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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

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魔王バーニャ対勇者パーティー

 勇者と聖女が力を合わせてボクの前に立つ。


 本来のボク、キモデブガマガエルのリュークではここまで辿り着くことはできなかった。

 だが、対等以上の力を持ってこの世界の主人公であり、勇者のダンと対峙している。


 面白い。


 ダンに殺されてやるつもりはないが、これは本来の未来でありえた構図なのだ。

 その流れに沿っていれば、ボクは敗北して殺されていただろう。


「魔の王よ! 聖女と聖剣の所持者がいる場所に現れるなど、正気とは思えませんね」

「なるほど、貴様が聖女か?」

「はい。私の名前は聖女ティア、あなたを滅ぼす者です」

「そうか、くくく。貴様らの力がどの程度なのか見せてもらおうではないか! 我は眠りの魔王バーニャ! 聖女殿のお相手をしようではないか」


 ボクは翼を羽ばたかせて、空へと飛び上がる。


「来い!」


 ボクに向かってダンが聖剣を構える。

 どこからともなくダンの後頭部にダーツが飛んできた。

 シーラスの話ではハヤセが、ボクの銃を持っているという話だから、ダンの強化に使うのだろう。


「くぅ! キタキタキタ! 俺は負けねぇ!」


 聖剣に光が溜まっていく。

 巨大な光の放流が刃となってボクめがけて飛来した。

 ノーラとの戦いでさらに力を強化したダンは、空を切り裂くほどの光の刃を作り出した。


「ふん!」


 レベルはカンストされ、絆の聖剣の力も完全に覚醒した。

 つまり、今のダンは全ての枷を外された正真正銘勇者ダンということになる。

 

 纏っていた大罪魔法《怠惰》を掻き消すほどの威力は、対魔王兵器としては完璧だ。


「だが、お前に負けてやるのはシャクだからな」


 ボクは魔力を纏うのをやめて闘気を拳に乗せた。

 上空から思いっきり急降下して、ダンを殴り飛ばした。


「グハッ!」

「ふん、所詮は一人。貴様如きでは我の相手に不足だ」


 ダンは何度もバウンドして民衆を飛び越えて吹き飛んでいく。


 そんなボクへ背後から真っ赤な鞭が振るわれる。


「あなた、クロマではないようですの。あの子にここまでのことはできませんの。仕方ないから、わたくしが調教してあげますの」


 意外にも、アイリス姉さんがダンの味方をした。

 確かに、この場で戦えそうなのはアイリス姉さんとアクージぐらいなものだ。

 アクージはヤレヤレと首を振って両手を広げたポーズを見せる。


 これで四人。


 パーティーとしては一番バランスが良くなった。

 前衛をダン。

 中衛をアイリス姉さんとアクージ。

 後衛を聖女ティアがサポートする。


「ふむ。やれるものならやってみろ」

「フガっ! 俺は勇者だ!」


 ボクに殴られたダンが復活した。


 これで役者は揃った。

 正規ルートでは絶対に集まらない四人がパーティーを組んで、ハヤセとチューシンがサポート役に徹している。


 六人のパーティーがボクと対峙した。


「愚かな人間よ。どれだけ集まろうと同じことだ」


 ボクは魔力を込めた威圧で全員を圧迫する。

 だが、それに対抗したのはアイリス姉さんだった。


 魔力を全開にして、《色欲》の大罪魔法でボクの威圧を相殺してしまう。

 魔力も威力もボクの方が上だが、大罪魔法というだけで、ただの魔力を込めただけの威圧になら、対抗できるまで威力を引き上げてきた。


「魔女の力も覚醒しつつあるというわけか」

「仕事ですから」


 ボクがアイリス姉さんに気を取られていると、アクージがいつの間にか背後に現れる。

 どうやって空にまでやってきたのかと思えば、空一面に糸が張り巡らされていた。


「なっ!」

「魔王さん、動けば糸で真っ二つにして差し上げます」


 緻密に糸一本一本に魔力が張り巡らされて、かなりの硬度を誇っていることが見て取れる。魔力を封じ込められ、動きも止められた。


「今度は逃さねぇ!」 


 そこへ、聖女ティアによって祈りを捧げられて、聖なる力を強化したダンが聖剣を構える。


「いくっす!」


 銃声が響いて、ダンの足元と股の間に弾丸が通り過ぎた。


「全力全開だ!!!」


 ダンの闘気が跳ね上がり、聖剣に光が先ほどよりも鋭くなる。


「はは、これはちょっとヤバいね。だけど」


 ボクは状況を見て、危険を感じた。


「くくく、いいだろう! 勇者とそのパーティーメンバーよ。この眠りの魔王バーニャ様がお前たちの力を受け止めてやる!」


 アクージがボクを拘束する糸だけを残して距離を取った。


 その瞬間、ダンは空を割った。


 文字通り、絆の聖剣が出せる全力を引き出して、空を切ったのだ。


 切り裂かれた空間は、時を止める。


 次に時間が動き出した時。


 魔王バーニャは姿を消していた。


 聖剣によって、空に張り巡らされたアクージの糸も全て消え失せていた。


「魔王を倒したのか?」


 絶望を味わっていた教皇から、疑問を口にする声が告げられた。それは奇跡のような戦い。


 魔王と勇者。


 相反する世界の頂点同士の戦いは、あまりにも呆気なく勇者の勝利に終わろうとしていた。


 だが、どちらの力も圧倒的で教皇から見れば、聖書に書かれていた通りの戦いが繰り広げられていた。


「聖書は本物だったのか!」


 通人至上主義教会の発足時。

 一冊の聖書が作られた。

 それは初代教皇が書いた物であり、彼は勇者と良き友人であった。

 そして、魔王との戦いに参加した僧侶として有名になった人物だ。


 彼は、ある一文を記した。


「勇者、空を割る時。魔の王は全てを無に還し滅びた」


 それは誰もが知る通人至上主義教会の伝説的一文だった。


 それを教皇は目の当たりにしたのだ。

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