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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

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式典参加者 12

《sideアイリス・ヒュガロ・デスクストス》


 ディアスが犯人として捕まえた十二使徒ロリエルは攻撃を受けると、その姿を変えて同じ十二使徒ユダ・タコブに変化しましたの。


「どういうことでありんす?」


 これでやっと最終局面ですの。


「十二使徒のロリエル氏。いえ、ここではユダ氏とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

「ふん」

「ちょっ、ちょっと待ってください。ロリエルやユダ、それにミカは先ほど魔王に」


 聖女ティアの言葉で、全員の視線が倒れた三人に集まりますの。

 そこには先ほど魔王によって倒されたはずの三人は、若い男女二人になっておりましたの。


「どういうことなのかご説明をお願いしてもよろしいですか?」


 男女二人を見て教皇が唖然とした顔をしておりますの。

 聖女ティアは倒れている女性、十二使徒ミカ様に回復魔法をかけてあげますの。


「えっと、この方は誰でしょうか?」

 

 聖女ティアの言葉で注目が集まれば、倒れているはずの十二使徒はロリエルのはずですの。しかし、そこにいたのは見たこともない不細工な男ですの。

 

 ロリエルは、リュークには劣りますが美男子でしたの。


「そちらの御仁は、ロリエル殿に間違いありません」


 その疑問に答えたのはディアスですの。


「どういうことです? ロリエルは出会った時から、このような方ではありませんでした」


 聖女ティアに同意するように、教皇が頷きましたの。

 

「ふん、それがロリエル本来の姿じゃ」


 意外にもロリエルの正体を明かしたのは、ディアスに拘束されているユダが言葉を発しましたの。


「どういうことなんだ?!」


 戸惑いながらも問いかけた教皇にユダの視線はロリエルに向けられましたの。

 ただ、ユダは何も語らず、そっと目を閉じられました。


「あなたが話さないのであれば、私から説明いたしましょう」


 そう言ってディアスが二人の間に割り込んでいきますの。


「ロリエルは己の能力と魔法によって姿を変えることができる人でした。そして、ユダはそんなロリエルを意のままに操れる能力と魔法を持っていた。これは不幸にも、二人の人物が別々の素晴らしい能力を間違った方向に使った結果なのです」

「もっ、もったいぶった言い方をするのはやめてくれないか? もっとわかりやすく頼む」


 戸惑う教皇に全てを諦めたようにユダがため息を吐きましたの。


「どうやらワシの計画は全てお見通しというわけか?」

「ええ、あなたの夢はここで潰えました」

「ふん。ワシ自身は何一つとは言わんが、自分では悪事を働いてはおらぬ」

「そうですね。あなたは誘導したに過ぎない」


 二人で繰り広げられる会話に我慢できなくなったエリーナが立ち上がりましたの。

 

「先ほどから何の話をしているのですか? 犯人はユダ様? でいいのでしょうか?」

「はい。エリーナ王女様。今回の事件の首謀者は、十二使徒ロリエル。そして、その手伝いをしたのが、ユダ・タコブです。ロリエルの属性魔法、通人至上主義教会ではギフトと呼ばれる能力は、《幻覚》。そして、そんなロリエル殿を操り誘導するギフト《催眠術》。今回の事件は教皇と聖女の勢力争いに見えながら、その実、二人の十二使徒による欲望を叶えるための裏工作だったのです」


 話は王国剣帝杯にまで遡りますの。


 妖星のロリエルは、王国剣帝杯で優勝してエリーナ・シルディー・ボーク・アレシダス様と結婚を望んでいましたの。しかし、優勝は叶わず望みが絶たれましたの。


 失意のロリエルに声をかけたのがユダでしたの。

 ユダはロリエルが幻覚を常に使って姿を変えている秘密を知っており、また剣帝杯で敗北して弱っているロリエルに《催眠》を施して、聖女ティアの護衛として同行させましたの。


 王国剣帝杯の開催時に、通人至上主義教会では、大教皇の死によって新たな教皇が立ちましたの。

 新たな教皇様は、現実至上主義として聖女の力に疑いを持っていましたの。

 

 ユダは教皇様の疑う心を利用して、聖女に実権をもたせすことはできないと、十二使徒の一人として教皇の味方についたふりをしましたの。


 教皇様は、聖女ティアの絶対的な味方だと思っていた十二使徒が裏切って、打算的な理由で自分に靡いたことで、ユダを信用しましたの。


 信用を勝ち得たユダは、教皇の師にして助言役をしていた預言者アケガラスを唆し。聖女ティアの信者であるヒルカラスを使って、計画を実行に移しましたの。


 迷宮都市ゴルゴン式典参加者襲撃事件。


 教皇には、迷宮都市ゴルゴンで事件が起きて、聖女ティアに問題をなすりつけることで、教皇の地位を盤石にするため宝物庫から暴食の腕輪を持ち出させましたの。

 襲撃事件を未然に防がれる可能性があったノーラ・ゴルゴン・ゴードンにつけることで排除した上で、破壊工作をするつもりでしたの。


 ですが、ヒルカラスはすぐさまわたくしに捕らえられ、アケガラスによって殺害されてしまいましたの。

 アケガラスもまた、ノーラ・ゴルゴン・ゴードンの異常な強さに、ギフトを使用して死んでしまったそうですの。


 それらの連絡を忍び込ませていたロリエルから報告を受けたユダは、ロリエル自身に命令を下しましたの。


 《幻覚》魔法で十二使徒ミカを騙して、偽聖女ティアの命令で火をつけさせる作戦にシフトチェンジしましたの。

 そうすれば、十二使徒が聖女ティアの命令で火をつけたことになるので、十二使徒ミカの信用も、聖女ティアの信用も失われることになるという算段でしたの。


「これが事件の一連の流れです」


 ディアスの言葉に、集まっていた誰もが驚きを感じていたようですの。

 大きな事件だと思われていたものが、あまりに大雑把で計画性が感じられない幼稚な内容でしたの。


「どっ、動機はなぜこのようなことを?」


 聖女ティアに問われて、ディアスがわたくしを見ますの。


「大方、十二使徒筆頭の権利が欲しかったとかではないないですの? 十二使徒筆頭のミカ様の失脚。さらに三席のロリエル降格。聖女ティア様の権威失墜。そして、自分が推している教皇の筆頭に収まることで十二使徒筆頭という権利と肩書きが欲しかったのではないですの?」


 わたくしの問いかけに、ユダが顔を上げる。


「権力を欲して何が悪い! 貴様ら若い者たちは、ギフトを授かり、魔法を強め、どんどんワシを抜き去っていきおる! ワシこそが十二使徒古参のユダである。どうして誰も私を尊敬せん? 私こそが十二使徒筆頭に相応しい人物であろう!」


 全ての事件を語られて逆上するユダは、みっともなく、無様な人間にしか見えませんの。

 わたくしの興味はすでにありませんの。


「これは教国の事件をわっちの街に起こした罪なのでありんすね」


 ノーラの言葉に教皇様と聖女ティア様が膝を負って頭を下げますの。


「我々の国の事柄を貴殿の街に対して多大な迷惑をかけた。心から謝罪をいたします。また、助力と支援をさせていただきます」

「通人至上主義教会の総意をもって謝罪させていただきます」


 教国の二人のトップから謝罪と、助力を取り付けたノーラは頷きましの。


「謝罪を受け入れるでありんす。今後は街の復興にかかる費用と人材を全て請求させてもらうでありんす。それと今回の罪人と協力者はそちらの法にて裁いて良いでありんす。ただ」


 ノーラは手に持っていた鉄扇子を軽く振って、ユダの顔面を吹き飛ぶぐらい殴りましたの。


「これぐらいの報復は許してほしいでありんす」

「寛大なご判断ありがとうございます」

「ありがとうございます」


 ノーラと教国の間で謝罪が交わされ、約束も正式に取り行われましたの。

 わたくしと、エリーナ王女が約束の証人になりましたの。


「これにて一件落着ですの」


 わたくしは、仕事をやり終えてホテルのスイートルームへ帰りましたの。


 その日の晩、私の部屋に尋ね人がいらしましたの。


「夜分遅くに失礼。約束を果たしにきた」


 そう言って姿を見せたのは、ヨルカラスでしたの。

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