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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

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精神世界

 ボクはバルに包まれて気持ち良い眠りの底へと落ちていく。あ〜やっとボクは怠惰を手に入れたんだ。


 誰にも邪魔されない。

 誰からも起こされない。


 最高だ。


 やっぱり何もしないで、寝ているのが一番だな。

 もう、ダンによって処刑されることはないのだから、寝ていても大丈夫なんだ。


 ダンは随分と変わったな。ボクと一緒にノーラを助けてくれるなんて思いもしなかった。


《くくく、なぁ〜怠惰は最高だろ?》

「うん。やっぱり怠惰は最高だね」


 バルニャンの上で気持ちよく寝ていると、隣にいるクマが話しかけてくる。こいつも怠惰に過ごしていた。

 

 誰もいなければ、本当に怠惰で話すのも億劫だけど。

 誰かがいると話をしないといけないような気がするのは、やっぱりボクが人間だからなのかな?


《そうだぜ。人間なんてやめちまえよ。魔王は楽だぜ。寿命もなければ、誰からも邪魔されることもない。ただ、寝ているだけで時間が流れていくんだ。最高に怠惰だろ。それによ、もう誰とも会わなくてもいいんだぜ。誰とも話をしなくていいんだ。誰かといるって、面倒だろ? 怠惰は最高だ》


 それまで気持ちよさそうに寝ていたくせに、饒舌に話をするクマがウザい。


「そうだな。だけど、なんでだろうな? お前の言葉は反吐が出るほど聞きたくないって思うんだ。ボクは何も考えたくないのに、お前はうるさいな」

《おっと、それはすまないな。このまま怠惰に過ごしていてくれれば俺はそれでいいさ。それにしても、何も食べていないのに、どうしてお前はそんなにも元気なんだ?》

「何を言っているんだ。ボクはずっと食べているじゃないか?」


 口なんて動かさなくても、口の中に甘いケーキや紅茶の味がする。

 あぁ〜、これはボクの記憶にあるカリンが作ってくれたケーキだ。それにシロップが入れてくれたお茶だ。

 おや、今度はクウが入れてくれたお茶の味もするね。


 ミリルやルビーはなかなかお茶を淹れるのは成長しなかったな。

 二人とも掃除が得意で、ミリルは整理整頓。

 ルビーは細かいところまで気が利いた掃除が得意だった。


 最初はメイドとしてダメだった二人も、年数を重ねて次第に仕事を覚えて、立派なメイドになっていったなぁ〜。


 ああ、そういえばココロと食べた団子はお茶にあったな。

 そのお茶を淹れてくれたのはユヅキか? ユヅキが入れるお茶はいい香りがして、茶葉を皇国からカスミが取り寄せてくれていたなぁ〜。

 ミソラと温泉で食べたかき氷も美味しかったな。


《おっ、おい! なんでどんどん元気になっていくんだ?》


 エリーナは、王女様だけどボクと同じで怠惰に引きこもりが趣味だって、アンナが教えてくれたね。

 クロマは、そんな二人を見ているのが面白いんだってさ。


 ノーラやシーラスは知識を蓄えるのが好きなんだ。

 最初は何も知らなかったノーラが、どんどん吸収していくのは見ているのは面白かったな。

 忠犬はっちゃんがあんなところで活用できるなんてね。

 それに、シーラスはリベラと同じぐらい魔法狂いだ。リベラはアカリと実験を繰り返しているみたいだけど、シーラスも実験に加えてあげたら、ますます手がつけられなくなるんじゃないかな?


 最近は海洋学にもアカリは手を出しているみたいだね。

 シェルフがアカリに質問されてタジタジになっていた。


《おっ、おい? 本当にどこから? うん? なんだその腕輪は? そんな物ここに来た時にはつけてなかったぞ?》


 ボクに近づこうとしたクマを赤い髪をポニーテールにした美少女が払いのける。


「リューク、いつまでも怠惰にしているのは構わないが。怠惰に過ごすなら私の側でしてくれないか? そうしなければお前を甘やかしてやれないだろ?」

「リンシャン? どうして君がいるんだい?」

「そうですよ。リューク。私の料理も起きてくれないと食べさせてあげられません」

「主様、お茶を淹れますので、どうぞ起きてください」


 リンシャン、カリン、シロップ。


 三人がボクに起きろという。


「リューク様!」

「リュークにゃ!」

「起きるでありんす」

「ダーリン、起きてや」

「リューク様、一緒に研究しましょう」

「リューク、わっ、私も起きてくれたら、何をしてもいいぞ」

「一緒に寝たいから、私の隣で寝て」

「膝枕しましょうか?」

「わっ、私を布団に」

「お膝に乗ります」

「なんなら海の中ででも」

「もうリュークは仕方ないですね」

「全てはリューク様だから許されるのです」

「間違いないです! リューク様最高!!」


 ミリル、ルビー、ノーラ、アカリ、リベラ、シーラス、ココロ、ユヅキ、カスミ、ミソラ、シェルフ、エリーナ、アンナ、クロマ。


「ご主人様、皆さんがお待ちです」

「ああ、そろそろ起きよう。怠惰はもう少し先になりそうだ」


 クウの手に導かれるように、ボクは体を起こそうとする。


《ちょっ、ちょっと待てよ! なんでだよ。お前は怠惰になりたいんだろ? ここにいれば怠惰になれるんだぞ! このまま怠惰に過ごしていれば、お前は怠惰の魔王として覚醒するんだ。すでに憤怒の魔王、傲慢の魔王が誕生した。第三の魔王として、お前が!》


 ボクの体を掴んで離さないクマを、バルニャンが払いのける。


「黙れ! マスターは貴様に降るようなお方ではない! 貴様など暴食と遊んで入ればいい」

「なっ!」


 小さなリスが現れる。

 リスは、クマへ噛みつき出した。


《くっ! こんな小物が!》


 だが、リスは一匹では終わらない。

 どんどんどんどん数を増やしてクマに襲いかかる。


《大罪の呪いを大罪によって抑えるというのか?! しかし、貴様は二つの大罪を体に宿すことになる。この決着がついた時、どうなるのかわからぬからな!》


 クマはリスに飲まれて姿が見えなくなる。


 それでも気配が消えないところを見れば、死んではいないようだ。


 ボクはもう振り返らない。


 全ては、家族のために。


 妻たちの元へ帰ろう。

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