。


「大図書館はわっちの夢でありんした。そして、多くの人々に協力と支えをいただき、今日お披露目できることを心から嬉しく思うでありんす」


 大図書館の前で、長い紅白に結ばれたテープを持った各国の重鎮や貴族たち、そこには教皇、聖女ティア、エリーナ、アイリス以外にも、皇国、帝国から外交官がやってきていたでありんす。


 本当はリュークやシーラスにも参加してほしいでありんすが、みんなには見守ってもらっているでありんす。


「今日を迎えられたことを祝って」


 皇国の風習に倣って、紅白のテープをハサミで切ったでありんす。

 これは新しい建物などを開場させる際に悪い縁を断ち切るという意味が含まれていると本で読んだでありんす。


 今回の迷宮都市ゴルゴンは、大きな災いに見舞われたでありんす。

 それを乗り越えて、今があることが喜ばしいでありんす。


「本日より! 大図書館を開放するでありんす!」


 世界各国から集められた本たち。

 本というだけで貴重であるはずなのに、今回は数十万冊に及ぶ本を集めたでありんす。


 人々は圧倒されて喜んでくれたでありんす。


「おめでとう。ノーラ。心から祝福しますの」

「ありがとう。アイリス。本当に嬉しいでありんす」

「あなたがこのような夢を持っていたこと知りませんでしたの」

「それもこれもリュークのおかげでありんす」

「ふふ、そうですの」


 わっちがリュークの名前を出してもアイリスは、幸せそうに笑うだけでありんす。

 リュークからアイリスも妻の一人になったことを告げられているでありんす。

 ですが、エリーナ同様に現状の立場を投げ出すことはできないアイリスは今を楽しんでいるいるでありんす。


 リュークに会えるのは、リュークが会いにきてくれた時だけ。

 だけど、それでいいようにわっちは思うでありんす。

 

 わっちたちは男性に依存するような女ではありはしやせん。

 好きに生き、好きな男性の子を成して、それを育て、また好きに生きる。


 それぐらいの方が気楽でありんす。


「皆様とのお茶会のご用意ができております」

「わかったでありんす」


 マッスルの言葉に、わっちは大勢の方々とのお茶会に興じたでありんす。

 それはこの大図書館の顔役として、わっちの勤めであり、今後の迷宮都市ゴルゴンに必要なことだとわかるでありんす。


 だからこそ、全てが終わり日が沈むと疲れと達成感で肩の荷が降りたような気がするでありんす。


 まだまだ、やることは多くあり、来賓たちが帰るまでは主賓として務めなければいけないことはわかっているでありんす。


 それでも。


 日が沈んで、大図書館から人がいなくなり。

 静けさの中に、革靴の音が響くとどうしても気が緩んで、胸が熱くなるでありんす。


「やぁ、ノーラ。お疲れ様」


 寂しくて、わっちが迷うと現れる彼は、本当にタイミングの良いお方でありんす。


「リューク。どうでありんすか?」


 わっちは誰よりもリュークにこの大図書館を見て欲しかったでありんす。


 見上げれば、天井まで埋め尽くされた本棚は、本の塔であり、本に見られているような感覚すら覚えるでありんす。


 そんな本たちの中にわっちとリュークが二人きり。


「最高だね。ボクは本が大好きなんだ」

「知っているでありんす。わっちに本の楽しさを教えてくれたのは、読み聞かせてくれたリュークでありんす」


 何も知らないわっちに絵本を見せてくれたリューク。


「ふふ、ノーラもボクと一緒で本ばかり読んでいるからね。文学家になったね」

「本で読んだでありんす。男性は強い女、一人で生きていける女を嫌うと書いてありんした。それに賢い女性も嫌われるとありんした」


 だから不安でありんした。

 わっちは生まれながらの強者でありんした。

 一人で行くことも、本を知って賢くなったかもしれないでありんす。


「その本を書いた人はバカだね」

「えっ?」

「強い女性に頼ってしまうボクのような弱い男性もいるよ。一人で生きていけると強がる女性を、ふり向かせたいと思う男性もいる。賢い女性だからこそ、話が合って、面白いと思う男性もいる。それは千差万別で、誰からも好かれる必要なんてないんだ。一人の人間が好きだと言ってくれれば幸せなんだから」


 大図書館の一番奥に用意された大きな椅子に座ったわっちの元で、リュークが膝を折って見上げてくる。


「君は夢を叶え、強く、賢く、素敵な女性だよ」

「そんなことを言うのはリューク一人だけでありんす」

「ボク一人だけでは不満かな?」

「もちろん、あなた一人で十分でありんす。余計なものなどいらないでありんす。リュークが喜んでくれるだけで、わっちは大図書館を作った意味があったでありんす」


 ふわりと体が浮いて、リュークの胸の中へと誘われる。


 そのまま見下ろされていた本たちの間を抜けて、天井ガラスに到達してしまう。


「最高に幸せな気分だ」


 わっちは大図書館の中をリュークと一緒に飛んで見回ったでありんす。

 それは作り手も知らない景色で、リュークだけが見せてくれる特別な見学手段でありんす。


「リューク、わっちは目標を失ったでありんす。母様がいなくなって、リュークに会えなくて、大図書館を作ることだけがわっちの目的でありんした。もうすることがないでありんす」

「なら、ボクと一緒に塔のダンジョンを攻略しよう」

「ダンジョンを攻略するでありんす?」

「ああ、お姉様は塔のダンジョンに向かったんだと思うんだ。だから、最上階にいるであろうお姉様に会いに行こう」


 リュークは、いつも凄いでありんす。

 いつもわっちに進むべき道を教えてくれるでありんす。


 だからこそ、どこまでもついていきたいと思わされてしまうでありんす。


「行くでありんす! リュークとならどこまでも!」


 わっちはしばし暗い大図書館をリュークと飛びながら、幸せな時を過ごしたでありんす。


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