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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

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式典参加者 11

《sideアイリス・ヒュガロ・デスクストス》


 わたくしは裁判の流れを見ながら、ディアスに指示を出しますの。

 ここに集まった者たちで、わたくしの考えを知っているのは、ノーラ、チューシン、ディアス、クロマ、ミカ様。


 皆さん、わたくしの話を聞いて協力してくれていますの。


「もう話し合いは不要ではないのか?!」


 十二使徒の一人であるユダ・タコブ氏が、怒って叫び声を上げましたの。


「静粛に、ユダ・タコブ様は犯人がわかったでありんすか?」

「それはそうだろう? 今までの話を聞けば、ヒルカラスと言う殺された者が、聖女ティア様を犯人と言っているのだ。その後に起きた火事事件の犯人もロリエル殿と、ミカ様だと言う。それも指示を出したのは聖女ティア様なのだ。もう犯人は聖女ティア様であろう?」

「では、聖女ティア様はなぜこのようのことをしたでありんす?」

「そっ、それは本人に聞かなければわからぬが……」


 オロオロとするユダ・タコブ殿の代わりに教皇ジェルミナス・アッカーマン様が手をあげますの。


「アッカーマン様、発言をどうぞでありんす」

「ありがとうございます。先ほどの聖女ティア様がなぜこのようなことをしたのかですが。火事が起きた後に復興に率先して助力したと聞きました。それは自作自演と言うことではないでしょうか?」


 民衆の中には、聖女ティア様に治療を受けた者もおりますの。

 それが作戦によって成されたと言われてしまえば、動揺した民衆からどよめきが起きますの。


「いかがでありんす? 聖女ティア様」

「ちっ、違います。私は本当に何も知りません」

「そうです! 聖女ティア様は魔力が枯渇しても、皆さんを救うために治療を続けていました」


 エリーナが反論しますが、全然相手には応えておりませんの。

 深々とため息を吐いて、わたくしは立ち上がりますの。


「よろしくて?」

「アイリス? 発言を許可するでありんす」

「ありがとうですの」


 わたくしはチューシンを押し退けて中央に立ちますの。


「皆さんに、先に申し上げます。今回の事件は、預言者アケガラスが主犯とわたくしは考えておりますの」

「なっ! ここに来てそれはないんじゃないか?!」


 ユダ・タコブ氏がわたくしに反論しますの。


「そもそも、どうして犯人などと言い出したかと言えば、ヒルカラスと言う犯人の発言だけですの。そのヒルカラスは、発言をしてすぐに殺されていますの。真意を確かめることもできませんの」


 わたくしは呆れたように深々と溜息を吐きましたの。


「そして、その後に深淵を知る預言者であるアケガラスの死体が発見されましたの。アケガラスは深淵を知る預言者と呼ばれるほどの先を見通すことができる手練れでしたの。ですから、王国の貴族として、五指に入るノーラ・ゴルゴン・ゴードンに対して瀕死の重傷を負わせることができましたの」


 視線がノーラに集中して、肯定するように頷きましたの。

 

「預言者と呼ばれるような人物が誰かのために動くと思いますの? むしろ、自分の思う通りに他の人たちを動かしたと言われる方が真実味がありますの」

「異議ありです!」


 わたくしの発言に言葉を失っていた者たちの中で、教皇だけが挙手をしましたの。


「発言を許可するでありんす」

「ありがとうございます。確かに、預言者アケガラスがそれを行える人物であることは理解できました。ですが、なんのために預言者アケガラスは命を賭けて、このような大掛かりなことを? そして、聖女ティア様の従者がどうして火の手を?」


 やはり、わたくしの意見を覆すとしたら、あなただと思っておりましたの。


「まず、預言者アケガラスは貴族や王族でも動かすことができない人物と言われていますの。そんな人物を動かせる人物。それは権力ではありませんの。むしろ、彼を理解した同志、もしくはカリスマを持つ崇める対象ですの」


 皆の視線が聖女ティアに向けられますの。


「やはり彼女へアピールとして?」

「いいえ、それはないのですの。申し訳ありませんが、聖女ティア様にそこまでのカリスマ性があるとは思えませんの」


 会場はざわめきながらも、どこかで納得している声が上がる。

 狼狽、涙目で違うと訴えるだけの女性はお世辞にも賢く、カリスマ性に溢れた人物には見えない。

 むしろ、大人になって背伸びしようとしながらもどうすればいいのか戸惑う成長段階ですの。


「それよりも教皇猊下。わたくしにはあなたの方が立派でカリスマ性を持った人物に映りますの。ティアよりも大人であり、ユダ様、そしてロリエル様に慕われているように見えますの」

「なっ!」

「おい! 小娘、教皇様を愚弄するのか?!」

「そうだよ。美しいからって、なんでも許されるわけじゃない。私はティア様の護衛だぞ」


 ユダとロリエルが反論を口にしますの。

 そんな戯言は、わたくしには聞こえませんの。


「ミカ様に質問です。あなたの発言が、聖女ティア様の立場を悪くされています。聖女ティア様が、火事の命令を承諾したと言っていましたが、それは本当ですの?」

「本当です! 本当ですが、いつもの態度とはどこか違っていて、虚な瞳をしていたと思います。どこか上の空でロリエル殿に、向かって《お願いね》と言われました」


 ここに来て現れた矛盾点。

 上の空だった聖女ティア様。

 そして、本人は返事をした記憶がない。


「ありがとう。あなたは頑張りましたの」


 ミカ様から視線を外して、教皇に向けますの。

 今はまだ、証拠もなければ事件も解決していない。

 これは単なる糸口だ。


「どうやら、どちらも嘘をついていない。だけど、矛盾点が生まれましたの。ロリエル様、聖女様の様子はいかがでしたか?」

「すまないね。私は聖女ティア様の顔色までは覚えていないよ」


 わたくしは、犯人は預言者アケガラスであり、アケガラスを動かした者がいたとしたら? 

 そして聖女ティア様の意識が朦朧としていたことを合わせると色々と不可解な点が現れる。


「さて、教皇様。ここに来て矛盾が生じましたの。そして、預言者アケガラスが自作自演で演じたように感じますの? それが答えだと思いませんの?」


 ここは落としどころだと思いますの。

 通人至上主義教会内が分裂してしまえば、本来の目的である教皇様も損をしますの。


「アイリス・ヒュガロ・デスクストス様の意見が最もかもしれませんな。この二人には十二使徒としては他国に迷惑をかけたことを考えれば降格が妥当だと」


 聖女ティアの重要性に比べれば、十二使徒は降格させてもまたあげればいいですの。


 教皇様はわたくしの意図を理解されておりますの。折り合いをわかっておりますの。


 わたくしはここで決着をつけても良いと目配せをノーラに送ろうとして、強烈な威圧を感じましたの。

 そこには全身を真っ白なスーツを纏い。マントを靡かせた人物が立っていましたの。


「我が名は魔王バーニャ。貴様らを滅ぼしにきた者だ」


 ふざけた衣装を着ていながらも、その威圧はわたくしが感じた中で最強でしたの!


 お父様に似た性質を感じる恐怖を味わいますの。


 それはこの場の空気を変えてしまうほど、圧倒的でしたの。



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